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ふるさと物語

宮成秀治社長
みやなり・しゅうじ/札幌市出身。北海学園大学卒業後,さくら情報システムでSEとして勤務。セールスフォース・ドットコム、日本オラクルでソリューション事業の経験を積み2021年「雪国物語」創業。24年に「ふるさと物語」に社名変更。

資金調達から販売まで対応する地域創生請負人

地域創生ビジネスで北海道から全国へ

――2021年に起業した経緯は。

宮成 コロナがきっかけでした。前職のIT企業「日本オラクル」の業績は好調でしたが、一方で北海道で飲食店を営んでいた知人の経営は非常に苦しい状況に置かれていました。業種やエリアの経済格差を目の当たりにし、「自分の持っているITの知識を出身地である北海道のために使えないか」と考えたのが出発点です。社名は「雪国物語」でした。

企業勤めの傍ら当初は副業として「水産業×デジタル×エンタメ」による地域創生ビジネスに取り組みました。地域の特産品などをECサイトや催事、短編映画制作などで販路拡大のお手伝いをしました。北海道庁から声を掛けていただくなど、大きな手応えを感じましたし、地域との関わりの中で、これまでにないやりがいを感じました。23年には本業として勝負しようと日本オラクルを退職しました。

――24年に「ふるさと物語」に社名を変更しました。

宮成 九州にも支援先が拡大し、「雪国」という名前が北海道限定の印象を与えてしまうと感じ、全国の地域創生を担う会社として新たなスタートを切りました。

現在は自治体、生産者、地域企業、大学などと連携し、地域資源を活用して地域課題を解決するビジネスモデルを構築しています。例えば特産品の販促事業では、ブランド化だけでなくECサイトやテレビショッピング、ふるさと納税返礼品、催事、映画、インフルエンサーなどさまざまなチャンネルで販促支援を行っています。さらに資金調達のためのクラウドファンディングの設立サポート、補助金を活用した陸上養殖や植物工場など新事業の立ちあげのお手伝いもしています。JR東京駅での催事やレバンガ北海道との協業、JA全農との連携など、取引先も拡大してきました。

――自治体の補助金や交付金獲得支援も行っていますね。

宮成 自治体向けに、国の補助金や地方交付金の獲得を支援しています。道内で農林水産省関連の補助金を獲得した実績があります。資金調達から販売まで一貫して支援できることが当社の強みです。 

一方、産学官連携がある種のブームとなっていますが、主導者が不明確で停滞・頓挫しているケースが多々あることから、第三者の旗振り役としてプロジェクトの再構築支援も行っています。

――事業拡大の一方、正社員を置かず約50~60人のパートナーと仕事をしているようですね。

宮成 フリーランスでチームを組む「ギルド制」を採用し、案件ごとに必要な人材を集めています。コンペによる最適な人選が可能で、プロジェクトごとに最高のチームをつくるという考え方です。〝自社の人材ができる仕事〟から脱却することで、より質の高いサービスにつなげています。

――一方で強力な顧問陣を敷かれていますね。

宮成 JR東日本グループのアトレ前常務の圓井宏政氏のほか、7月には東京農業大学名誉教授であり、北海道文教大学前学長の渡部俊弘氏が特別顧問に就任いたしました。当社の思いに賛同いただき、感謝しています。お二人が持つ知見やノウハウ、ネットワークも当社の推進力となっています。

DX・AXで地域の課題を解決

――AIの活用などDX支援にも力を入れています。

宮成 人口減少に直面する地方では、省人化や省力化の観点からもテクノロジーの活用は必要不可欠ですが、周囲の活用事例も少なく、情報を得にくいのが現状です。最新のDX情報を届けるとともに、「何からはじめていいかわからない」という企業や自治体に有益な情報を提供することも当社の役目だと思っています。

その一環として、8月にはドーモ(本社・東京都千代田区)の販売代理店契約を締結しました。ドーモは10年にアメリカのユタ州で設立されたIT企業で、翌年に日本に進出しました。前職のつながりで、日本法人の川崎友和社長から誘われ、24年からは同社にも籍を置いています。 

同社が提供するAIを搭載した全社データ活用プラットフォーム「DOMO」は、企業内の多様なデータを統合して経営判断に活用するクラウドサービスで、25年度は私個人で国内の上場企業各社に提案、導入し、売上金額世界一になりました。同商品の有用性を熟知しており、地域創生に欠かせないツールだと代理店契約を同社に打診し、快諾していただきました。

――商品の特徴は。

宮成 クラウド上で各システムのデータを集約する経営ダッシュボードをつくれます。このデータからAIエージェントが「次に何をすべきか」を示してくれるほか、各セクションの責任者に情報を共有するコミュニケーションツールとしても活用できます。セクションごとの売り上げや利益をリアルタイムで可視化でき、AIの助言も受けながら次の打ち手を迅速に講じられます。こうした首都圏の〝当たり前〟を地域に広げたいと考えています。

――既存事業との親和性も高い。

宮成 単に「AIを入れましょう」という話ではなく、地域や企業の課題解決ツールの1つとして提案していきたい。地域に眠る価値を見つけ、資金を調達してブランド化し、プロモーションを駆使して国内外への販売につなげ、AIがデータ収集と分析を行い、次なる一手を講じる。この持続可能な循環モデルを全国各地でつくりだします。

左から宮成秀治社長、渡部俊弘特別顧問、圓井宏政顧問