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堅展実業 厚岸蒸溜所

今年8月に発売された「厚岸 シングルモルトジャパニーズウイスキー 立秋」

「二十四節気」から未来へ。富良野で新たな蒸留所を開設

国内外で人気の二十四節気シリーズ

 国内のウイスキー蒸留所の数は近年増え続けており、準備・計画中を含めると現在130カ所を超えるとされている。

 2016年10月に北海道厚岸の地に誕生したのが「厚岸蒸溜所」。スコットランドの伝統的な製法と、厚岸町の冷涼で湿潤な気候を生かしたウイスキー造りが特徴で「厚岸ウイスキー」として数多くのファンを獲得している。

 これまで「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS (ニューボーンファウンデーションズ)」、「二十四節気シリーズ」などをリリース。海外でも高い人気を誇り、「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)」や「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」など世界的酒類品評会で数々の賞を受賞。大阪・関西万博の会期中には国内外の政府要人が集う午餐会で「二十四節気シリーズ」をはじめとする3種類が振る舞われた。

 立崎勝幸所長は「午餐会では国内で10社のみが選出されました。蒸留所として歴史が浅いにも関わらず、選んでいただいたのは大変栄誉なこと」と話す。

「二十四節気シリーズ」は日本の伝統的な暦を表す二十四節気をモチーフに、20年から販売を開始。3カ月おきに季節の名称を表す商品名でリリースを続け、26年8月に締めくくりを迎える。

 樋田恵一社長は「残りの4本のうち、3本は『春分』『夏至』『秋分』となります。一年の節目でもあるこの3本は、二十四節気シリーズの締めくくりにふさわしいスペシャルなボトルにしたい。シリーズ終了後の企画も既に始動しており、年4回の販売ペースは変えずにリリースする予定です」と語る。

 また、今年6月には「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキー HOKUSAI NORTH COLORS 翠嶺(すいれい)」を発売。「もしも北斎が、厚岸の地を訪れていたなら…」というコンセプトのもと、アートや文化との融合を意識した独自のラベルやパッケージに仕上げた。ANA国際線機内免税店販売プリオーダーサービスで購入できる。 

イベントを通じファンへ感謝

 蒸留所開設から10年目を迎え、最近は厚岸ウイスキーの大ファン〝AKKESHIST〟(アッケシスト)との交流も深めている。

 8月8日には、道新サービスセンターが主催したディナーイベント「厚岸NIGHT in 札幌」が札幌市内のホテルで行われた。当日は、AKKESHISTやウイスキー愛好家、取引業者など約200人が参加し、ウイスキーと料理のペアリングを楽しんだ。

 また、10月18日には、初のファンミーティングとして「THE AKKESHISTs PARTY」を厚岸町で開催予定だ。当日は厚岸蒸溜所の工場見学やトークショーのほか、ピート(泥炭)採取所やミズナラの森の見学など、ウイスキー愛好家のニーズに応えた内容を企画。応募総数は定員の10倍を超える反響があった。

「これまで〝聖地巡礼〟のような形でファンの方々が全国各地から厚岸町に訪れているという話を伺っていました。そのような熱心な方々に何か還元したいと思い、企画したイベントです。今後は当社のホームページ上で、樽の構成など商品情報の開示を積極的に行っていく予定です。ウイスキーに興味を持ち続けてもらう仕掛けをどんどん行っていきます」と立崎所長。

富良野で造る〝山のウイスキー〟

 一方、27年には富良野エリアに新たな蒸留所の建設も計画している。原料として使用している大麦の産地の一つであり、21年8月から試験熟成を行ってきた。今年に入り、原酒の熟成状態が同社の製品化基準をクリアし、道内2カ所目の蒸留所建設に踏み切った。

「高まる需要をふまえ、増産を検討していました。厚岸蒸溜所の生産量を増やすことも可能ですが、品質を担保するために新たな蒸留所の建設を選択しました。富良野は山に囲まれた環境で、ウイスキー造りの高いポテンシャルを秘めています。厚岸が〝海のウイスキー〟だとしたら、富良野は〝山のウイスキー〟。それぞれの個性を生かしてウイスキーを造っていきたい。未来に向けいい原酒を残し、日本のウイスキー文化の発展に貢献していく」と樋田社長。

風土を生かしたウイスキー造りを行う
「厚岸シングルモルトジャパニーズウイスキーHOKUSAI NORTH COLORS 翠嶺」
「厚岸NIGHT in札幌」には多くの人が集まった
樋田恵一社長
立崎勝幸所長