【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】田中学園教員と語る(前編)

 本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より、「イマージョン教育」「LINK(リンク)」などのカリキュラムを作成する3人の教員との対談を前後編に分けて全文公開する。以下はその前編。

小学校の核となるカリキュラムづくりに奔走

カリキュラム作成はめったにできない

冬野恒史氏

 ――まずは3人の自己紹介をお願いします。

 上西 2003年から立命館慶祥中学校・高校で、英語教諭を担当していました。中学1年~高校3年生を教えていました。

 山形 札幌市内の小学校教員を経て、北海道教育大学附属札幌小学校に一度、転籍しました。そこからまた市内の小学校に戻り、現在に至ります。得意教科は体育です。

 冬野 増毛町の公立小学校の教員がキャリアのスタートでした。その後の赴任先は、松前町の中学校、函館市の小学校、中学校、北海道教育大学附属函館小学校。そして、北海道教育委員会に勤務し、田中学園の教員になりました。専門教科は算数です。

山形昇平氏

 ――今回の鼎談企画で3人の先生を選んだ理由は。

 田中 学校の核となるカリキュラムを実際につくっているメンバーなんです。

 上西先生は小学校開設の認可が下りる前の、準備室からのメンバーになります。田中学園をどんな小学校にしたいかと考えたとき、これからの時代、英語力は最低限つけてあげなければならない。そこで立命館慶祥から上西先生が来てくれることになったんです。

 準備室の段階で教科横断型の「LINK(リンク)」、個別最適化学習「Watashi(ワタシ)算数」に取り組むことが決まっていました。ICT化にも力を入れます。これらを実践できる人材が必要だということで、ピンポイントで山形先生と冬野先生に来てもらいました。

 山形先生には実技科目を英語で実施する「イマージョン教育」とリンク、冬野先生にはワタシ算数と精通しているICTについて担当してもらっています。

上西睦氏

 ――私立小学校の開設は道内では珍しい。また、上西先生は小学生に教えるのは初めてになります。

 上西 英語に親しむという意味で、耳を鍛えるリスニングは下の年齢からスタートさせたほうが、習得はより早くなります。中学・高校の教員をしていた経験から小学校6年生までに身につけておくべき、英語力のイメージを持っています。

 私立はカリキュラムに対する制約が少ないので、卒業までに習得しておきたい力を念頭に置き、カリキュラムづくりに励んでいます。

 山形 私立小学校の立ち上げに関われるというのは魅力的です。小学校のカリキュラムをつくるということもめったにできる経験ではありませんから。いいものをつくりたいという思いを強く持っています。 ゼロを1にする作業に挑戦する教員

 ――山形先生が担当するリンクとはどんな授業ですか。

 山形 ざっくり説明すると、会社ごっこです。子どもだけの会社をつくって、大人の世界に挑戦するというイメージです。挑む内容は子どもたちが考える社会問題です。

 海洋プラスチックが問題になっていて、ウミガメさんたちが困っています、とか。そういう課題を友だちと協力して、自分たちの会社で解決方法を考えていきます。

 あと、リンクの特徴は縦割りの学びです。学校では普通、学年やクラス単位で行動します。しかし、リンクでは3年生から6年生の異なる学年がグループをつくり、1つの社会課題に向き合っていきます。

 ――冬野先生が担当するワタシ算数は。

 冬野 子どもたち自身が、算数がどのくらい得意で、または苦手で、どんなことに取り組みたいかということを認知して、実行に移すものです。

 たとえば、得意な子は、数学検定のための勉強をどんどん積み重ねていくとか。微分積分にも挑戦してみようとか。逆に、苦手な子は問題を数多く解くことも必要ですから、ドリルをやる時間にあてることもしていきます。

 ――3人の教員のお話を聞いていかがですか。

 田中 僕はざっくりとしたイメージでしか提案できないのですが、それを先生たちがかみ砕いて具現化してくれています。カリキュラムづくりをはじめ、ゼロを1にする作業がたくさんあります。

 僕はもともと教育畑の人間ではないので、その1が正しいのか、わからないこともあります。でも、先生たちはチャレンジして形にしてくれています。頼もしい存在です。 (次号・後編/構成・竹内)

◎後編は3月31日公開

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