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Interview

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「世界、アジアを見据えた戦略ストーリーをつくれ」
北海道新幹線を前田武志国交大臣に聞く!
掲載号:2011年12月

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前田武志 国土交通大臣

 北海道新幹線の札幌延伸について、道内には早くも「北陸には勝てない」「建設予算の手当てが付かない」などの悲観論が生まれつつある。そこで、新幹線問題を所管する国土交通省の前田武志大臣を直撃した。(11月7日現在)

道も北陸も九州もくつわを並べて

――まず北海道新幹線の展望について、大臣の考えを聞かせてください。
前田 北海道新幹線は、青森市から札幌市までを結ぶ整備計画路線です。平成17年(2005年)4月27日には、北海道新幹線の区間としては初めて、新青森―新函館(仮称)間の工事実施計画が認可され、着工を迎えました。現在、予定どおり平成27年(2015年)度末の完成・開業を目指して頑張っているところなので、ぜひ実現できるようわれわれもしっかり後押しをしていきます。
また、未着工の新函館―札幌間は、平成21年(2009年)12月に国土交通省政務三役で構成される整備新幹線問題検討会議で決定された「整備新幹線の整備に関する基本方針」で、(1)安定的な財源見通しの確保(2)収支採算性(3)投資効果(4)営業主体としてのJRの同意(5)並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意――という基本的な5条件(着工5条件)を確認した上で着工するものとされています。
安定的な財源見通しに関しては、本年の通常国会で「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、8月1日に施行されました。本法により、北陸新幹線(高崎―長野間)の建設債務の償還や貨物調整金の交付に鉄道・運輸機構の特例業務勘定の資金を活用することで、従来これらに充当していた整備新幹線の貸付料を、新たに整備新幹線の建設費に充てることが可能になりました。
北海道新幹線(新函館―札幌間)を含む未着工3区間については、現在、着工5条件等の検討を精力的に進めています。できる限り早期に結論を得るべく、引き続き未着工区間の着工にかかわる各種課題の解決を含め、全力で取り組みます。
――北海道や沿線自治体、経済界としては、札幌延伸を強く望んでいます。
前田 地元の熱は非常に高まっているのでしょうが、「本当に札幌まで来るのかな」と心配なのでしょう。しかし、北海道は日本のフロンティアの地であり続けています。そういうこともいろいろ考えると、何とか早くやりたいと思います。
――ライバルもいますね。
前田 まあ、いくつかありますが、ライバルというより、お互いくつわを並べて切磋琢磨する関係ですよ。ほかの2つの未着工区間は日本海側だといいますが、「北海道新幹線だって日本海側といえるんじゃないか」と私は話しています。
ここにきて日本海側は、経済的にももう1つの国土軸として注目されていますが、北海道だってその受け皿になりますし、発展していくアジアを日本が受け止める上で、北海道のポテンシャルに非常に大きな期待がかかっています。札幌延伸が心配されるほど遅れないように頑張らなければならないと思います。
i2――北陸などの誘致運動に比べて、北海道は何が足りないのでしょうか。
前田 新幹線の沿線となる札幌、小樽、函館などは、それぞれ個性のあるまち、大都市があるわけです。そういったものをつないで、北海道の中の発展、さらには新しく動線ができてくることによって、アジアを含めた国際的な展開という、戦略的なストーリーを地元の財界、行政のプランを練る方々、NPOも含めてつくりあげていくことが大事なのではないでしょうか。
需要やB/C(費用便益分析)の議論は、もちろん必要なことですが、それだけでは北海道の方にも、日本の国民全体にも、あるいはアジア等に対しても、何のことかピンとこない。年々物語が素晴らしい展開をしていくように、地元の方がみんなで戦略を練っていくべきです。そういうことをワイワイ議論していくだけでずいぶん違ってくるのではないでしょうか。ただ「来てくれ、来てくれ」だけでは、受け身すぎます。やはり主体的に議論しないとね。

北海道のポテンシャルを生かせ

――北海道開発予算の見通しはどうなっていますか。
前田 北海道は、食料供給力の強化、国際競争力の高い魅力ある観光地づくり、再生可能エネルギーの普及拡大などといった、わが国の課題に対して、非常に高いポテンシャルを有しています。例えば、北海道は全国の農地の約4分の1を占めており、他都府県と比べても圧倒的な食料自給率を維持しています。北海道は東アジアからの訪問希望ナンバーワンを誇っており、とても魅力的な観光地となっていますね。豊富な風力、雪氷も有しています。
3年前の7月には、第7期北海道総合開発計画が閣議決定されました。国土交通省は、同計画に掲げられた戦略的目標を達成するため、農水産品の物流改善のための社会資本整備、受け入れ環境整備による観光振興、さらには低環境負担型エネルギーの利活用促進や災害に強い地域・国土づくりなど、北海道の強みを生かした施策を推進していく必要があると考えています。
東日本大震災などからの本格的な復興と、震災を踏まえ国民生活の安全・安心に向けた取り組みを緊急に進めるための予算として、今年度第3次補正予算が10月28日、国会に提出されました。北海道開発事業費については、道内被災地の復興を推進し、災害に強い社会基盤整備を緊急に進めるために必要な経費として、317億円を盛り込んだところです。
また、平成24年度の概算要求については、北海道の強みを生かして日本再生に貢献するべく、「食」「観光」「環境・エネルギー」分野を重点課題として位置付けるとともに、災害に強い地域・国土づくりなど、第7期北海道総合開発計画の着実な推進に必要な予算として、4631億円を要求しました。
――東北の復興が急がれているわけですが、その反動で北海道に回る公共事業が減らされるのではという危惧が生じていますが…
前田 東北以外の日本各地でそういう話が出かねないというわけでしょうが、そうじゃないでしょう。あの大変な悲劇を乗り越えて、国全体としてどう復興していこうかということです。
北海道関連の公共予算も前年度よりも多くのものをと要求しています。しかし、私がそれ以上に思うのは「公共事業費だけが頼りなんですか」ということです。持続可能なまちづくり、低炭素循環型ということを提唱していますが、札幌や函館だって、まちの再生は必要なはずです。端的に言いますと、既存不適格の建物に耐震断熱改修をやるだけで、大きな需要が出てきます。そういうものは大手のゼネコンが出て行ってやる仕事ではないのですから、地元の建設業者の受注が増えます。しかも、安心なまちづくりになる上に、エネルギー効率が良くなり安全度が増し、付加価値がつきます。マンションも同様な改修をやれば、流通価値が高まります。そういうものにインセンティブをつけようと思っています。
また、官と民がパートナーを組んで事業をおこなうという、新しい官民協力の形態であるPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)を取り入れていくべきです。地方公共団体は経営体ですから、民と一緒になってPPP方式などでコラボをやっていく能力を持っているはずです。これも1つの物語になっていくはずです。北海道で新しい発展のシナリオを提示していただきたいと思います。
――北海道開発局は今後も存続しますか。
前田 北海道総合開発計画の推進に当たっては北海道開発局が、現地において道路・河川・港湾といった国土交通省所管の直轄公共事業と農業農村整備・漁港といった農林水産省所管の直轄公共事業を一元的に実施しています。北海道総合開発計画に関する調査や都市・住宅行政、建設業等の指導・監督事務などもおこなっています。北海道開発局は、北海道総合開発を効率的に推進するに当たって、極めて重要な役割を担っています。ですから、引き続き関係府省や北海道庁などとも連携しながら、適切に各種事業を推進していく必要があると考えています。

休暇を前向きにとらえ、楽しむ運動

――観光立国推進についてうかがいます。
前田 観光は裾野が広く、地域経済の活性化・雇用機会の増大等による国民経済の発展への寄与、国民生活の安定向上への貢献、国際相互理解の増進といったさまざまな意義を有しています。昨年6月に閣議決定した「新成長戦略」では、7つの戦略分野の1つとして観光立国の実現を掲げ、訪日外国人3000万人プログラム等を推進しています。
訪日外国人については、2020年初めまでに2500万人、将来的には3000万人までに伸ばすことを目指しており、選択と集中による効果的な海外プロモーション、経済効果の大きい国際会議の開催・誘致、メディアを活用した外国人向けの情報提供や受け入れ環境の整備を実施中です。国際競争力の高い魅力ある観光地づくりを推進するため、2泊3日以上の滞在型観光ができる観光圏の整備や、滞在型観光の取り組みを推進し、市場との窓口機能等を担う観光地域づくりプラットフォームの形成促進等を進めています。
国内観光振興のために、旅行しやすい環境の整備も重要ですよ。その一環として、本年7月から「休暇を前向きにとらえ、楽しむ」運動(ポジティブ・オフ運動)を展開しています。賛同企業の拡大と国民各階層への浸透を図り、休暇を楽しむライフスタイルやワーク・ライフ・バランスの実現を目指しています。

災害に強い国土を目指して再構築

――震災後の復興と津波防災まちづくりについて、どのように考えていますか。
前田 東日本大震災からの復旧・復興は、野田内閣が取り組むべき最大かつ最優先の課題です。
「災害には上限がない」「何としても国民の命を守る」という考えのもと、被災地の皆さまが一日も早く安全・安心な暮らしができるよう取り組んでいく必要があります。
その際、エネルギー問題や少子高齢化といったわが国の中長期的な問題を解決し、持続可能な社会の構築を図ることができるよう、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの導入等の先進的な取り組みを、被災地でモデル的に推進していくことが重要であると考えています。
このため、政府の復興基本方針や東日本大震災の教訓、被災地の実情等を踏まえ、ハードとソフトの施策を組み合わせた多重防御を基本的考え方として、津波災害に強い地域づくりを総合的に推進していくため、「津波防災地域づくりに関する法律案」を国会に提出しました。
さらに、第3次補正予算及び次年度概算要求において、防災集団移転事業の制度改正、太平洋沿岸地域を南北に結ぶ復興道路と太平洋沿岸地域と内陸部を結ぶ復興支援道路の緊急整備等、被災地の復旧・復興に必要な事業を盛り込みました。
一方、被災地から全国に目を移せば、わが国は、首都直下型地震、東海・東南海・南海地震等の大規模地震が発生すると想定されています。北海道も根室沖地震等の発生の可能性が指摘されています。国民の安全・安心を確保するためには、国土・地域全体で支え合える体制を構築するなど、災害に強い国土への再構築を図ることが重要ですよ。
また、今回の大震災では、寸断した国道45号線の迂回路として内陸側の三陸縦貫自動車道が緊急輸送等に大きな役割を発揮したほか、不通となった東北本線や太平洋側の被災港湾に代わり、燃料油等の輸送に日本海側ルートの鉄道や港湾及び内航海運等を活用したところです。これらの教訓を踏まえ、今後は万一被害が生じても、緊急物資輸送や産業活動等の重要な機能が早期回復・継続できるよう、広域的なバックアップやリダンダンシーの確保を図っていきます。

=ききて/酒井雅広=