【次期チェアマン】コンサドーレ・野々村芳和社長後継に三上大勝GMが就任も“歯切れが悪い”理由とは?
「私1人では難しいことでも社員、スタッフ、選手、サポーター、パートナー企業のみなさんと力を合わせられれば、今まで通りクラブを発展させることができる。スポーツ、サッカーを通し北海道、札幌市のみなさんを豊かに元気にすることがわれわれの事業だということを、今後も具現化できるよう頑張っていきたい」
J1リーグ・北海道コンサドーレ札幌はきょう1月12日にオンラインで会見を開き、運営会社代表取締役社長の野々村芳和氏が代表権を保持したまま取締役会長に、取締役ゼネラル・マネジャー(GM)の三上大勝氏が代表権を持つGMとなる人事を発表した。
三上氏は1971年北海道室蘭市生まれ。室蘭大谷高校、札幌大学でサッカー選手として活躍し、94年から95年まで現J2のモンテディオ山形の前身・NEC山形に選手として所属した。
引退後は同クラブ職員を経て99年7月から当時のコンサドーレ札幌運営会社・北海道フットボールクラブ(HFC)に転身。HFCでは一貫して強化部畑を歩み、2004年に強化部強化担当、07~12年まで強化部長。13年からGMに就任し、18年から取締役。
また14年からバトミントン、カーリングなどほかの競技部門とスポーツによる地域活性化を目的に設立されている一般社団法人コンサドーレ北海道スポーツクラブ代表理事も兼任している。
複数の関係者の話を総合すると、野々村氏は後述のようにJリーグチェアマン就任が決定的となって以降、後任の人選に着手。昨年末には三上氏でほぼ固まり、年をまたいで1月7日にコンサ役員へ内示、同11日の臨時役員会で正式に決まった。
三上氏は代表就任について冒頭のように決意を述べる一方、社長に昇任せずGMに留まったことについて「私のわがまま」と明かした上で「GM(の役割)にこだわりがあり、関係各所に相談したところ理解をいただいた。実質は社長と思っていただいて構わない」と明言した。
一方、2021年12月15日発売の月刊財界さっぽろ新年特大号でも既報の通り、野々村氏はJリーグの次期チェアマン就任が決定的。1月末に開かれる選考委員会を経て、クラブ経営の枠を飛び越え、Jリーグそのものの舵取りを担うことになる。
三上氏は野々村氏について「今後もクラブ経営に関与する」と話す一方、報道陣からチェアマン就任の件を問われると「(その件について)お答えできることは何もない」とした上で「さまざまな変化があったとしてもその変化にクラブとしてついていける、変化に負けずにクラブとして成長していける体制をつくっていきたい」と、歯切れの悪い言い方に終始した。
本誌を含むこれまでの報道に対し、野々村氏やこの日の三上氏が頑なに言及しないのは「Jリーグ側から1月末の公式発表まで“箝口令”を厳命されているから」(Jリーグ関係者)という。
この関係者はチェアマン人事についてこう解説する。
「昨年秋のスポーツ紙報道で野々村氏のほか、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルス元社長の島田亨氏、現Jリーグ専務理事の木村正明氏などの名前が上がった。この中から野々村氏に就任の内示があったとされる。だが1月の正式決定を前に新チェアマンの露出が増えることで、現チェアマンの村井満氏が“レームダック”化することを避けたいのだろう。箝口令を敷いているのは村井氏自身の指示と見られる」
また別のクラブ関係者は、村井氏の行動の背景をこう推測する。
「村井氏は、コロナ禍によるクラブの財務状況悪化に備えたJリーグ参加資格要件の特例措置について、2年で終了する決断を下した。これは巨額の赤字を損金として計上できる親会社のある、ビッグクラブ寄りの裁定だ。そのビッグクラブの筆頭がヴィッセル神戸。オーナーは言わずと知れた楽天グループ総帥の三木谷浩史氏で、島田氏のバックにも三木谷氏がいる。チェアマン選考は外資系コンサルが主導しているが、野々村氏は昨年の早い段階でチェアマン内定が出ていたという話もあり、島田氏サイドや村井氏らがその既成事実化を防ぎ、巻き返しを図っているという噂も飛び交って“政治案件”化している。野々村氏が“貝になる”のは、そうした政治闘争に巻き込まれることを避ける意味合いもある」
あさって1月14日金曜にデジタル版、15日土曜に雑誌版が全道で発売の月刊財界さっぽろ2022年2月号では「コンサドーレ 理想と現実の狭間で」と題した特集を掲載。特集内では、野々村氏への単独インタビューを行った。
就任9年で売上高3倍、トップチーム強化費を6倍に引き上げる卓越した経営手腕を見せる一方、この2年はコロナ禍で自身初めての減収。財務面では8億円強の融資枠をすでに限度額まで借り入れている状況下で、降って湧いたチェアマン就任の報。2月中旬にはJ1リーグの新シーズンがスタートする中、Jリーグの公表から2週間あまりでチームを去らねばならないことについて、野々村氏が本誌に話した内容は――。
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〈月刊財界さっぽろ2022年2月号特集〉
「コンサドーレ 理想と現実の狭間で」(全16ページ)
◎Jリーグチェアマン就任決定的 渦中の野々村芳和社長を直撃!
◎コンサOB・砂川誠×ペナルティ・ワッキー
Jリーグモノマネ秘話から日本サッカー振興まで
名門・市立船橋高校の先輩・後輩が真剣対談!
◎赤黒“レジェンド”砂川誠のコンサの深層
小野伸二
◎目標「ACL」の功罪――3年連続二ケタ順位は低迷か、偉業か
文=青木一平(スポーツライター)
◎データから分析、コンサが上位に浮上するために必要な“ピース”
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