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News&Files 2020年5月号
取材日:2020年3月

写真大 開発した熱エネルギー発生装置本体。放射線測定器の数値は自然界と同レベルだ

写真 武藤正雄社長 写真 他製品との性能比較シミュレーション。従来式より環境に優しくコストを抑えることも可能だ 写真 原子炉容器に置き換えて使用

熱エネルギー発生装置の開発に成功ー「核融合反応で エネルギー革命を!」

「北海光電子」(本社・札幌市、武藤正雄社長)が、水素を精製する際に発生する「重水素」の核融合により、熱エネルギーを発生させる画期的な独自装置の開発に成功した。将来、この技術を応用した水素融合炉発電を実用化。ベースロード電源としての確立を目指している。

  大学研究者との出会いから開発に着手 

 今年3月、福島県浪江町に「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の世界最大級の水素エネルギー製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド」が完成するなど、水素は燃焼時に温室効果ガスを排出しない究極のエネルギー源として期待が寄せられている。

 道内にもこの次世代エネルギーに着目する企業がある。光電子顕微鏡の開発と販売を主事業として2008年に設立された「北海光電子」だ。現在は北海道科学大学内に研究施設を構えている。

 武藤正雄社長は、大学や研究施設に販路を拡大していく中で、当時北海道大学工学部だった水野忠彦氏(現在は水素技術応用開発社長)と出会う。これを機に水野氏が提唱する「新水素エネルギー理論」に大きな可能性を感じた武藤社長は、2018年から本格的な研究に乗り出した。

「新水素エネルギーは、水素を精製する際に生まれる水素同位体の重水素や三重水素の核融合反応時に発生する熱を利用したエネルギーです。太陽が膨大なエネルギーを放出する原理と同じで、小量の水素から膨大なエネルギーを得られるのが特徴です」と武藤社長は語る。この研究は〝地上に太陽を再現する研究〟とも言われ、発電用の水素融合炉は、世界中の企業や研究機関が実現を模索している。例えば1gの重水素の核融合から発生するエネルギーはタンクローリー1台分の石油(約8t)に相当すると言われる。 

 

 新水素エネルギーによる新たな発電方法

 昨年10月に開発に成功した核融合による熱エネルギー発生装置の理論は、水野氏が1990年代から研究を進め、2017年に凝縮物性核化学国際会議で論文を発表。世界的にも現象の確証と再現性が認められた。しかし核融合反応には太陽のような超高温かつ高圧力の状態が必要とされ、今世紀中の実用化は困難とされていた。

「水野氏のもとで理論を具現化し、水素核融合にナノ金属微粒子を触媒として利用することで数百度の低温核融合反応に成功しました」と武藤社長は開発の経緯を語る。

 新水素エネルギーの原料は水。特に重水素は海水に多く含まれ、資源が乏しい日本にとって無尽蔵のエネルギー源となる。

 メリットは他にもある。新水素エネルギーは水素と酸素を反応させる水素自動車の燃料電池のように多量の水素を必要とはしないこと。発電にかかるコストも極めて少なくて済む。

 武藤社長は「一般の人が核と聞いてまず連想するのは原子力発電だと思いますが、核融合と核分裂は全くの別物です。核分裂を利用した原子力発電では、濃縮ウランが核分裂する際に放射性物質を出し、多量の核廃棄物が生み出されます。一方、核融合はCO2もウラン由来の放射性物質も発生しません。とてもクリーンな発電方法です」と解説する。この技術が普及すれば、環境に優しい安全で安定的なエネルギーの供給が可能になる。

「例えば小型の水素融合炉を家庭用の暖房に使用すれば、燃料である水素の補充は僅かなもの。戸建住宅やマンション用の発電機への応用も可能で、従来のディーゼル式発電機と比べてランニングコストは格段に低い」と武藤社長。実用化すれば革命的な装置であることは間違いない。

 

  ベースロード電源への導入も視野に

 同社では当面、家庭用や事業所用暖房機、地方や離島用発電機などへの導入を目指している。将来的には火力や原子力に代わる「新たなベースロード電源(一定量の電力を安定的に低コストで供給できる電源)に進化させたい」というのが武藤社長と水野氏の構想。

「現行の発電所において、蒸気を発生させる熱エネルギーを新水素エネルギーに置き換えることを想定しております」(武藤社長)

 現在、5年以内の実用化に向けてエネルギー消費効率の向上を図っている。実用化のアイデアは数多くあるというが、開発には資金的な裏付けも必要となる。このため同社では、新水素エネルギーの存在を投資家などに幅広く認知してもらうため、各地でPR活動をおこなっている。「30年代までに脱原発。地球温暖化対策として火力発電も含め、北海道内の電力を新水素エネルギーにしていきたい。そのためにも北海道から世界へ情報を発信し、研究開発から実用化、製品化へのネットワークを広げていかなければなりません。地球環境やエネルギー問題解決に貢献し、世の中が良くなれば本望です」と武藤社長。

 問い合わせは北海光電子 info@hpeem.comまで。