【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】札幌大学理事長・荒川裕生氏と語る(前編)

 本誌連載「田中賢介 まだ見ぬ小学校へ」より、札幌大学理事長の荒川裕生氏を迎えての対談を前後編に分けて全文公開する。田中学園立命館慶祥小学校の校舎はもともと札幌大学の施設だった。この建物が縁で、両者は包括連携協定を締結。子どもたちと学生たちの交流をはじめとした小学校と大学の連携内容や地域との関係性などを語り合った。以下はその前編。

隣接する教育機関として連携効果を地域にも

荒川裕生氏 ©財界さっぽろ

スケールの大きな大学を体感してほしい

 ――お二人が面識を持ったのはいつからですか?

 田中 2年くらい前ですかね。小学校用地を探していたとき、とある方から札幌大学の研修センターを教えて頂いたのがきっかけでした。もともと校舎は資金面などから既存建築物を改修する計画でした。研修センターのお話をさせていただくため、荒川理事長にお会いしました。

 荒川 田中理事長から面会の話を頂戴したとき、当時はまだ現役だったと思いますが、田中賢介選手のファンの一人として、たいへんワクワクしました。

 お会いすると、田中理事長は北海道、そして教育に対する熱い思いをお話になられました。幼児教育、児童教育のあり方などでした。

 それらが理想、理念だけではなく、具体性を持っていたので、我々としても、できることがあれば協力、サポートしていきたいと考えました。

 研修センターを手放すことも前向きに検討し始めました。本学では中国から数十人の短期留学生を受け入れています。施設はもともと、それらの留学生が宿泊するために使っていました。

 田中 施設の取得を打診させていただいた際は、小学校設置の認可申請を提出する前のことでした。学校を開校できるかどうかもわからない段階から、手放すことをご検討していただいたことに感謝しています。

 ――こうして、田中学園が研修センターを取得しました。生まれ変わった建物は7月にお披露目されました。

 荒川 私も拝見しましたが、素晴らしい建物に生まれ変わり、感銘しました。まさに田中理事長の思いが実を結んだ学び舎ですね。

 田中 研修センターを初めて見た際、隣には森林もあり、私の中では一目ぼれでした。校舎や森の中で学ぶ子どもたちの姿を何となくイメージできました。

 ――7月8日、包括連携協定を締結しました。地域の子どもを対象とした教育活動、人材交流などの連携事業を行っていきます。

 荒川 田中学園は学校法人立命館さんとの関係がありますから、われわれと関われる部分は多くないのかもしれません。ただ、大学でも教育面において、地域連携や大学と高校とを連動させる動きが重要視されるようになってきています。

 田中理事長は小学校からそういう“つながり”を大切にしていきたいという思いを強く持っておられました。教育の質を高めるという意味でも意義のあることだと感じ、今回、連携協定を結ばせていただきました。

 田中 私は高卒なので、大学に対して、どこか敷居の高いイメージがありました。一方で、大学のキャンパスライフに憧れもあったので、札幌大学の構内に初めて入ったときはワクワクしました。

 とくに札幌大学は正門から中央棟に向かうまでの長い直線の道が立派じゃないですか。大学って、小学校とは違い、何もかもスケールが大きい。

 これを子どもたちにも体感してもらいたい。また、大学で勉強する20歳前後って、一番エネルギッシュで活気がある。そういう人たちと触れ合うのも刺激を受けますよね。

 漠然とですが、学校に訪問した当初から札幌大学と何か連携ができたらと考えていました。

田中賢介氏 ©財界さっぽろ

さまざまな国の留学生と接点を持つ

 ――具体的にどういった取り組みを想定していますか?

 田中 まずは、田中学園の子どもたちと札幌大学の学生たちの交流を図りたいと考えています。アフタースクールのような形もいいのかなと思っていますし、学生たちに修学旅行の引率を手伝ってもらうというのも、実現できたら面白いかもしれませんね。

 荒川 いまはコロナ禍の影響もありますが、本学にはさまざまな国の留学生もいます。留学生にとっても、日本の子どもたちと触れ合うことは意味のあることかなと考えています。

 田中 国際教育を掲げる田中学園としても楽しみです。いろいろな国の方々と接点を持つことは、子どもたちにとって間違いなくプラスです。

◎後編は10月29日公開

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