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森山病院

稲葉 雅史 院長
いなば・まさし/1980年旭川医科大学医学部卒業。96年エール大学(アメリカ)留学。京都医療センター心臓血管外科や札幌厚生病院などを経て、2017年から現職。日本心臓血管外科学会認定心臓血管外科専門医。

血管治療が専門。高難易度の手術にも対応する

「動脈硬化が原因で下肢の動脈が詰まる下肢閉塞性動脈硬化症の発生頻度は、70歳を境に増えます。高齢の方には自身の体の変化に敏感になってほしい」と話すのは「森山病院」の稲葉雅史院長。  

 同院は、1952年に道内初の整形外科単科病院として旭川市に開院。稲葉院長は就任6年目だ。血管の診療が専門で、患者は旭川市や近郊町村のほか、釧路市など遠方からも訪れる。

 下肢閉塞性動脈硬化症の検査は、下肢全体の診療と同時に動脈の触診が基本となる。足関節と上腕の血圧を同時に測定し、下肢全体の動脈血流を評価し診断。病変が疑われる場合は、超音波検査やMRIなどを用いてさらに詳細な検査を行う。

 喫煙者に多く発症する傾向があるのも特徴だ。このため、禁煙を含む生活習慣の改善指導や薬物療法で治療をしていくが、潰瘍や壊死がある場合はバルーン拡張術やバイパス術などの血行再建術を推奨する。

 バイパス術は細径の血管を扱うため繊細な技術が求められる。稲葉院長は、30年以上の豊富な経験を基に高度な施術を行っており、入局した2015年以来、同院のバイパス手術数は年間50例以上、これまで400例以上(24年1月31日現在)に及んでいる。

「動脈をつなぐ部位やルートを何度もイメージしてプランを立てます。使用できる静脈の長さは人それぞれ違い、実際に切開するとイメージと異なることもある。ここで臨機応変に対応できるかどうかが〝鍵〟となります」(稲葉院長)

 また、下肢静脈瘤も得意とする疾患の1つ。足の静脈弁の異常で血液が逆流して静脈がこぶ状に浮き出る疾患だ。

 足がだるい程度であれば、弾性ストッキングを装着する圧迫療法を行い、痛みや筋肉の痙攣、かゆみ、むくみが強い場合は手術を勧める。

 手術は、早期であれば血管内焼灼術が適応となる。約1~2㍉のレーザーファイバーや高周波カテーテルを弁不全の逆流血管に挿入して異常部分を閉塞する血管内治療だ。低侵襲かつ短時間で済む手法として知られる。

 稲葉院長は「当院は総合病院ですが、血管に関する先端治療を行っている。昨年4月には同分野の外科医も増員し体制の強化も図っています」と語る。

繊細な技術が要求される血管手術を得意とする
2020年に移転新設をした病院外観