北海道文教大学
(たまい・やすゆき)1959年香川県丸亀市生まれ。新潟大学・岡山大学大学院・北海道大学大学院修了。北海道教育大学釧路校キャンパス長・北海道教育大学副学長を経て、2026年4月から現職。地域教育経営学を専門とする。経済学修士・教育学博士。
現場主体の"実学"により社会で活躍する力を身につける
――4月に学長に就任されましたが教育方針などは。
玉井 本学は創設者である鶴岡新太郎・トシ先生の建学精神のもと、〝実学〟を教育理念としています。本来、理論と実践は対極とされがちですが、実学とは理論を実践に生かす学問体系のことです。欧米ではラーニングバイドゥーイングやラーニングバイティーチング理論が確立しており、理論と実践を並行して学びます。私はこれこそが〝実学〟のベースであると感じています。
2018年に文部科学省が公表した学習指導要領では、「生きる力」がテーマとなりました。すなわち自分で学んだことを社会に活かしたり地域貢献するためにも、実学は非常に有効です。高度な理論も実践的な工夫がないと社会の役には立ちません。
――高い就職率も支えています。
玉井 本学学生の就職率の高さは、早い段階からインターンシップや実習、ボランティア活動などで地域に出ることによるものです。地域では、社会に出る前に必要なスキルを実践的に学ぶことが出来ます。また、実務経験で大学で何を学ぶべきかが具体的になります。こうした社会実践を重ねることで、学生は社会性を身につけていきます。今は知識や偏差値だけで活躍できる社会ではありません。
――地域との連携では、協定先も増えているようですね。
玉井 連携協定先は1年間で20団体増えて、現在は145団体となりました。成果を地域に還元することは大学の大きな役割ですし、学生は現場で育つのが実学の基本です。地域に出て、地域連携ボランティア・企業の商品開発やイベント運営に関わる中で、地域の方々と関わり、学びを社会で役立てる経験を通して、自分自身の成長と社会貢献のやりがいを実感できます。本学では、地域と一体となった実習やボランティア活動などがカリキュラムに組み込まれていますが、さらに充実させるためには授業体系の再構築が必要と感じています。
――地域でのエッセンシャルワーカーのニーズは複合的ですね。
玉井 現代的なニーズに対応するという意味では、エッセンシャルワーカーの役割が重要です。しかし北海道の85%の自治体で過疎化が進んでおり、看護師や理学療法士・作業療法士・管理栄養士といった地方の医療従事者の不足が顕著です。そして、札幌集中傾向が強まっているため、地方で活躍できるエッセンシャルワーカーを増やす工夫が必要だと感じています。
本学では、医療・人間・国際の全3学部が複合的に連携する「多職種連携教育」を展開し、看護・リハビリ・栄養・教育・言語など多岐にわたる専門性を生かしています。他職種の専門性理解やチーム内での役割理解等を深め、複雑な社会課題を多角的視点で解決できるエッセンシャルワーカーを育成しており、こうした資質を持った人材の輩出をより一層進めます。
――最後に学生に向けてメッセージを。
玉井 本学は、地域とともに歩み、地域に支えられながら発展してきた大学です。学生が市民や企業と関わりながら、自ら課題を見つけ、解決していく経験は、学生の大きな成長につながります。本学では、行政・企業・団体等の地域と連携した学びを通して、教室だけでは得られない実践力を重視しています。
また、現在はAIの活用が進んでいますが、学生には「AIを超えてほしい」と思います。AIにはないものも取り入れながら、理論を自分自身でもう一度組み立てることが重要です。この思考がないとAIを使いこなせません。すなわち実学教育を自分なりに活かす力が重要です。
特に対人援助職でもあるエッセンシャルワーカーは、コミュニケーション力を含む人間関係力が求められます。そのため、大学としてもコミュニケーション力や対人関係力を高める教育活動を強化していきます。