【今月号特選記事】苦境からの決断、老舗・日本清酒が「寿みそ」工場を売却へ

日本清酒のみそ工場 ©財界さっぽろ

 札幌市西区発寒にある「寿みそ」の工場が9月で稼働を停止した。製造元の日本清酒は今後、施設を解体して底地を売却する方針だ。

 ただ、「寿みそ」のブランドは残る。みそ地元大手の岩田醸造が生産を引き継ぎ、日本清酒が販売する。いわゆるOEM方式だ。

 日本清酒のみそ事業の見直しは以前からささやかれていた。抜本的な経営改善を迫られていたためである。

 売り上げの減少に歯止めがかからず、日本清酒は近年、毎期のように純損失を計上していた。売却が容易で赤字を穴埋めできるような遊休不動産は、とっくの昔に手離していた。

 さらにコロナ禍が追い打ちをかける。自粛経済の影響をもろに受けた2020年9月期決算は売上高が10億円を割り込み、純損失額は大きく膨らんだ。

 日本清酒は2本柱で成り立つ。売上高の50%弱を占める日本酒と、30%超のみそが主力だ。余市町で醸造しているワインは伸びているが、その比率はふた桁に届かない。

 このまま2本柱を維持できるのか――苦境から脱却できない中、経営陣は選択を迫られていた。

 しかも、札幌市西区にある自社のみそ工場は、建物も設備も老朽化していた。かといって懐に大型投資を行う余力はない。

 日本清酒の幹部は1年ほど前から、ひそかに外部に相談を始めた。

おなじみの「寿みそ」 ©財界さっぽろ

 関係者によると、複数の選択肢が検討されたという。「寿みそ」のブランドそのものを買い取りたい、という提案もあったようだが、結論は工場廃止となった。 

 寿みそ工場の土地の面積は約1万2000平方メートル。都市計画法上の分類は工業地域に該当しており、「買い手候補は事業用地としての活用を考えている」といった噂が流れている。

 立地としてはJR発寒中央駅に非常に近く、大型スーパーが徒歩圏内にある。分譲マンション用地としても魅力的に映る。

 いずれにせよ、日本清酒は工場跡地の売買で得た資金を、懸案の解決のために活用するのだろう。

 本社にある日本酒醸造所の新築・リニューアルだ。

 道産酒事情に詳しい男性は指摘する。

「日本清酒の現在の出荷量、将来的な方向性から考えると、醸造所の規模が大きすぎると思います」

 昔のように「千歳鶴」を大量生産して儲ける時代ではなくなっている。

 川村哲夫社長も「量を追求するのではなく、札幌の地酒として誇れる、いいお酒を造っていく方向です」と断言。さらにこう続ける。

「まだ日本酒工場の設計図も固まっていません。あくまで希望ではありますが、来年春までに新しい醸造所の建設に着手できれば」(川村社長)

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