【特別掲載】セレッソ大阪移籍決定的のコンサ・進藤が“自分の価値を高めてくれた”選手とは?

 12月13日、スポーツ報知が北海道コンサドーレ札幌・進藤亮佑選手にJ1・セレッソ大阪からの正式オファーがあったことをスクープした。翌14日にはスポーツニッポンが“移籍決定的”と確定で報道。サポーターには動揺が広がった一方、“生え抜き”である進藤選手の飛躍を期待する声も多くあがった。

 進藤選手は1996年札幌市生まれ。幼稚園からサッカーを始め、クラブチームを経て高校年代からコンサドーレのアカデミーへ加入。2013年にU-17、14年にU-19日本代表、15年からトップチームへ昇格し、18年からレギュラーの座を掴み、昨年11月には日本代表へ初めて選出されていた。その一方、今シーズンはルーキー・田中駿汰選手とのポジション争いが激化して出場試合数が減った上、10月に右足首の靱帯を負傷し、今季のプレー予定はなくなっていた。

 月刊財界さっぽろ2020年1月号では、2019年シーズン終了直後の進藤選手と、同じ最終ラインで守備そして攻撃の起点を務めた福森晃斗選手との対談を掲載。昨シーズンに6ゴールとDFながら得点力の高さを見せつけた進藤選手に対し、正確無比なキックでそのうち4ゴールをアシストした福森選手との互いの関係性などについて語ってもらっていた。以下、その全文を公開する。

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福森晃斗選手(左)と進藤亮佑選手(2019年12月撮影) ©財界さっぽろ

FKは「絶対入る」と思っていた

 ――チーム史上初めて、YBCルヴァンカップの決勝戦に進出(延長まで戦って3対3、PK戦4対5で敗戦)しました。

 福森 自分のサッカー人生で、あんな大舞台に立ったことは今までなかったので、それだけでも価値はあったと思います。もちろんチームとしてもそう。来年またあの場所に立ちたい、という気持ちが今は強いです。

 進藤 コンサのアカデミー時代、一度決勝戦へ進んだことはありましたが、自分は控えメンバーで、後半終盤の5分ほどしかピッチにいられなかった。あれだけしびれる試合展開でフルにプレーしたのは、もちろん初めて。今はまたあの舞台に立ちたい、という欲が出てきましたし、それが今の自分のモチベーションの1つにもなっています。

 ――2対2で迎えた延長戦前半、対戦した川崎フロンターレの選手の反則で退場となり、それで得たフリーキック(FK)を決め、一時は勝ち越しました。

 福森 反則のVAR(ビデオ判定)が入って、蹴るまでに7、8分はあったと思うんです。でも別に、急いで蹴りたいという気持ちはなくて、いつも通り。平常心で、リラックスして蹴ることができました。

 ――当日はキックが〝当たって〟いた?

 福森 ウォーミングアップの時から、フィーリングは良かったですね。前半最初に直接FKを蹴った時は相手選手に当ててしまいましたけど、感覚的には悪くはなかったんです。だから、次があれば決められるだろうと思っていて。

 ――そこにあの場面が来た。

 福森 「絶対(FKが)入る」と思いましたよ。声援や相手のブーイングもとくに耳に入らなかった。自分の〝世界〟に1人だけ入れていました。

 ――ああいう場面で、ほかの選手は声をかけないものですか。

 進藤 僕は基本的にはかけないようにしています。飛び込んだ選手に合わせる際は打ち合わせますけど、直接狙えそうな時は僕はそっとしておいてます。僕自身のことでいえば、FKの跳ね返りが相手のカウンター攻撃につながる時があるので、それには備えています。それにプラスして、僕は(福森選手の)FKが〝一番いい角度で見られる〟ところにポジションを取ります。

 福森 毎回後ろにいるんだよ。

 進藤 一番いいところで見て、目に焼き付けています(笑)

 ――決まる予感はあった?

 進藤 あの場面に限らず、直接FKをもらった段階で半分ガッツポーズしてますから。だいたい5本蹴ったら1本は得点になるレベルの精度ですから。僕自身が一番いい場所でFKを「楽しませてもらって」います。

 ――福森選手は延長後半で途中交代となり、PK戦には出られませんでした。

 福森 あの時(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督からは「自信があるヤツは蹴っていいよ」と話があって。だから、自分が蹴りたいという気持ちよりも、あんなしびれる場面で勇気を持って蹴ったキッカーの6人が、すごいなと。あの場面でPKを蹴った経験を得られたのは、その6人だけ。そういう意味では、自分も蹴りたかった思いはありました。

 この日はキャプテンマークを(宮澤)裕樹さんの代わりに巻いていたこともあって、交代で下がった後、ピッチに出る選手には一人ひとり「とにかく楽しんでこい」と声をかけました。その時のみんなの顔は、自信を持っているように見えて。

 ――進藤選手は、PK戦では6人目、最後のキッカーとなってしまいました。

 進藤 PK戦の中にも流れがあって、流れが来たと思ったら一転して自分が外すと負けになる、一番プレッシャーのかかる場面になった。「プレッシャーを楽しもう」と自分に言い聞かせましたけど、それってつまり、プレッシャー自体がかなりあったということ。(外した)結果がすべてですけど、その経験を次につなげられるかは、これからの自分次第です。悔しさはありますけど、その経験をしたのは僕1人だけという、自負みたいなものもある。それをプラスに変えていくしかないです。

 ――表彰式が終わってロッカールームへ戻った後、進藤選手には何か声をかけましたか?

 福森 終わってロッカールームに戻った後、負けて悔しい気持ちはありつつ、進藤をみんなでイジりながら、気持ちを切り替えていったようなところがあった。すぐにみんな笑顔に戻りましたよ。進藤本人は、イジられたくなかったかもしれないですが。

 ――イジってもらって、進藤選手も救われたのでは。

 進藤 いや。

 福森 えっ(笑)

 進藤 救われるというかね、結果は別に変わらないので。

 福森 悔しいけど、やりきったという気持ちもあったよな。

 進藤 自分ではどうしようもない部分もあるんで、気持ちの面では割り切れていました。今後、また同じ場面が来たらどうしようか、ということは頭に浮かびますけど。PKは誰が蹴っても、どんなに上手い人でも外すことはある。そう思って、気にしすぎないようにしました。

 ――同じくPKを外した、石川直樹選手もイジった。

 福森 ナオさんは……イジってないな。

 進藤 ナオさんもイジられる時はイジられるんだけど、その時は2人だったんで、どっちがイジりやすいだろうという。

 ――忖度が働いた。

 福森 どちらかといえばね。

 進藤 そうなりますよ。

©財界さっぽろ

福森選手は自分の価値を高めてくれる

 ――J1リーグ戦では、昨シーズンに比べて勝ち点、順位ともに下がりました。

 福森 昇格組の大分トリニータに2敗、松本山雅には2引き分け。勝たなければならない相手に対するこの戦績が、今シーズンを象徴していると思います。そこを勝ち切れていれば、ACL圏内を争うことができていたはず。引いて守る相手に対して、今の自分たちのコンビネーションだけでは崩せなかった。

 進藤 来シーズン以降も、守備を固めてカウンターという相手は増えるだろうし、必然だと思っています。だからこそ、そのカウンターに対してさらにしっかり対応できる手堅さが大事なんだと思います。

 ――個人の成績については。

 福森 シーズン前に5得点10アシストを目標にしたんですが、現状は2得点7アシスト。もう少しアシストできたな、という実感はあります。

 進藤 僕は序盤こそ点も取れていたし調子も良かったんですが、9月ごろにケガをして以降は、その影響もあっていいプレーがあまりできていません。守る側の選手としては、さまざまな問題を抱えていたとしても、100%のうち70~80%くらいのパフォーマンスを安定して出すことを目指しています。

 ――ともに最終ラインを守るポジションの選手として、進藤選手をどう見ていますか。

 福森 進藤は、いいプレーをしている時もそうですが、もう少しできるのではないか、もう少し考えてやってほしい、と思うこともあって。

 その分、ゴールを決めるという意味で結果は残しているので、そこはすごいと思う。来年はもっといいシーズンを過ごして、チームへさらに良い影響を与えてくれるのではないか。そう思うと、自分の立場から見てもワクワクします。

 ――進藤選手は11月に初めて日本代表に選出されました。

 進藤 9月にケガをした後、徐々にコンディションを上げてきたタイミングで呼ばれました。夏場はもっと状態もよくて、いいプレーができていたので、その時は呼ばれると思ったこともありましたけど。タイミングに関しては意外でした。

 ――先輩としては、悔しい気持ちもあったのでは。

 福森 同じDFだし、自分も日本代表入りを目指しているから、もちろん悔しくないと言えばウソになります。

 進藤が今年リーグ戦で決めた6ゴールのうち、5ゴールは自分の蹴ったボールから。そこは感謝の気持ちを持って代表に行ってくれとは思います(笑)

 ――進藤選手は福森選手についてどう評価を。

 進藤 評価……どんどん僕の価値を高めてくれる選手です。

 福森 (苦笑)

 進藤 攻撃の時はもちろんアシストでいいボールを供給してくれるわけですが、攻撃面での良さを持つDFなので、その分、僕や(キム)ミンテが守備の負担を軽減してあげることもあります。福森選手が守備に戻りきれない時に、僕やミンテがカバーすると、僕らの評価が上がる、ということもありますし。そういう意味では、僕にとってすごくいい存在だなって思います。

 僕に一番高い精度でボールを出してくれるのも福森選手ですから、日本代表に限らず、僕がプレーするすべての場所に、一緒に来てくれたらいいんですが。

 福森 (苦笑)

 進藤 ただ、今のコンサであれば、福森選手だけでなくほかの選手も十分チャンスがあるはず。逆に僕が次は選ばれないかもしれませんから、危機感を持って臨みたいし、選手全員が代表を目指すチームになったと思います。

 ――最後に。来シーズンもコンサに残留してプレーしてくれますか?

 福森進藤 来年のことは、まだわかりません!(笑)

 ――残留してくれることを祈っています。ありがとうございました。(構成・清水)

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同年代ですでに海外で活躍する選手も多い中、飛躍への一歩を踏み出した道産子・進藤選手。今後の活躍に、北海道民として期待したい。