ソーシャルライツ
せきね・ようすけ/1993年生まれ。北海学園大学法学部在学中の2015年に司法書士資格を取得。16年同大学卒業後、「司法書士・土地家屋調査士関根事務所」に入所。23年「ソーシャルライツ」設立。
原野商法問題に挑む司法書士ベンチャー
原野商法の〝負動産〟を司法書士が引き受ける
――札幌で70年以上続く「司法書士・土地家屋調査士関根事務所」の司法書士として勤務しながら、新会社を設立されました。事業内容は。
関根 原野商法で購入してしまった価値のない土地を、当社が有償で引き取っています。相続登記や名義変更など、必要な手続きまで一体的に支援しています。
――原野商法とは。
関根 発端は1970年代です。「日本列島改造論」などを背景に土地投機が全国に広がり、中でも北海道の原野や山林が数多く売られました。100~300平方㍍程度に細かく分筆し、「将来値上がりする」と販売する手法が横行しました。区画された宅地のような図面でも、現地は急斜面の山だったり、建築が難しい場所だったりと、まさに詐欺商法といえますが、社会全体が土地の購入を後押しする潮流だったこともあり、ほぼ価値のない原野や山林を購入する人が相次ぎました。
現在、当時の購入者が高齢化し、相続の時代に入ったことで、改めてこの土地の問題が再燃しています。このまま相続が繰り返されれば権利関係がさらに複雑化し、所有者不明の土地がどんどん増えていくことになります。
――この社会問題を解決するために起業した。
関根 その通りです。会社設立前から原野商法の相談の多さには驚いていましたが、土地の登記名義の変更はできても、「この土地をどう処分するのか」という問題には応えられませんでした。不要な土地の処分ができなければ、根本的な解決にはなりません。そこで、土地を引き取る仕組みと原野商法問題についての相談先をつくるために会社を立ち上げました。
――単なる司法書士業務の延長ではないのですね。
関根 そうですね。やはり誰にも相談できなかった問題の相談を法専門職が担うことが重要だと考えています。原野商法の被害地であれば、基本的な引き取り料は1筆10万円+税、あとは登記費用をお客様に負担いただくことで土地をお引き受けしています。土地の種類や面積、課税の有無等によって料金は変わりますので、一度相談いただければと思います。何もしなければ、個人名義である限り価値のない土地が子ども、孫に相続されていくことになり、一族の問題として延々と残ってしまうことは今後大きな社会問題になっていくと感じています。
財務基盤の強化で引き取り対象を拡大
――司法書士が土地そのものを引き取るのは珍しいですね。
関根 はい。ただ、すべての土地を引き取れるわけではありません。当社が所有者となり所有者責任が発生しますから、損害賠償のリスクを考慮し、保険会社のようにリスクを見極め、引き受ける土地を選別しています。具体的には土砂災害や環境汚染のリスク、煩雑な管理が予想される民家を含めた隣接構造物がある土地、不法投棄などのリスクが高い道路沿いの土地などは残念ながら原則として引き受けていません。広い原野や山林の中の一筆など、管理が比較的容易で、第三者への損害リスクが極めて低いと判断できる土地のみを引き受けています。
――設立からの実績は。
関根 相談件数は累計約250件、引き受け件数は280件を超えました。土地の所有者だけでなく、子世代からの相談が6割を占めています。現在は司法書士、不動産会社、弁護士、税理士などからの紹介も増えています。割合が最も多い司法書士からの紹介では、紹介元の先生に名義変更等の手続き業務を担っていただくことで、紹介元、当社、そしてお客様の三者がそれぞれメリットを享受できるため、紹介件数が安定して増加しているものと考えています。
――相続によって取得した不要な土地を国に返却できる相続土地国庫帰属制度との違いは。
関根 帰属には一定の審査があり、簡単に利用できるわけではありません。簡易測量などの費用や承認後の負担金が必要で、総額50万円を超えるケースがほとんどです。また審査基準が明確ではなく、帰属不承認となるリスクもあります。特に原野商法の土地は要件を満たさないケースが多く、費用、スピード、確実性で我々にご依頼いただいていると感じています。
――今後の展開は。
関根 社会問題の解決が本質であり、利益を追求しているわけではありませんが、土地を引き取る以上、万一の事態に対応できる財務体質をつくる必要があります。そのため、引き受け費用の大半をバランスファンドなどの運用に回しています。現在は1000万円ほどを運用している状況ですが、今後5年で運用資金1億円を目標にしており、これを達成した段階で財団法人の設立を考えています。
――財務体質の強化は、引き受けられる土地の拡大にもつながりそうですね。
関根 前述の通り現在の財務基盤では引き受けられない土地がありますが、財務体質を強化することで引き受け対象を拡大でき、高齢者支援や空き家問題など、さまざまな社会課題の解決にも取り組みを広げていけると考えています。まずは「原野商法問題なら不動産登記の専門家である司法書士に相談」という導線・認知を確立するため、司法書士会の新人研修において、原野商法問題という社会問題と司法書士ができることを積極的に発信しています。私の理想は業界全体で北海道の原野商法問題を解決していくことです。