道民防災コンサルタント
避難訓練の重要性を訴える。
備蓄は「トイレにも目を向けて」
発災から72時間――これが生死の分岐点とされている。何より、生存率を上げるためには的確な避難が重要だ。
「例えば〝火災は建物の外へ〟〝地震は建物の上階へ〟と避難の仕方が災害によって全く異なります。常日ごろからの避難訓練が命をつなぐ鍵となる」と訴えるのは「道民防災コンサルタント」の前田博文社長。
同社では、消防用設備などの点検事業のほか、顧客の防災訓練も実施。前田社長を筆頭に「防災士」の資格を持つ従業員が多数在籍しており、これまでに約300カ所での訓練実績を有する。
防災訓練のシナリオ設計は依頼先の規模や業種、建物の立地などを総合的に判断して設定していく。消火器や消防設備の操作訓練から避難経路の確保、AEDの操作方法までレクチャーしている。災害時のパニックを防ぐとともに、防災設備を最大限に活用できれば、避難できる確率が増すという。
もちろん訓練だけでは防災対策として完璧ではない。備蓄品の準備も重要なファクターだ。
「食料と水の備えは当たり前です。盲点となるトイレにも目を向けてほしい。不衛生なトイレ環境が原因で水分摂取を控えたり、体調を崩したりすると、最悪の場合死亡に至る『災害関連死』が発生します」(前田社長)。
上水道・下水道・電気のどれか一つでも使えなくなると、水洗トイレの機能は停止する。そこで威力を発揮するのが、便座に取りつけて使用する「携帯用トイレ」と、排せつ物を処理する「圧縮保管袋」だ。7日分を備蓄するのが望ましいという。
また、マンションの管理組合向けに推奨しているのは、洗浄便座メーカー「杉半」(本社・岐阜県)の水圧式洗浄便座「Kirei」。停電時でも水道さえ使えれば、電源不要で洗浄機能が使用できる。「おしり洗浄」と「ビデ洗浄」が使えるうえ、取り付けも簡易なので、共有部にトイレがある場合は設置を推奨している。
前田社長は「発災から最短でも3日間は、人命救助と情報収集が優先されるため、行政の援助とボランティアに期待ができません。備えあれば憂いなしの精神で、日頃から防災対策を講じることが大切です。北海道では局地的豪雨が多発しています。水の浸入を防ぐ水のうや土のうも準備してほしい」と呼びかける。