【財界さっぽろ編集部総力取材】10/31投開票・衆院選北海道内“最深”情勢(3)7区・8区・9区

 財界さっぽろオンラインでは、公示中の第49回衆議院総選挙について、4回に分け、北海道内12の小選挙区の終盤情勢をお届けする。今回は道7区、8区、9区について。

 以下、文中すべて敬称略。顔写真や各候補の訴えは公式WebサイトやSNSなども確認のこと。現在行われている期日前投票、31日の投票日に向けてぜひとも参考にされたい。

(文中の政党略称=自民→自由民主党、立民→立憲民主党、公明→公明党、共産→日本共産党、国民→国民民主党、社民→社民党、れいわ→れいわ新選組、N党→NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)

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〈7区〉=釧路市、根室市、釧路町、厚岸町、浜中町、標茶町、弟子屈町、鶴居村、白糠町、別海町、中標津町、標津町、羅臼町

伊東 良孝(いとう・よしたか)72歳 前職(4期)自民公認、公明推薦
自民道連会長、元農林水産副大臣
https://ito-yoshitaka.com/

篠田 奈保子(しのだ・なおこ)49歳 新人 立民公認、社民道連合推薦
弁護士、道セーフティネット協議会代表理事
http://shinodanaoko.com/

石川 明美(いしかわ・あけみ)70歳 新人 共産公認
元釧路市議会議員、共産釧根地区副委員長
http://www2.plala.or.jp/ishiishi/

「すでに“次”を見据え、選挙を戦っている。次というのは、野党候補との対峙ではなく、鈴木貴子との公認争いについて、だ」と、伊東良孝の支援者は口にする。

 自民党は伊東が5選を目指す。現在72歳の伊東は、釧路市議(3期)、道議(2期、釧路市)、釧路市長(2期)を経て、2009年に初当選を果たした。その後、期数を順調に重ねている。鶏卵汚職事件で失脚した吉川貴盛の後を受け、今年、自身2度目の道連会長に就いた。

 伊東には鈴木貴子・宗男親子との因縁が続く。14年の前々回の選挙では、伊東、民主党(当時)現職の鈴木貴子、共産党新人の石川明美が出馬。三つどもえを制したのは伊東だった。敗れた鈴木も比例復活を果たした。

 その後、7区の構図は激変。鈴木親子は16年の衆院選5区補選で、民主が共産と候補者を一般化したことに猛反発。鈴木貴子は民主を離党し、自民入りした。

 17年の前回選挙では、鈴木貴子は伊東と競合するため、比例北海道ブロック単独2位で処遇され、3選を果たした。一方で、小選挙区では伊東と共産・石川の一騎打ちとなり、結果は伊東が圧勝した。

 鈴木宗男は前回選挙から伊東と貴子が小選挙区と比例代表に交互に出馬する“コスタリカ方式”を採用すべきだと主張してきた。党本部の選対委員長(当時)、道連会長(同)、鈴木親子、伊東らが交わした文書を盾に、鈴木貴子の7区出馬を訴えた。

 鈴木宗男は今回も永田町で自民党本部幹部らに働きかけを行った。当然、貴子本人も小選挙区からの出馬に強い意欲を示していた。

 1011日、自民党本部が出した1次公認に道内は7区のみ公認が見送られた。伊東の支援者は当初から「道連会長が『選挙区なしで、比例ブロックから出馬』というわけにはならないでしょう」とみていた。それでも4日遅れで伊東に7区での公認が出た。

「鈴木親子への配慮もあったのではないか。党本部も交え、今回に限って『伊東でいく』とみなで情報共有した」(伊東の支援者)

 結果、鈴木貴子は比例単独1位で処遇された。

 衆院選告示日(1019日)の前日。鈴木貴子の後援会関係者が伊東の事務所を訪ね、こう伝えた。

「鈴木貴子陣営はみな、伊東さんを応援する」

 その翌日、鈴木貴子が釧路市内で行われた伊東の第一声の応援演説に立った。前回を含め、衆院選期間中に2人が7区の街頭に立つのは初めてのことだった。

「鈴木貴子の後援会関係者が伊東事務所で語った言葉を額面通りに受け取った人はどれだけいたのだろうか。鈴木貴子が第一声に姿を見せたのも、自身のPRのためだろう」という声が伊東陣営から聞こえてくる。

 伊東派、鈴木派に分かれる7区支部も決して1枚岩とは言えない。それでも地元与党関係者だけでなく、野党関係者からも「7区での伊東の圧倒的優位は変わらない」との見方が大半だ。

 前回、候補を立てられず、共産に譲る形で不戦敗を選んだ立憲は、新人の篠田奈保子を立てる。19年6月、早々に篠田擁立を決めた。弁護士の篠田は現在49歳。4児の母親でもある。

17年の伊東(自民)VS鈴木貴子(民主)以降、地元民主系は戦ってこなかった。地元立憲の弱体化も懸念されるが、自前の候補で戦いたいという思いがたまっている。野党共闘を鑑みると、それには篠田は適任者のはずだった……」(野党関係者)

 篠田自身はこれまで弁護士として、貧困問題など、“弱者を救う”活動で弱者・市民団体の取り組みに力を入れてきた。そのため、地元共産・市民団体などと良好な関係を築いてきた。

 ところが、篠田は野党統一候補にならなかった。共産は今回も石川を立てる。共産党は比例票の上積みのため、5区、7区、12区で独自候補を擁立する。

「党本部の考えもあり、こうした判断に至ったと思う。しかし、7区は野党共闘がうまくいっているエリアだと、立憲・共産の関係者の多くが、そう考えていただけに残念だ」と、地元野党関係者は落胆する。

 篠田は苦しい戦いが予想される。石川も支持の広がりが限定的だ。

 篠田の支援者の話。

「野党共闘も実現しなかったことで、より厳しいという危機感を原動力に変えて、頑張っていくしかない。石川は決して出馬に前向きだったわけではない。野党共闘の実現に理解を示していた。そういう声も結集させたい。政治家は当選しないととただの人。比例でもいいから、国政に送り込みたいという本音もある」


〈8区〉=函館市、鹿部町、七飯町、森町、北斗市、木古内町、知内町、福島町、松前町、上ノ国町、厚沢部町、江差町、乙部町、八雲町、せたな町、今金町、長万部町、奥尻町

逢坂 誠二(おおさか・せいじ)62歳 前職(4期)立民公認、社民道連合支持
立民道連代表、元総理大臣補佐官
https://ohsaka.jp/

前田 一男(まえだ・かずお)55歳 元職(2期)自民公認、公明・大地推薦
元松前町長、元道職員
https://www.maedakazuo.com/

 8区は立憲・逢坂誠二と自民・前田一男による二度目の一騎打ち。

 現時点で、逢坂が頭1つ抜けだしているといっていい。

 逢坂は35歳でニセコ町長に就任。2005年に国政に進出。立憲民主党では党政調会長や道連代表を務めている。コロナ対策でも党の取りまとめ役となった。

 フットワークが持ち味で、政策も多岐に及んでいる。共産党との関係もうまくいっている。陣営が警戒するのは緩みだ。

 8区の立憲幹部は「このまま手綱をひきながら逃げ切りたい」と力を込める。

 一方の前田は、この戦いに敗れれば支部長を外れる可能性が高い。いわば、崖っぷちに追い込まれている。元商社マン、元松前町長、元道職員という経歴を持つ。

 浪人中で自身の後援会を大幅に拡大。現在では小さい組織もあわせれば、その数は1000を超えている。スマートさが売りの前田が本気になった、と受け止めている自民関係者は少なくない。

「情勢調査の数字は離されているが、前回と比べて、肌感覚では善戦している印象を受ける。残りの数日間、悔いのない戦いをして、相手候補に少しでも迫りたい」と8区の自民関係者は語っている。


〈9区〉=室蘭市、苫小牧市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、白老町、厚真町、洞爺湖町、安平町、むかわ町、日高町、平取町、新冠町、浦河町、様似町、えりも町、新ひだか町

山岡 達丸(やまおか・たつまる)42歳 前職(2期)立民公認、社民道連合支持
元NHK記者、立民道連副代表
https://yamaoka-tatsumaru.com/

堀井 学(ほりい・まなぶ)49歳 前職(3期)自民公認、公明推薦
元外務政務官、元スピードスケート選手
https://horiimanabu.jp/

 自民・堀井学陣営が苦境に立たされている。「チャレンジャーのつもりで背中を追いかける」――3連勝中とは思えない堀井の言葉には、はっきりと焦りの色が浮かぶ。

「堀井学さんが苫小牧になかなか帰ることができなかったのは、北海道の開発予算を決める、北海道特別開発委員会のメンバーだからなんです。今年、開発予算が過去最高の伸び率を見せたのは堀井さんが力を発揮したからです」

 1019日、堀井の苫小牧での第一声では、自民党の参議院議員・長谷川岳が演説を行った。地元不在の理由を並べたのは、立憲民主・山岡達丸陣営へのけん制のためだ。

 堀井は室蘭市出身の49歳。スピードスケートの銅メダリストとしての知名度を生かして道議を2期務め、2012年の衆院選に出馬した。

 対する山岡は東京都出身の42歳。09年の衆院選で民主党の比例北海道ブロック候補として出馬し初当選を果たした。12年に鳩山由紀夫の後継として9区から出馬。

 12年、14年、17年と、堀井と山岡の対決が続き、三度とも堀井が勝利した。

 山岡は17年の選挙で比例復活を果たし、4度目の今回が初の現職同士の対決となる。

 9区では直前に共産党候補が擁立を取り下げた。これにより、1996年の小選挙区制導入以降、与野党の初の一騎打ちが実現。

 勝負の行方を左右するのが総有権者数の約35%を占める大票田の苫小牧市だ。

 山岡は20年の4月から7月にかけて、山岡陣営は「新型コロナ経営被害 無料相談ダイヤル」と銘打った広告を地元新聞に掲載。

 新型コロナに関する寄付金や補助金の申請を代行するというのが趣旨だ。

 同年11月には道選挙管理委員会から公選法が禁じる事前運動に当たる恐れがあるとして注意を受けた。

 山岡事務所によれば、中小企業の経営者や個人事業主などからの相談の電話は絶えない。電話口では山岡自ら応対することも多い。

 地元に根ざし、地元のために走り回る姿で山岡は支持を増やす。胆振管内の首長からもその動きを評価する声が上がる。

 公示直前の1015日には苫小牧医師会が山岡を単独で推薦することを決めた。医師会は自民党議員を推薦することが常であり、極めて異例の対応だ。

 山岡の後援会長を医師が務めていることも関係していると見られている。

 逆風が吹く堀井の応援には岸田文雄首相など、大物が続々と駆け付けている。

 注目は東京オリンピックパラリンピック担当大臣で参議院議員の橋本聖子。政界入りのきっかけを作った“師匠”だ。

 橋本と堀井は誰もが知る蜜月関係にあったが、2者の間には亀裂が入っていた。

 理由は先の道連会長人事にある。堀井は同じ清和会の高橋はるみにつかず、対立する伊東良孝派についた。橋本が高橋と親密なだけに、堀井の態度は清和会への“裏切り”とも受け取れた。 

 橋本がオリパラ担当大臣を務めた関係で自民党を離党していることもあり、堀井との2ショットは久々。

「ゴタゴタはあったけれど、弟分のピンチなのでそんなことは言っていられない」(自民党関係者)と駆け付けた橋本の応援は実を結ぶのか。 

 投票日まであと3日。堀井は山岡にどこまで迫ることができるのか。注目が集まっている。