森山病院

ただ・ゆうき/2012年旭川医科大学医学部卒業。旭川医科大学病院、札幌厚生病院や製鉄記念室蘭病院などを経て、23年から現職。日本外科学会認定外科専門医。日本心臓血管外科学会認定心臓血管外科専門医。
血管専門。多様な術式を患者に合わせて選択
「下肢静脈瘤は誰にでも発症しうる疾患です。酷くなり日常生活に影響が出る前に、専門医の診療を推奨します」
道北圏最大規模の基幹病院である「森山病院」。血管の診療を専門としている多田裕樹部長の元には、旭川市や近郊町村のほか、遠方の市町村からも患者が訪れる。
多田部長は、カテーテル術と外科的治療のどちらにも対応する血管外科医。心臓と脳以外の全身の血管を扱い、主に動脈、静脈、リンパ管の疾患を治療する。なかでも多いのが下肢静脈瘤だという。
同疾患は、足の静脈弁の異常で血液が逆流して静脈がこぶ状に浮き出る病気だ。足のだるさや痛み、筋肉の痙攣、かゆみ、むくみといった症状と血管病変の状態によって、患者ごとに弾性ストッキングによる圧迫療法や手術など適切な治療を勧めている。
視診や触診を丁寧に行い、超音波検査で診断する。代表的な術式は、血管内焼灼術と血管内塞栓術の2つで、症状や患者のライフスタイルなどを考慮して患者と決めていく。
血管内焼灼術は、約1~2㍉のレーザーファイバーや高周波カテーテルを弁不全の逆流血管に挿入し、異常部分を閉塞する血管内治療だ。
一方の血管内塞栓術は、比較的新しい術式で、カテーテルを用いて血管内に医療用の接着剤(グルー)を注入し、血管を閉塞させる治療法。どちらの術式も低侵襲かつ短時間で、術後の回復も早い手法として知られる。
手術に要する時間は片足で30分ほど。患者の背景や重症度によって異なるが日帰りも可能で、入院でも1泊2日の場合が多いという。
このほか動脈硬化性疾患にも精通する。心筋梗塞や脳梗塞などの危険性は知られているが、下肢の場合は歩行困難や切断に至ることもある疾患だ。
診断には、体の負担が少ないABI検査を採用。両腕と両足首の血圧を測ることで、血流の状態を推測する。治療は薬物治療、カテーテル治療、外科的治療の中から、患者の状態や血管病変の性状などから総合的に判断している。
「気付かぬうちに進行するため、予防と早期発見が大切です。運動や食生活習慣の改善が効果的で、皆さんそれぞれにとって無理のない範囲の運動を、コツコツ継続することが望ましいです。バランスの取れた食事や適正体重の維持も重要となります」と周知する。
