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今振り返る、私の思い出紀行 第二十四回 北海道中央バス シィービーツアー 戎谷 侑男氏ズカンパニー

2006年1月27日に行われた夕張市「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」での除雪作業

夕張市応援のために企画した「雪はね応援バスツアー」

 北海道中央バスの旅行事業部門に所属し、これまでさまざまな旅を企画・実施してきました。中でも当社は地域を支えてきた産業遺産やものづくりの場を訪ねる「産業観光」に力を入れており、かつて全く観光とは縁遠い「雪かき」をテーマにした旅が予想外の反響を呼んだことが今も忘れられません。

 きっかけは2005年に夕張市で産業観光のシンポジウムが開かれた際、観光協会の役員から「冬の夕張は雪が深く、観光施設や高齢者住宅などの除雪が大変。何か支援方法がないものか」と相談を受けたことでした。それで思いついたのが〝雪かきツアー〟で、早速社内で相談しましたが「金を払ってまで雪かきに来る人などいない」と一笑に付されました。

 とりあえず実施してみることになり、簡易的なパンフレットを作って募集してみたのですが、これがさっぱり集まりませんでした。

 ところがこの企画を「面白い」として、北海道新聞が見開き2ページで大きく取り上げてくれ、その後大反響。テレビやネットでも報道され始めたのです。

 ツアー名は「夕張雪はね雪おろし応援バスツアー」。札幌発着の日帰りで、料金は3000円。定員は300人。昼食、お土産、温泉入浴付きとしました。道内はもとより、東京、九州からも申し込みがあり、06年1月に第1回目、翌月に2回目の2班を実施しました。

 うれしいことに報道などでツアーを知った個人、企業、団体、官公庁などからさまざまな形で支援が寄せられました。帯広畜産大学からは昼食の豚汁用にと豚肉が届き、北海道開発局からは業務用の手袋、長靴の貸与、飲料メーカーからは缶ビール、お茶、水などが届けられました。さらには個人や企業からの寄付もありました。

 スノーダンプやスコップ、お土産は地元の金物店、菓子店で揃えましたが、各店とも思わぬ大量注文に大喜びで、大忙しとなりました。

 さて、除雪対象ですが、「幸福の黄色いハンカチ想い出ひろば」「夕張石炭博物館」、旧北炭施設の「夕張鹿鳴館」、旧市民病院跡地の「希望の杜」の4カ所としました。午前と午後のトータル約4時間の作業で、急傾斜の屋根など危険が伴う作業については地元の消防団員が手伝って進めました。

 この雪はねツアーはその後2年続けて行いましたが、毎回好評で話題となりました。当時、財政破綻した夕張市へはさまざまな支援や応援があったのですが、産業観光ツアーを通じてという例は他にはなかったかと思います。

 このツアーが私にとっては忘れ難い旅となり、縄文時代から続いているともされる日本人の奉仕・相互扶助精神のDNAによるものと確信しています。