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阿部鋼材

小さな機械部品から建物の骨組みまで、大小さまざまな製品を手掛ける

創業75周年。鋼材加工を通じて暮らしを影から支える

 道内有数の鋼材加工会社「阿部鋼材」は、今年で創業75周年を迎えた。発寒と石狩に製造拠点を構え、鋼材の切断・曲げ加工から溶接・組立までを自社一貫体制で行う。建設部材や橋梁部材、プラント用部品、掘削中の地盤崩壊を防ぐためのトンネルの支保工など多岐にわたる製品を手掛け、建築・インフラ分野など、日常の暮らしを影から支えてきた。

 同社の製品はすべて受注生産で、顧客ごとのニーズに応じたオーダーメードでありながら、高品質短納期を実現する。その根底には、創業以来受け継がれてきた〝顧客第一主義〟の精神があり、これが顧客からの信頼につながっている。

 3代目の阿部大祐社長は「当社の仕事は、お客様が設計した製品を完璧な形に仕上げること。提案力で発想を支え、技術力で新たな価値を創造する〝新価値創造支援業〟として、これからも期待に応え続けたい」と話す。

 技術革新にも積極的だ。2020年には道内で初となる全自動3次元レーザー加工機「3Dファブリギア400Ⅲ」を導入。23年には「10KWファイバーレーザーマシン」を導入し、高精度かつ効率的な生産体制を構築した。

 阿部社長は「人手不足が深刻化する中、社員の安全と負担軽減を最優先に考え、機械化を推進してきた。付加価値を生まない工程は自動化し、職人には高度な技術を要する仕事に専念してもらうことで、生産性と技術レベルが飛躍的に向上した」と話す。大規模な設備投資を通じ、現場の働き方改革と技術伝承の両立を実現している。

 また、人材育成にも注力する。能力を可視化した「成長支援制度」を導入し、一人ひとりのキャリア形成を支援。23年からは「環境整備活動」を開始。毎朝1時間の清掃活動を全社員で継続している。

「掃除を通じて、社員間のコミュニケーションも活性化し、チームワークも向上しました」と阿部社長。若手採用や定着率の向上など、改革の成果が着実に表れている。

 今年9月には、石狩工場に隣接する「三和精工」を事業承継し、「三和マシニング工場」として稼働を開始。製造拠点を3工場に増やし、組織の総合力強化へ着実に歩みを進めている。

「誠実なものづくりと挑戦を重ねながら、今日まで着実に歩みを進めてきました。これからも事業承継や異業種との連携を摸索し、社会から必要とされる企業でありたい。誠実に、技術で未来を切り拓く――それが阿部鋼材の変わらぬ使命です」と阿部社長。

阿部大祐社長
敷地面積1万9800平方メートルを誇る石狩工場
長尺鋼材の切断・穴開けも自動で対応する