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中村記念病院

荻野 達也 脳神経外科部長・脳血管内治療センター長
おぎの・ たつや/2002年札幌医科大学卒業後、同院脳神経外科に入局。15年から同院脳血管内治療センター長、22年から同院脳神経外科部長も兼務。日本脳神経外科学会専門医。日本脳卒中学会専門医。

WEBとフローダイバーターを用いた新たな治療法

 脳梗塞や脳動脈瘤といった脳血管疾患に対する治療は、この十数年で大きく進化してきた。特にカテーテルを用いた脳血管内治療は、血管内から病変にアプローチする治療法として広く行われるようになった。

 中村記念病院では、脳血管内治療を中心とした診療体制のもと、急性期から慢性期までの脳血管疾患に対応。2013年に開設した「脳血管内治療センター」を中心に診療が行われており、その陣頭指揮を執るのが荻野達也センター長だ。

 急性期脳梗塞の治療として主流となっているのは「血栓回収療法」。これはカテーテルを脳の血管まで進め、血栓を直接回収して血流を再開させる方法で、昨年に同院で行われた200件の脳血管内治療のうち、70件以上がこの治療だった。

 脳梗塞は、発症からの時間経過が治療成績に影響することで周知されており、血栓回収療法は適応症例において治療選択肢の1つとされている。

 一方で、脳動脈瘤に対する血管内治療は進歩しており、その代表的な治療の一つが「WEB留置術」だ。

 同術式は、WEBと呼ばれるメッシュ状のデバイスを動脈瘤の内部に留置することで、動脈瘤内の血流を変化させ、血栓化を促す治療法。従来行われているコイル塞栓術が、複数のコイルを動脈瘤内に充填することで閉塞を図るのに対し、WEBは単一のデバイスで瘤内構造を形成する点が異なる。

「治療手技が比較的シンプルなので、治療時間の短縮にもつながります。瘤内にコイルを詰める必要がないため、血管内操作の負担も軽減され、分岐部に生じる動脈瘤などにおいて新たな選択肢となっています」

 さらに、より複雑な形状や広い頸部を持つ動脈瘤に対しては、「フローダイバーター」と言われるステント型デバイスを用いた治療を行う。

 この治療は、動脈瘤そのものを直接閉塞させるのではなく、親血管にステントを留置することで血流の方向を変え、動脈瘤内への血流を減少させることを目的としている。

 動脈瘤の形状が複雑でコイル治療が困難とされていた症例においても治療ができるうえ、低侵襲のため患者への負担が少ないという。

「WEB留置術とフローダイバーター治療は、それぞれ異なるメカニズムと適応を持ちながら、従来のコイル塞栓術では対応が難しかった領域の補完が期待できます。いずれも患者さんごとの動脈瘤形状やリスクを踏まえ、最適な治療法を選択するための重要な選択肢となっています」

脳動脈瘤内にデバイスを誘導
メッシュ状の袋を瘤内に留置する