「HRMホールディングスグループ」が進める〝街づくり〟〝人づくり〟

道路維持管理の道内最大手「HRMホールディングスグループ」(本社・札幌市)が、児童発達支援の「クリーンテック」(本社・札幌市)の全株式を8月に取得。グループ初となる福祉事業への参入を果たした。
M&Aで成長加速 福祉分野に進出
「HRMホールディングスグループ」(以下HRMHDG)は、筆頭事業会社で道路維持管理道内最大手の「北海道ロードメンテナンス」を中心に、土木、車両整備、警備、オフィス用品など多様な事業会社でグループを形成している。
このうち4社はM&Aによりグループに加わった。2007年の「広島建設」(北広島市)を皮切りに、13年に「北海ロード」(北見市)、16年に「ダイワ整備機工」(札幌市)、20年に「野田組」(本別町)を傘下に収めた。後継者不足などの課題を抱えた企業とジョインすることで、事業の継続をバックアップ。HRMHDGの成長の原動力ともなっている。
今年8月には、児童発達支援・放課後等デイサービス運営事業者として、札幌市で9施設を運営する「クリーンテック」の全株式を取得。福祉事業に参入した。
同社は、理学療法士による運動支援を中心とする「アロハ」(札幌市東区)や言語聴覚士と保育士による言語指導、音楽療法の「あいうえお」(同)、作業療法士の感覚統合を活用した活動支援を行う「GREEN」(同北区)など、コンセプトの異なる児童デイサービスを展開。障がい特性に応じた質の高い専門支援を提供しており、行政や保護者からの信頼を得ている。平均施設稼働率は90%以上を継続するなど、安定した経営基盤を築いている。
大野晃HRMHD会長は「『クリーンテック』は、児童福祉業界で道内トップレベルの規模であり、有資格者を含め65人が在籍しています。規模が大きいが故、業界内では同規模以上の買収案件ということになり、受け皿を見つけることが難しかったため、当グループにジョインしていただく形となりました」と経緯を説明する。
また、「福祉事業への参入は我々にとって大きなチャレンジです。福祉を通じて未来を担う子供たちを支援するという責任の重さを感じる一方、我々が担う〝街づくり〟に加え、その街に住む子供たちの〝人づくり〟にも携わることができるという事に大きな可能性も感じています」と話す。
一連のM&Aについて、阿野信博クリーンテック社長は「私自身の体調面の不安もあり、会社の引き受け先を探していました。最も重視した点は、事業の継続性であり、利用者様と職員に安心してもらえる会社に託したいと考えました。福祉事業は、行政が定めたルールに沿った経営が求められるため、数多くの公共事業を手がける『HRMHDG』様なら、安心して任せることができると判断しました。正しい選択をしたと思っています」と説明する。
児童発達支援でHRMブランドを強化
HRMHDGでは今後、クリーンテックの強みである福祉サービスのさらなる強化を図る方針で、職員の賃金アップなどを実施予定。人員の増員なども計画している。
大野HRMHD会長は「従業員の皆様に安心して業務に集中してもらえるよう、待遇面の向上や労働環境を整えていく。また、大切なお子さんを預けている保護者様にも、さらなる安心を提供できるよう、グループ各社と連携した季節行事やイベントの開催など、我々とタッチポイントを増やしていきたい。子供たちには道路維持や除雪など、自分たちが住む札幌の道路がどのように維持されているのかを知ってもらう機会もつくっていけたらいいですね」と話す。
一連のM&AでHRMHDGのブランド力もより一層強化された。SDGsでは新たに「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「人や国の不平等をなくそう」という3つの項目に取り組むこととなり、発注者や取引先、採用者などすべてのステークホルダーに対し、これまで以上に「社会貢献性」を発信していく。
大野HRMHD会長は「今回は、まったくの畑違いの企業買収でしたが、地域社会にとってなくてはならない会社の事業継続のために、業種を問わず検討していきたい。前向きな話し合いができればと思っています。ご相談ください」と呼びかける。


