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オフグリッド化の“頭脳”として産学官から信頼

トミタ社長 佐山 廣和氏
(さやま・ひろかず)1967年札幌市生まれ。96年トミタに入社し、2003年から現職。太陽光発電や蓄電池などを熟知した再エネコンサルタントとして官民問わず講演依頼が寄せられる再エネ分野の第一人者。

再生可能エネルギー、特に太陽光発電は脱炭素社会の実現に必要不可欠なファクターだが、北海道は積雪による発電効率の低下が課題だ。他社に先駆けて太陽光パネルの壁面設置に挑戦したトミタ(本社・札幌市)の佐山廣和社長に、再エネコンサルタントとしてのビジョンを聞いた。

再エネ分野にシフト壁面設置のパイオニア

――奥様の親の会社を引き継いだそうですね。

佐山 金物や燃料販売のトミタを引き継がせていただきましたが、斜陽産業であると危機感を抱いていました。トップに就いて5年ほどたった2008年頃に太陽光発電が登場し、将来性のある市場だと感じ、すぐに事業化しました。ただ、北海道は降雪問題があり、冬期は発電効率が大幅に低下してしまう。そこで建物の壁に垂直に設置すればパネルに雪がつもることはないと考え、壁面設置に取り組みました。

――太陽光パネルメーカーの反応は。

佐山 当時はどこのメーカーも壁面設置を想定していませんでしたから、賛同は得られませんでした。自らの責任のもとで、まずは自社の壁面に設置してみましたが、施工やメンテナンスの面で苦労しました。さまざまな試行錯誤を重ね、詳しくは言えませんが〝ひっかける〟という特殊な施工方法にたどり着きました。

そして11年、余市の青果店様に当社初となる壁面設置工事をさせていただきました。そこからは意匠性や施工性なども毎年ブラッシュアップして、一般住宅を中心に実績を積み上げました。しばらくして当社の存在をパネルメーカー様にも知っていただけるようになりました。

――メーカーから〝お墨付き〟をもらえたと。

佐山 そうですね、メーカー側から当社に直接オファーをいただけるようになりましたからね。現在は、販売数世界ナンバーワンの太陽光パネルメーカー「LONGI」など主に3つのメーカーのパネルを取り扱っています。

また、超軽量パネルで接着剤で貼るだけのフレキシブルな太陽光パネルも取り扱っています。メーカーからは道内の販売を一任されており、価格動向にもよりますが、近い将来、北海道では壁面設置が主流になるでしょう。さらに今後は国内大手の商社とタッグを組み、窓ガラスに組み込めるフィルム状の次世代型太陽光電池「ペロブスカイト」の拡販にも乗り出します。

オフグリッドでも引く手あまた

――固定買い取り制度(FIT)が順次終了し、充分な売電収入が見込めなくなったことから、電力を自給自足するオフグリッドが注目されています。

佐山 当社は太陽光事業のスタート時からオフグリッド、自家消費を推進してきました。もともと私は東芝でシステムエンジニアとして電力会社の系統制御システムをつくってきた技術畑ですから、システムの設計は得意分野です。

オフグリッド化に必要不可欠な太陽光パネルや風力発電機、蓄電池などは同一メーカーではないですから、どのように連携すれば良いのか、メーカーも工務店も誰も実は〝わかっていない〟のが現状です。再エネ事業をスタートして15年以上かけて培った連携システム設計のノウハウが当社の武器であり、大手エネルギー会社や商社、ハウスメーカーなどからもコンサルティング依頼が寄せられるようになりました。

南幌町のゼロカーボンヴィレッジプロジェクトにも建築家や工務店とともに参画しています。私が先行してきた取り組みに時代が追いついてきた感覚ですね。

――BCP対策としての需用は。

佐山 18年の北海道胆振東部地震後は、防災意識の高まりから問い合わせが増えています。ただ、首都圏と比べると道内企業はリテラシーが低い。危機意識を持って積極的に取り組んでいる企業はごく一部ではないでしょうか。

その一方で、SDGsの侵透や公共工事における評価の基準変更などを背景に、建設現場のオフグリッド化のニーズは高まっています。そこで前述の商社に協力を仰ぎ、これまでは数千万円クラスであった動力(三相200V)出力可能な蓄電池を、極めて廉価に提供したいと考えています。今年早々にリリース予定です。

――今後の市況予想は。

佐山 再エネ分野の新技術が次々に誕生する中、電気の自給自足がスタンダードになる時代は着実に近づいています。北海道も東京都のように住宅の新築において太陽光発電設備の搭載が義務化になる可能性も否定はできません。太陽光や風力などの発電設備と蓄電池をしっかりと連携させるオフグリッド設計のニーズが高まることは明白です。すべてをパッケージ化した商品開発も計画中です。

再エネのブレインとして存在感

――官民問わず、再生エネルギーの専門家として講演依頼があるそうですね。

佐山 太陽光パネルや蓄電池のメーカー、道や札幌市をはじめ、ガス会社や石油会社、住宅会社、建築技術団体等からは定期的にオファーをいただいています。また、今年、来年は、京都大学と講演を含めた協働プロジェクトも開始する予定です。

私が持つノウハウや考え方を、施工会社や販売会社などにも知っていただき、ビジネスに生かしてほしいと思っています。当社はあくまでも頭脳としてノウハウを提供していく方針です。

――商圏が拡大しますね。

佐山 日本全国どこでも対応可能ですが、個人的にはブルーオーシャンといえるアフリカのオフグリッドプロジェクトに携わってみたいですね(笑)。

販売者も施工者もプロジェクト参画者全員がしっかり利益を得る仕組みをつくることこそが、脱炭素社会実現の近道ではないでしょうか。微力ながら未来の子ども達につながるサスティーナブルな社会の実現に尽力していきたい。

太陽光パネルの壁面設置に豊富な実績を誇る