北海道電気相互
神奈川・千葉県が導入。災害時の電力確保に備える移動型電源車
低燃費と機動性を両立した電源車
地震や豪雨、台風などの自然災害が相次ぐ中、非常時の電力確保は重要な課題だ。特に自治体が開設する避難所や災害対策本部などは、照明や空調、通信インフラを維持するため、停電リスクに備えることが急務といえる。
電力製品の設計開発やサービス提供を行う「北海道電気相互」は、停電時の備えとして高い効果を発揮する「移動型電源車」を自社開発し、2020年から販売している。
電源車は2㌧トラックをベースに、大型発電機を搭載。車両のエンジン駆動力を利用して発電する独自の仕組みを採用している。100㍑の軽油で最大12時間の発電が可能で、4階建て相当のビルであれば約10時間分の電力を供給可能だ。
また、オプションで太陽光パネルと蓄電池を搭載できるため、災害時に燃料の確保が難しい状況でも安定して稼働させることができる。
実際の作業では、電源車から伸ばしたケーブルを仮設盤やコンセントに接続するだけで使用でき、特別な免許も必要ない。価格は2000~5000万円。導入先に合わせて発電機の容量を変えられるオーダーメードで、納品まで6~10カ月程度だ。
自治体や企業で広がる導入
導入は全国の自治体で進んでいる。神奈川県横浜市は今年3月に3台を導入した。
同市は、25年3月に策定した「横浜市地震防災戦略」に基づき、避難生活に必要な「T(トイレ)K(キッチン)B(ベッド)ユニット」と定義し、整備を進めており、移動型電源車もその一環として配備した。災害時には、避難所など必要な場所へ電力を供給し、照明や空調、各種機器の稼働を支える想定だ。
9月18~19日に横浜市内で行われた「横浜市TKBユニット実証訓練」では、実際の避難所を想定した環境を構築。移動型電源車をはじめ、キッチンカー、冷蔵・冷凍車、トイレカーなど、避難生活に必要な設備を配置し、電力を含めた生活基盤を確保する一連の運用を検証した。
高橋伸和社長は「災害時には、自治体だけで機材の搬入から設営、運用までを担うのは難しい。民間の支援をいかに受け入れ、現場で活用するかが重要です。移動型電源車を含め、必要な機材を平時からどのように運用するかを確認しておくことが、いざという時の迅速な対応につながります」と語る。
さらに、千葉県柏市も導入を決めた。市では災害発生時に庁舎内に設置される災害対策本部の円滑な運営を目的として、来年3月までに1台を導入予定だ。
「災害対策本部が機能しなければ、被災状況の把握や支援の指示など、対応に支障が生じます。有事の際に移動型電源車を活用し、災害対策本部の機能を維持してもらいたい」と高橋社長。
こうした自治体の動きに加え、国も災害時の電力確保を進めている。政府は、被災地からの要請を待たずに物資や機材を送る「プッシュ型支援」を推進しており、近年は猛暑下の避難環境を想定し、給水設備や簡易型クーラー、移動型電源車などを被災地へ配備している。必要な場所へ電力を届けられる機動性は、こうした災害支援においても重要な役割を果たしている。
同社は道内での認知拡大に向けた取り組みも積極的に行っている。
9月1日に「増毛町文化センター」で行われた「北海道防災総合訓練」に、移動型電源車を展示。実車を間近で見ることができる機会とあって、町民をはじめ多くの来場者が訪れた。
「広域な北海道では、ひとたび災害が発生すれば支援が行き届くまでに時間を要する地域もあります」と高橋社長が警鐘を鳴らす通り、道内企業でも徐々に導入が進んでいる。
24年5月に総合食品卸の「日本アクセス北海道」(本社・札幌市)が3台導入。石狩市内の冷蔵冷凍センターの非常用電源としての活用を想定しているほか、緊急時には電源車を自走させて別拠点のセンターにも活用する方針だ。
また、今年6月には建設業の「ケイセイマサキ建設」(本社・新冠郡新冠町)の要望に応じた電源車を専用に開発し、緊急時や工事現場の電力確保を目的に導入した。
高橋社長は「建設業は工事ごとに現場が変わるため、その都度、電源を用意する必要があります。これまでは発電機を現場へ持ち込むか、電力会社と契約する方法がありました。電源車があれば、現場へそのまま自走でき、現場の電源確保にも適した製品と考えています」と語る。
もともとは災害時の非常用電源として開発されたが、災害時に限らず、さまざまな場面での活用が想定されている。イベントなど一時的に電力を必要とする場面でも、必要な場所へ移動して電力を供給できる。災害時の電力確保を軸に、平時の電源需要にも対応できるのも特徴だ。
高橋社長は「電気は普段、当たり前に使えるものだからこそ、失った時の影響は大きい。災害への備えを考える際、必要な場所で電気をつくるという発想も大切です。自治体や企業がそれぞれの事情に合わせて備えを進める中で、移動型電源車が新たなインフラの形として選択肢に入るよう、普及に取り組んでいきたい」と語る。