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小髙 咲 ◎日本銀行札幌支店長
取材日:2018年6月

写真大 (こたか・しょう)1962年、札幌市生まれ。札幌北高校、東京大学法学部卒。86年日本銀行に入行。システム情報局業務システム開発課長、業務局参事役などを経て15年10月に文書局参事役。昨年6月から現職

社会のニーズにもマッチした本道の観光、農業、水産業の発展

緩やかな拡大が続く日本経済。
道内でもインバウンド需要による観光産業の急伸が続くが、その一方で個人消費はいまだ盛り上がりに欠けている。
エリアによって地域活性化の度合いもまばらだ。
しかし、観光に加えて農業、水産業といった本道の得意分野の重要性は変わらない。日銀札幌支店長の小髙咲氏に展望を聞いた。

【道内観光産業の伸び盛りを実感】
 ――札幌支店長に昨年6月に就任され、約1年が経過しました。各地を視察されたと思います。道内の印象を教えてください。
 小髙 まず印象的なのはインバウンドの多さですね。道央圏の札幌や小樽、ニセコはもちろんのこと、どこに行っても外国人観光客の姿が目立ちます。インバウンドに牽引され、道内においても観光産業が伸び盛りということを実感しました。
 ――道東エリアについてはどのような印象を持っていますか。
 小髙 十勝、釧路、根室は、私どもの釧路支店の担当エリアとなっており、札幌支店は道東ではオホーツク地域が担当になっています。
 観光という切り口で申し上げると、外国人を引きつけている地域と、そうでない地域の両方があります。両者を比較すると、外国人観光客が少ない地域は総じて少子高齢化、過疎化の影響を強く受けているという印象を持っています。
 ――先日、根室に取材に行ってきたのですが、道東の水産業は厳しい経営環境が続いており、企業倒産も発生しています。
 小髙 不漁という点につきましては、道南でもここ数年、名物であるイカの漁獲量の減少に見舞われており、地元の漁師、卸売、水産加工、小売業のみなさんが影響を受けています。
 7月2日に発表された短観では、道内では道南の業況判断DI(企業の景況感を表す数値)だけがマイナスでした。全国、北海道全体ではプラスになっています。
 道東においても、サケ・マス、サンマの不漁などで厳しい状況が聞こえてきます。
 ただ、本道の近海で捕れなくなった魚種がある一方、捕れるようになってきたブリなどの魚種もあり、そうした水揚げの増えている魚をうまく活用する取り組みも業界内でおこなわれているそうです。また、加工業者の間では、魚から農産品の加工にシフトする動きも一部に出ていると聞いています。
 そういう意味では、道内の水産業は新たなステップに進むための過渡期を迎えているのではないでしょうか。
 もっとも、水揚げが増えている魚種も将来に渡って増加傾向が続くかどうかは読みにくく、水産関連企業は悩まれていると思います。
 漁業関係者の方からは、全体としては、育てる漁業への切り替えが必要とされているというお話も聞きます。
 ――道南での業況判断DIがマイナスということでしたが、函館まで新幹線が伸び、観光分野は伸びているのではないでしょうか。
 小髙 そうですね。観光分野については、外国人観光客がたくさん函館エリアを訪れており、ホテルの建設もされています。

【個人消費の盛り上がりはまだ弱い】
 ――本道経済の牽引役である札幌圏についてはどうでしょうか。
 小髙 ホテル建設を始めとした積極的な投資活動が目立ちます。
 ――札幌の都心については、ビルの更新期が来ているという事情もありますね。
 小髙 実際、中心部では大型の再開発計画がいくつも進んでいます。そうした背景もあって、建設業の業況も良いです。
 ――景気においては個人消費も重要です。道内の個人消費の傾向についてうかがいたい。
 小髙 全国的な傾向と似ています。道内でも、外国人観光客や国内富裕層による高額商品の消費は手堅い伸びを見せていますが、一方でボリュームゾーンの一般的な消費、洋服とか食料品については節約志向を感じさせる内容になっています。
 ――節約志向という話ですが、趣味やコレクションに大金を投じる方もいます。
 小髙 おっしゃる通りで必需品は安く済ませるが、こだわりのあるモノには金を惜しまない方もいらっしゃいます。
モノだけでなく、コト消費についても同じことは言えるでしょう。
 ――個人消費の伸び悩みが続いていると言われています。
 小髙 ただし、ダメというわけではありません。
 表現としては、景気が緩やかな回復を続けている中、個人消費の盛り上がり、浮き上がりが弱いというレベルです。
 その背景については、さまざまな見方があります。
 各業種で人手不足が起きており、賃上げの動きも広がりを見せていますが、労働分配率(付加価値に占める人件費の割合)がさほど上昇していないという見解もあります。
 あるいは、すでに日本の消費者の大部分は満ち足りていて新たに欲しいモノがそんなにないのではないか、という見方もあります。ただ、自動車についてはメーカー各社が新モデルを投入すると、しっかり需要がついています。
 個人消費の実態をつかむのはなかなか難しい面があります。
 近年はeコマース、いわゆるネット通販が急速に伸びており、実在の店舗から消費が流れている側面も無視はできないでしょう。既存の百貨店やスーパー、コンビニの売り上げデータと消費実態の間には、ズレが少し生じているかもしれません。
 いずれにせよ、道内でも総じて個人消費に熱さが感じられないのは確かです。

【企業に寄り添う地域金融の重要性】
 ――道内の金融セクターの現状については。
 小髙 道内の金融機関は自己資本比率が高く、経営基盤は強固です。短観の「金融機関の貸出態度判断」を見ても、企業の資金需要にしっかり応えていることがうかがえます。
 ――従来型の融資ではなく、地域経済の底上げを狙った投資的な動きも盛んになっています。
 小髙 道内の各金融機関は地域の企業に寄り添い、積極的な支援をされています。
 地域金融機関のみなさまは異口同音にこうおっしゃられます。地域の発展に尽くすことこそが存在価値であり、それなしに生き残りはあり得ないと。
 お話を聞いて私自身、あらためて地域金融機関の重要性を感じているところです。
 ――金融機関の間では、以前から廃業の増加傾向を懸念する声があります。
 小髙 事業承継は重要な課題です。課題を抱える企業に対し、適切な情報提供を含めてさまざまな支援を、金融機関や行政機関、商工会議所などの団体がされています。
 ――今後、道内7空港の民営化が予定されています。道内全体の活性化につなげる鍵はなんでしょうか。
 小髙 空港民営化については、多くの専門家が提言をされています。そうした提言を聞きますと、やはり2次交通をどう整備するかが、各地の活性化につなげるかがポイントだと思います。
 また、北海道は本当に広いので、手軽に航空機を利用できる形になってほしい。そうすると、観光面で生じている地域間格差の解消にもつながるのではないでしょうか。

【気持ちを一つにして観光振興に臨む  】
 ――札幌市が冬季オリンピック・パラリンピックの誘致に名乗りを上げています。
 小髙 1972年の札幌冬季オリンピックの時、札幌で暮らしていました。小学3年生でしたが、子どもながらに、街が劇的に変わっていく様を肌で感じました。
 実は、住んでいた家の目の前の通りが地下鉄・南北線のルートで、工事現場の見学もしました。地下鉄が開通した時も、すごく緊張しながら自動改札機に切符を入れた記憶があります。
 もし今回も誘致が成功すれば、札幌の街が活性化する契機になるでしょう。
 ――余談ですが、テーマ曲だった「虹と雪のバラード」はいい歌ですよね。
 小髙 そうですね。「世界の友よ札幌で逢いましょう」という曲は、ご存じないですか。こちらも72年冬季オリンピックに伴って作られた曲で、小学校で歌いました。今でも歌詞を覚えていますよ。
 ――最後に本道の基幹産業である観光、農業、水産業のそれぞれについて中長期的な見通しをうかがいたい。
 小髙 変化が激しい昨今、長期的な予測はなかなか難しいですね。
 明確に言えるのは、人口減少が進み、内需が伸び悩む流れの中、観光産業は輸出産業と並んで重要であるということ。外から人がやってきて地元にお金を落とすわけですから、ある意味、輸出と同じ外需の獲得効果があります。
 課題は、観光は地域を牽引する主要産業であるという意識を一人ひとりが持つこと。 観光業はホテル、飲食、交通機関、地域の農業など関係する職種が幅広い。関連する人たちの気持ちが、観光振興という目的で一つになることが大切だと思います。
 ――道内でも日本版DMOの動きが活発になってきています。
 小髙 地域間の連携も含め、道内観光はいま発展途上の段階にあると思います。
 農業については世界全体では人口増加が続いており、引き続き、北海道が持つ食料供給機能が重要であることに変わりはありません。道内農業でも、IT技術などを活用した生産性向上の動きが活発です。
 水産業は難しい状況にありますが、先ほど申し上げた育てる漁業への切り替えと同時に、農業もそうですが、付加価値を高めた商品を道外へ出す取り組みが今後も進んでいくと思います。
 観光、農業、水産業が本道の基幹産業であり続け、さらに発展していくことは社会全体のニーズにマッチしていますし、道内経済の持続的発展にとっても、非常に重要であることは間違いありません。

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