コンサドーレ出身・西大伍が語るヴィッセル神戸、イニエスタとの2年間&浦和レッズ移籍秘話

 仕事納めの昨年12月28日、サッカーJ1・ヴィッセル神戸所属の西大伍選手が浦和レッズに移籍することが発表された。

 西選手は1987年札幌市生まれ。地元のサッカー少年団を経てコンサドーレ札幌のジュニアユース(15歳以下)、18歳以下のユース育ちで、2006年にトップチームへ昇格。コンサで4シーズンを過ごしたあと、11年にアルビレックス新潟への期限付き移籍を経て、12年に鹿島アントラーズへ完全移籍を果たした。

 常勝軍団と呼ばれる強豪アントラーズでは右サイドバックを主戦場にレギュラーとして活躍。2016年にリーグ・天皇杯の2冠に輝いたほかナビスコカップ(現ルヴァンカップ)で2度の優勝を経験した。

 また鹿島での最後のシーズンとなった18年には、チームの悲願だったアジア・チャンピオンズリーグ初優勝に大きく貢献。クラブ世界一決定戦であるクラブワールドカップにも16年と18年の2度出場し、レアル・マドリード(スペイン1部)と対戦した。

 1月15日発売の月刊財界さっぽろ2021年2月号では、コンサの20年シーズンを振り返る特集「北海道コンサドーレ札幌 災禍の前進」を全16ページで掲載する。

 同特集ではコンサOB・砂川誠氏による好評連載「コンサの深層」の特別版として、西選手が対談に登場。西選手の新人時代から4年間ともにプレーした砂川氏に対し、今回の移籍や、自らが飛躍するきっかけとなったコンサ時代の思い出を語った。

 ここでは、今年1月4日にオンラインで実施した対談の中から、主に誌面に載せられなかった内容を特別掲載する。以下、内容は取材当時のもの。

   ◇    ◇

オンラインでおこなわれた砂川誠氏と西大伍選手との対談 ©財界さっぽろ

 砂川 神戸時代は世界的な選手がチームメートだった。プレーしてみてどう感じた?

 西 まず、MFイニエスタは……すごいですよ(笑)。

 プレーしていて一番すごいと思ったのは「ボールを見ていない」ところ。見ない分、周りを見ていて、見ないままパスを出している。ボールを奪われない範囲も人より狭く、相手が近くまで寄せてきても取られないので、パスコースを探す時間も多く取れる。

 それと実際にプレーしてみてわかるのは、そもそもの身体能力が高い。一瞬のスピードとか早さがある。

 砂川 ボールを見ていないというレベルの選手は、俺が知っているところでいえば、昔はストイコヴィッチ(元名古屋グランパス選手・監督)や名波(浩)さん(元ジュビロ磐田選手・監督)、それに今年からコンサへ復帰する(小野)伸二。大伍だって、もうそういう選手の1人に入っているんじゃない。

 西 そのメンバーに加えていただいてうれしいです(笑)

 イニエスタとプレーをしてみたい、というのは、神戸に移籍するきっかけの1つではありました。基本的に彼は左サイドでのプレーが好きで、僕自身は右サイド。イニエスタと絡もうとして、ボールを持ったら中に入っていくこともあった。

 砂川 左サイドで組み立てて、右に展開して大伍が、というのはよく見ていたよ。その結果として天皇杯に優勝して、ACLにも出られたんじゃないかな。

 この2年間で彼らとのプレーや、自分にできることはやり尽くしたといっていい?

 西 うーん……神戸に移籍した時は、もう少し神戸のサッカーを変えられると思っていました。

 チームが強くなるためには、練習が一番だと思っています。それは鹿島アントラーズという練習の厳しいチームにいたこともあるのですが、僕はそう思っていた。でも、2年間でそこがなかなか変えられなかった。それは周りの問題なのか、僕自身の問題なのかは難しいですけど。

 砂川 試合で結果が出ない時やいい内容ではなかった時に「自分の責任だ」というコメントをよくしていたよね。

 西 考えていたよりも「よくできなかった」のはあるのかなと思います。

 砂川 浦和レッズへの移籍については、何が背中を押したの?

 西 一番は、あのたくさんのサポーターに囲まれて試合をしたい、という気持ちですね。

 対戦相手としてあのスタジアム(埼玉スタジアム2002)でプレーしていて、そう思ったので。鹿島のスタジアムの雰囲気もすごかったですけど、また違ったところがありました。

 その上で、新監督(リカルド・ロドリゲス氏=前徳島ヴォルティス監督)のやりたいこと、求められていることと自分がやりたいことが近いということもあります。

 新監督からは、自分が普段プレーしているサイドバック以外のポジションもやってほしいと言ってくれるくらい、評価してもらえています。

 基本的にはサイドバックでしょうけど、試合中にポジションを変えながらプレーするということも当然あると思っています。

   ◇    ◇

 この対談の本編を含むコンサドーレ特集では、新型コロナウイルス感染症のさまざまな影響を受けた2020年シーズンを、本誌編集部ならではの視点から振り返る。

特集巻頭では昨年12月5日のホーム最終戦の模様を写真で紹介 ©財界さっぽろ

 就任7年でクラブの売上高を3.5倍に増やし、右肩上がりの経営を続けてきた野々村芳和社長には、このコロナ禍が初めて訪れた危機。このまま拡大路線を続けるのか、見直しをするのか。来季に賭ける覚悟を、野々村氏本人が語っている。

 ほかにもコンサ番記者・スポーツライターの青木一平氏によるシーズン分析では、3年間で最低のリーグ順位だったミハイロ・ペトロヴィッチ監督がどう巻き返すのかに着目。

 さらにはホーム最終戦の特選グラビア、スポンサーから見たコンササポーターの“経済効果”、データから読み解くチーム成績の“理由”など、読み応え満載だ。

-----
【特集】北海道コンサドーレ札幌 災禍の前進(全16ページ)
○インタビュー
 路線継続なら2年で10数億円が必要 野々村芳和社長の“覚悟”
○“クラブ愛”で売り上げ倍増!
 オフィシャルパートナー「リージョナルマーケティング」
 が証明、サポーターの経済効果
○コロナ禍の挑戦で得た新戦術の手応え、若手の成長
 文=青木一平(スポーツライター)
○砂川誠のコンサの深層 特別版
 ユース出身 西大伍が語る現役生活、コンサ帰還の可能性
○データが語るコンサ“中位安定”の理由

-----

 月刊財界さっぽろ2021年2月号は、1月15日から北海道内書店・コンビニエンスストアおよび当社オンラインショップ、オンライン書店等で発売。どうぞお楽しみに。