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北海道電気相互

赤いカラーが特徴の移動型電源車。普通自動車免許で運転できる

緊急時に電力を供給。移動型電源車で停電リスクに備える

低燃費で低コスト。運転は誰でも可

 日本は地震や台風、豪雨、津波など、さまざまな自然災害が発生する国であり、それに伴う停電リスクとは常に隣り合わせだ。電力供給が止まれば、照明や冷暖房が使えなくなるだけでなく、通信や医療機器といったライフラインの維持に支障をきたす。2018年に発生した北海道胆振東部地震の経験は記憶に新しい。自然災害は予測できないからこそ〝電気はいつでも使えるもの〟という概念を捨て、停電リスクに備えたい。

 電力製品の設計開発やサービス提供を行う「北海道電気相互」は、停電時の備えとして高い効果を発揮する「移動型電源車」を自社開発し、企業や医療機関、自治体などに向け、20年から販売している。

 小型トラックに搭載した大型の発電機を車両のエンジン駆動力を用いて稼働させる独自の技術で、従来の設置型発電機と比較して大幅な低燃費を実現。設置型発電機が1時間あたり30㍑の燃油量で100㌔㌾㌂(kVA)を発電するのに対し、移動電源車は8・3㍑で125kVAを発電することができる。一回の稼働(ガソリン100㍑)で、発電時間は最大で19時間。4階建てビルの場合で、約10時間分の電力供給が可能だ。

 車両にはオプションで太陽光パネルと蓄電池の搭載も可能なため、動力源であるガソリン(軽油)が給油できない状況下でも稼働させることができる。

 実際の作業では、電源車から伸びるケーブルを供給先の仮設盤や差し込み口につなぐだけで作業に特別な免許は不要。ケーブルと差し込み口は色分けされ視覚的にもわかりやすい設計のため、誰でも簡単に取り扱うことができる。

 高橋伸和社長は「一般的にビルや商業施設などに設置されている非常用の定置型発電機の設置には、当社の移動型電源車よりかなり大きなスペースが必要です。また、年間約150万円程の点検料などのランニングコストが導入の足かせとなっています。移動型電源車はこれらを意識し、クリアできる仕様となっています」と語る。

 電源車は2㌧車をベースに製作しているため、一般的な駐車スペース1台分を確保するだけ。ランニングコストは、動力源である軽油と2年に1回の車検代のみだ。

 車両は完全オーダーメードで、仕様打ち合わせから納品まで約5カ月。車両価格は搭載する発電機の容量で前後するが、2000~4000万円。リース契約も可能となっている。

 高橋社長は「使用例は冷凍・冷蔵倉庫の電力確保、電気自動車(EV)の充電、工事現場など、多くのシーンに対応できます。当社は電気工事も行っているため、供給先の実地調査を行い必要な発電量や電圧を計算し、最適な仕様を提案することが可能です」と語る。

企業や自治体で続々導入

 移動型電源車は、BCP対策の一環として、全国の企業や自治体で導入が進んでいる。

 道内企業では、24年5月に総合食品卸大手の「日本アクセス北海道」(本社・札幌市、齋藤伸一社長)が3台導入。石狩にある冷蔵冷凍センターの非常用電源としての活用を想定しているほか、緊急時には電源車を自走させて別拠点の基幹センターにも活用する方針だ。

 自治体では来年度から神奈川県横浜市が導入を決定。災害発生時に県内各地に設置される避難所の電力を賄う想定で、今後も段階的に導入台数を増やしていく計画だ。

 さらに、千葉県柏市では有事の際、庁舎内に設置される災害対策本部の円滑な運営を行うために導入を決定している。

 また、緊急時のみならず、イベント会場での電力供給を目的とした活用例もある。

 9月27~28日にエスコンフィールドHOKKAIDOで開催された「スポーツフェスティバル」のeスポーツブースに同社が移動型電源車を配備。出張対応で電力供給を行った。

「移動できるため、スポット的な活用もできます。また、マンション密集地では複数の管理組合が共同所有し、停電の際に時間を区切って交代で使うといったことも可能です」と高橋社長は汎用性の高さに自信を見せる。

 同社では、最新技術や将来を見据えた研究開発にも注力している。今年からは同社の電源車開発に着目した「三菱ふそうトラック・バス」(本社・神奈川県川崎市)との共同研究がスタート。ガソリンを使わず、蓄電池と太陽光のみで稼働する新型電源車の開発に着手した。 

「将来的にガソリン車の廃止が決まっているヨーロッパ諸国などの需要を見込んでいます」と高橋社長。同社では実車を使ったデモンストレーションもおこなっており、BCP対策の1つとしても、電源車の活用を検討してはどうか。

高橋伸和社長
出力はケーブルを差しこむだけ(上)太陽光パネルも搭載可能
イベント会場へ出張し、電力供給も行う
食品卸大手「日本アクセス北海道」の石狩センターにも導入