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金子 洋文 リビングプラットフォーム社長

(かねこ・ひろふみ)1977年11月生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、三菱商事のヘルスケア戦略子会社ライフタイムパートナーズ入社。10年間、ハンズオン経営支援と投資をおこない、2011年6月に同社を設立。現在は北海道、東京、大阪、東北などにも拠点を持ち、合計69の施設を展開している。

持続可能な社会保障制度、将来の日本のために事業の拡大を狙う

今年3月に東京証券取引所マザーズ市場に上場したリビングプラットフォーム(本社・札幌市)は、介護事業、障がい者支援事業、保育事業が事業の3本柱。起業から9年の急成長の要因と、今後の展望を金子洋文社長に聞いた。

情報スピードが変化 資金調達も優位に

──3月に東証マザーズに上場して変わったことは。

金子 まずは情報の入るスピードですね。当社はM&Aも活用し拡大してきました。10年間で14回のM&Aをしています。今後もM&Aは事業拡大の重要な手法の1つですので、情報入手のスピードには期待しています。また、今はまだ大きな変化はありませんが、資金調達の方法に多様性が生じる、と思っています。上場でスタートラインに立てたと感じています。

──東京出身ですが、札幌で起業した理由は。

金子 マーケットを分析した結果、札幌が適切だと判断しました。社員は一人ひとり説得して来てもらいましたが、私自身もスーツケース1つで札幌に来て、部屋も借りられなかった思い出もあります。やっと借りた部屋に最初に置いたのはニトリさんで買った布団の3点セット。3000円でした(笑)。そんなスタートから、苦労は3年くらい続いたでしょうか。誰かに出資してもらったわけではなかったので資金繰りは厳しかった。ただ札幌に来て良かったという思いは、本部を東京に移した今でも変わらない。

──卒業論文のテーマが起業にもかかわっていますね。

金子 起業は大学在学中から視野に入れていました。日本経済がしぼんでいくことが予想されるなかで医療や介護、福祉なら民間企業でもやれることがたくさんあると感じていました。マクロモデル数百本を用いてシミュレートするなかで、日本の財政における社会保障制度の持続可能性に疑問を持ちました。それで、社会保障費の拡大をコントロールする政策を卒論で書いたのです。株式会社が介護事業に参入することによって、補助金の支出が抑制できるというのが基本線。今回上場したのも、持続可能な社会保障制度の構築へ貢献するためです。

従業員は会社の価値 若者の不安払拭にも

──介護事業の実情は。

金子 当社はとにかくスタッフが、能力的にも精神的にも優秀なんです。行動指針をつくったのも社員の声がきっかけ。当社では研修なども頻繁におこなっていますが、それは当社で働くことが何かのプラスになればいいと思っているから。長く働いてもらうために給与水準も高く、有給休暇も積極的にとってもらいます。〝従業員は会社の価値そのもの〟です。今後もこの姿勢を続けていくことが、企業の発展につながるはずです。

──障がい者支援事業と保育事業については。

金子 あくまでも売上割合は介護事業が主軸ですが、社会的な需要が多いと感じる。障がい者支援でいえば、現在はグループホームと就労継続支援B型がメーンですが、将来的には継続的な雇用が生まれるようアウトソーシングセンターの整備を考えている。一方、保育事業では、認可保育所や企業主導型保育所の開発が中心だが、グループ内の介護施設あるいは障がい者支援事業所との連携で進めることで、よりスピード感が生まれると見ています。

──コロナ禍による影響は。

金子 高齢者、子ども、障がい者というように、いわゆる社会的弱者が多い職場ですから、常にリスクコントロールをしています。業界や事業の選択もその1つで、たとえば当社は施設系に特化している。そういう意味ではダメージは限定的。ただし、新規事業は医療機関からの紹介が多いこともあり、影響はあります。また、既存施設でも利用率の戻りが印象としては鈍かったと思っています。

──今後の事業展開は。

金子 すでに拠点のある北海道、関東、東北、関西で粛々と事業拡大を進めます。特に札幌での事業拡大は、ようやく準備が整ったと感じています。まずは地域で一番になることが目標です。それと、当初から東海と九州を含めた6地域で事業展開する計画を持っています。残り2つの地域でも早急に準備を進めていきたいと考えています。何よりも「スピード」がキーワードだと思っています。

──道民にメッセージを。

金子 「社会保障制度を持続可能にする」という強い思いで起業し、今回上場しました。地域のインフラとしての自覚を持ち、日々利用者のために全力を尽くしていきたい。老後に不安を抱える若者にも安心感を持ってもらうことが未来の日本にとって重要です。そのためにも事業の安定、拡大を図っていきます。