D-GROUND(ディーグラウンド)
まえつじ・だいすけ/1978年札幌市生まれ。市内の設備機器商社に17年間勤務。コロナ禍をきっかけに、2023年D-GROUNDを設立。
協力会社と連携。設備工事の一貫体制を構築
卸売の限界から始まった起業
――独立のきっかけは。
前辻 きっかけはコロナ禍です。前職では17年間、設備機器の総合商社で営業をしていました。当時は1次卸として商品を供給していましたが、物流の停滞などで商品が思うように届かず、卸売だけでは顧客が困っている時に十分な対応ができませんでした。もし施工まで担うことができれば、別の形で顧客に貢献できるのではないかと考え、2023年2月に空調・給排水設備工事の「D‐GROUND」を創業しました。
――独立後は、前職時代の経験や人脈も生きていますね。
前辻 これまで培ってきた仕入先との関係や営業経験を生かし、資材の調達から施工まで対応できる体制をつくりました。前の会社を円満に退社できたこともあり、現在も商品の調達などで取引関係が続いています。また、前職から付き合いのある仕入先とも早期から協力体制を築くことができました。
私は生まれも育ちも札幌で、学生時代の知人の多くが道内で建設業に携わっています。そのネットワークも活用し、空調、給排水、ダクトなど、それぞれの分野を得意とする協力会社と連携して現場規模や内容に応じて柔軟に対応できる施工体制を組んでいます。
――具体的には、どのような現場を手掛けているのでしょうか。
前辻 一般家庭向けの工事には対応していません。メインは工場、オフィスビル、ホテル、飲食店などです。直近では札幌、帯広、旭川にホテルを展開するグループ企業の工事などにも携わっています。
前職の経験を生かせる業務用の設備工事に特化し、専門性を高めています。
――業績も順調です。
前辻 ありがたいことに、多数の受注をいただいています。しかし、無理な受注をしているわけではありません。売上高を伸ばすことが目的ではなく、あくまでも利益ベースで考えています。会社の存続には、適正な利益を確保する必要がありますからね。
協力会社と築く現場の信頼
――仕事をするうえで、大切にしていることは何でしょうか。
前辻 金額、工期、品質の3つです。中でも工期に直結するのが、施工前の段取りです。後から追加費用が発生することを極力抑えるため、施工前の現場調査は手間を惜しまず入念に行っています。天井裏など目に見えない部分も確認したうえで、見積もりを行います。
また、施工を担う職人の技術だけでなく、養生や清掃といった基本的な部分も重要視しています。施工完了時がきれいなのは当然ですが、その過程が乱雑では、施主からは評価されません。最後まで細かい部分に目を配ることが、次の仕事につながっています。
――協力会社との関係づくりも重要になってきますね。
前辻 はい。設備工事は当社単独ではできません。工事内容に合わせて適切な協力会社を選び、互いに力を合わせる必要があります。
私は管理業務が中心ですが、検査や資材の搬入、清掃など、必要があれば現場にも入ります。また、職人さんとは食事を共にするなど、普段から密なコミュニケーションを取るようにしています。現場で実際に手を動かしてくれる職人さんがいなければ、当社は成り立ちませんからね。本当に感謝しています。
――〝協力会社思い〟でもありますね。
前辻 協力会社が安心して仕事ができる環境を整備することも、当社の責任と考えています。
一例を挙げると、業界では入金の遅れや不払いなどが問題になるケースがあります。当社では協力会社への支払いは、その資金繰りに配慮して月末の支払日より1~2日前倒しています。当社からの支払いを原資に、協力会社がさらに別の会社や職人へ支払うケースもあるからです。建設業は多くの会社がつながり、1つの現場を動かしています。自分たちのところで支払いが滞れば、その先にも影響が及びます。可能な範囲で資金をスムーズに回せるように努めています。
――資材不足への対応はいかがでしょうか。
前辻 必要な資材が主要な仕入先から確保できなくても「物がないから工事を止める」という選択はしたくありません。別ルートを探してでも調達し、多少コストが上がっても、まずは現場を止めないことを優先します。工事を前に進めるために何ができるかを考え、最後まで手を尽くすのも当社の役目です。
――若手の人材を採用していく考えです。
前辻 人手不足と高齢化は業界全体の課題です。若い人に人気の仕事とは言えませんが、建物がある限り設備工事はなくなりません。だからこそ若手を採用し、次世代の担い手を増やして業界の活性化につなげたいですね。
――目指している業界のポジションや今後の展望は。
前辻 設備業界の「サブコン」です。地場のゼネコンや建築会社、物件オーナー様などから「札幌の設備工事ならD‐GROUNDだよね」と評価いただける会社になりたい。そのためには、施工品質だけでなく管理体制も重要です。合理的なコストと高品質な施工を両立し、少しずつ信頼を積み重ねていきます。会社を大きくすること自体が目標ではありませんが、独立した以上は事業を永続させたい。そのために必要なことには、何でも挑戦していきます。