札幌ベニヤ商会
いまい・のぶたか/1979年札幌市生まれ。北海学園北見大学(現:北海商科大学)卒業後、2002年に札幌ベニヤ商会に入社。現場業務や営業部門で経験を重ね、部長、専務を歴任。25年7月に社長に就任。
100周年へ。家業からの脱却も視野に経営改革
1928年の創業以来、北海道の住宅資材供給を担ってきた札幌ベニヤ商会。2024年にホールディングス化し、新たな経営体制へ移行した。7月に6代目として就任した今井伸孝社長に、100周年に向けた改革と展望を聞いた。
〝感謝〟を胸に変化を恐れず挑む100周年
――今年7月、社長に就任されました。率直なお気持ちは。
今井 1928年創業の「札幌ベニヤ商会」は、2028年に創業100周年を迎えます。その節目を前に経営を託され、責任の重さを日々感じています。現状維持に甘んずることなく、変化の激しい時代だからこそ挑戦を続け、会社を発展させることが私の使命と考えています。
――昨年「サツベニホールディングス」を設立されました。その狙いを教えてください。
今井 当社は建築資材卸を中核に、物流や建築士事務所など多角的に事業を展開してきました。しかし、長期的な成長には、新しい挑戦に踏み出す体制が必要でした。単なる建材卸では差別化が難しく価格競争に陥りかねません。そこでホールディングス化により事業ごとに責任と権限を明確化し、分業体制を生かして事業の幅を広げながら、屋台骨である資材分野を強化し、グループ全体の成長を図ります。
――今後の構想については。
今井 M&Aや働き方改革の推進に加え、各事業部を分社化し、独立採算制で運営することでチーム力を高めたい。さらに、後継者不在の企業をグループに迎え入れシナジーを発揮し、建材・建設の総合企業グループへと発展させたいと考えています。
――創業から続く伝統をどのように受け止めていますか。
今井 経営理念「4つの感謝」――お客様、仕入先、社員、株主への感謝は、創業時から受け継がれてきた大切な価値観です。当社は1971年に民事再生を経験し、会社の存続すら危ぶまれる厳しい時代がありました。その苦境を乗り越えられたのは社員一人ひとりの努力と結束があったからだと聞いています。そうした歴史を振り返ると、今の安定は決して当たり前ではなく、過去の社員の苦労によって築かれたものだと実感します。だからこそ私は社員を第一に考え「この会社で働けて良かった」と思える環境を整え、次の世代により強い組織をつないでいくことが、自分に課せられた責務です。
――卸の枠を超えた挑戦もされていますね。
今井 新築着工数の減少など、住宅業界は厳しい局面にあります。建材卸だけでは生き残りが厳しく、いかに付加価値を提供できるかが問われています。当社は工事部を併設し資材提供に加えて工事支援も行っています。さらに、道産材を活用した木製サッシ・ドアなどの制作販売も手掛けています。当社は北海道産木材製品ブランド「北海道ウッド」に認定され、22年には道南杉仕様の木製サッシが「ウッドデザイン賞 技術建材分野賞」を受賞しました。また、自動車ディーラーと連携し、EV電力を住宅で活用するV2H事業にも参入し「建材×エネルギー」という新たな取り組みにも挑戦しています。物流面では在庫システムを刷新し、受発注から配送までの業務フローを見直しました。生産性と付加価値の向上こそ、今後の競争力の源泉です。
〝家業から企業へ〟を合言葉に成長を目指す
――組織の在り方についてはどのように考えていますか。
今井 創業100周年を目前に控え、次代を見据えた組織づくりが課題です。私は必ずしも創業家が経営を担い続けることが最善とは考えていません。〝家業から企業へ〟を合言葉に、創業家に依存しない経営体制や社員から次期社長を選任する可能性も視野に入れています。また、社員一人ひとりが主体的に成長できるよう、研修制度やキャリア形成の支援を一層強化していきます。人材こそ企業の未来を支える最大の財産であり、次代を担う人材育成にも力を注ぎ、社会に価値を提供し続ける企業を目指します。
――最後に100周年に向けた展望をお聞かせください。
今井 まずは「札幌ベニヤ商会」の経営基盤をより確かなものとし、グループ全体の安定的な組織運営を進めていきます。中長期的には売上高100億円を目指し、社員が誇りを持てる環境づくりにも注力します。
100周年はゴールではなく、新たな挑戦のスタートラインです。支えてくださる皆さまへの感謝を胸に、北海道の建築業界とともに歩み続け、〝古くて新しい会社〟として、さらなる進化を遂げていきたい。