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医療の立場から考える本来のあり方とは “眼科医が提供する”アートメイクという選択肢

医療法人SCM 新川中央眼科 院長 小川 佳一
おがわ・けいいち/1996年旭川医科大学卒業。旭川厚生病院、苫小牧市立総合病院、道立江差病院で勤務後、開業。日本眼科学会認定眼科専門医。札幌看護医療専門学校非常勤講師。

白内障や緑内障といった幅広い眼疾患の診断・治療を行う「新川中央眼科」が6月から医療アートメイクを開始した。眼科医として取り組みを開始した経緯や意義を小川佳一院長に聞く。

――医療アートメイクをスタートさせた経緯を。

小川 当院では高齢者をはじめ、さまざまな患者様の白内障の手術を数多く手掛けています。近年、アートメイクをされている人が増加しましたが、適切ではない施術を受けている方も少なくありません。そこで、医学的に適切なアートメイクを受けていただきたいと思ったのがきっかけです。

――適切ではない施術とは。

小川 従来から身体に針を刺し、色素を注入する刺青やタトゥーは法的にグレーゾーンでした。2020年には「刺青・タトゥーは文化的側面から医療行為には当たらない」との判決が示されましたが、美容・審美目的のため皮膚のごく浅い層に色素を注入するアートメイクは、医療機関において医師、または医師の指示の下で看護師が行う医療行為とされています。しかし、インクメイクや美容アートメイク、コスメタトゥーなどの表現で、美容室や美容サロンといった医療機関ではない施設で施術されていることも多く、厚労省からも注意喚起がされています。

また、瞼の皮膚は非常に薄く、アイラインなどは涙の分泌に影響することが懸念されていることや、誤って角膜や結膜に傷をつけたりする例が報告されています。眼の周囲の施術に関しては、眼やその付属器官の専門家である眼科が行うことが大事ではないかと考えています。

――具体的な施術内容は?

小川 対象箇所は眉毛とアイラインです。骨格や目元のバランスを見極めた上で、適切な施術を提案しています。「眉毛が薄くなってきた」「アイラインが上手く引けない」「朝のメイク時間を短くしたい」といった要望に幅広く対応しています。

――アートメイクを眼科医がするのは異例では?

小川 私の知る範囲では、札幌市内の眼科クリニックでアートメイクを施術しているのは当院のほかに1軒。美容形成外科の併設ではない眼科が単独で扱っているのは当院だけだと思います。当院では、より質の高い医療アートメイクを提供するため「一般社団法人日本医療アートメイク学会」に所属し、情報収集や啓蒙活動も行っています。最近では、若い世代を中心にアートメイクは、まつ毛パーマやまつ毛エクステなどの延長にあるファッションとして捉えられているのではないでしょうか。施設で使用されている機器や色素はさまざまですが、当学会では法令遵守を徹底し、医療行為として医師の責任の下で施術を行い、合併症や後遺症にも適切に対応しています。

また、以前からアピアランスケアの一環としてアートメイクが活用されています。例えば乳がん患者様の乳房再建術の際に、乳頭・乳輪を再現したり、抗がん剤の影響で毛髪が抜けた患者様の脱毛による外見の変化を目立たなくするなど、治療に伴う外見の変化による精神的な苦痛を軽減してくれます。

眼科領域ではロービジョンケアという分野があります。これまでは網膜色素変性症や緑内障などで視力が低下した患者様の日常生活を支えるため、拡大鏡やサングラスなどの視覚補助具の活用や生活訓練を行ってきました。こうした患者様は外出時にメイクをすることが大変です。ブラインドメイクという技術を指導することもありますが、道内には教えられる専門家がいません。医療アートメイクによって、その負担を軽減することができれば、社会との交流の機会が増えることが期待できます。病気を患っている方の時間的・精神的な負担の軽減にも役立ちますね。最近は女性ばかりではなく、薄毛を目立たなくするために男性が利用しているケースもあります。

――今後の展開は?

小川 大きく3つです。1つは医療アートメイクの重要性を広く周知できるよう啓発活動に力を入れること。より多くの人が適切な医療アートメイクを受けられ、精神的な苦痛を和らげる可能性があることを知ってもらいたいです。次に、同じ志を持つ眼科医を増やしていくことです。それが、北海道内でがんや眼疾患を抱える患者様のQOL向上にもつながります。そして最後は、医療アートメイクの研究を進めることです。アートメイクの眼科に関する論文は、3件ほどしか発表されていません。アートメイクが眼瞼や視機能にどのような危険を及ぼすのか、またどのような医学的効果が期待できるのか、適用基準といったことを科学的に明らかにして、利用する患者様の安心感を高めたいと思っています。今後も、医療アートメイクに関する有益な情報を多くの方に届けられるよう発信していきたいと考えています。

(聞き手・氏家)

施術は眼科医管理体制のもとで行う
札幌市北区新川の病院外観