誰でも使える自律型AI 82歳の経営者が使いこなすAXel Ignitonとは
本誌10月号で紹介した「RSKGOAT(ラスクゴウト)」の自律型AI導入パッケージ「AXel Igniton(アクセルイグニション)」の引き合いが増えている。経営者の実務をAIで支援する同サービスは、業種やITリテラシーを問わず利用できる。今回は、具体的な導入事例と成果について、水澤堅一郎社長に聞いた。
経営者の生産性を上げる自律型AI
――事業内容を改めて教えてください。
水澤 当社「RSKGOAT」は、2023年に設立したAIデザイン・開発企業です。親会社の「ラスク」が長年培ってきたSaaSやシステム開発の請負などのIT事業の基盤とネットワークを生かしながら、AIを活用したシステムやサービス開発に取り組んでいます。
――急成長していますね。
水澤 設立から間もないですが、昨年度は売上高32億円を計上しました。また、8月から提供を開始した「AXel Ignition(アクセルイグニション)」は、初月から1147万円の売上を上げ、9月には1586万円と伸びています。
――「AXel Ignition」は、どのようなサービスでしょうか。
水澤 経営者に特化したAI導入パッケージです。経営判断や資金繰り、交渉、情報収集など、あらゆる重要なタスクが経営者に集中しています。そこをAIで支援することで、まず経営者自身の生産性を変えようと考えました。
経営企画や秘書、財務・経理、営業、広報、採用など24の領域に対応したAIエージェントを構築します。
――各領域の優秀な専任者が、PC上に控えているというイメージでしょうか。
水澤 その通りです。さらに、各エージェントが独立して動くだけでなく、必要に応じて領域を横断して連携する点も特徴です。例えば、AIが営業提案の依頼を受けた場合、情報収集や市場分析、資料作成など、複数のエージェントが連携して1つの業務を進めます。
一般的な生成AIのように一問一答で回答するのではなく、経営者が最終的な目的(ゴール)を伝えると、エージェント自身が必要な手順を考え、それぞれの役割を持つエージェントと連携しながら、必要な作業を進めていくといったイメージでしょうか。
――サービス提供以降、引き合いが増えている現状をどう見ていますか。
水澤 利用いただいた方からの口コミや紹介が多いですね。ありがたいことに、実際に使って効果を感じた経営者が、知人や取引先に紹介してくださり、そこから相談につながるケースが増えています。
当サービスは実際に触れてみないと分かりにくい部分があります。だからこそ、利用者自身が〝これは使える〟と感じ、その実体験を通じて広がっていくことに意味があると考えています。
82歳が使いこなし売上高12倍に
――導入事例を教えてください。
水澤 一例を挙げると、愛知県の不動産会社で82歳の会長が経営に携わっている企業です。会長はITリテラシーが低く、部下への指示も口頭が中心でした。そのため、指示した内容や意図がうまく伝わらず、業務が行き詰まったり、社内のコミュニケーションに課題が生じていました。
――業務が属人化していたのでしょうか。
水澤 はい。この会社では、物件情報の収集や売買契約など、日々さまざまな情報を扱います。会長は長年培ってきた経験や人脈を生かして経営していましたが、PCを使えないことで、その情報を十分に活用できない場面が多発していました。
そうした状況を見かねた会長の娘さんが、私のXを見て連絡をくださったのがきっかけです。話を聞く中で、AIを使えば会長自身がパソコンを操作しなくても、業務上の課題を解決できるのではと考えました。そこで、既存の不動産売買システムとアクセルイグニションを連携させて、会長が音声入力で「こんな条件の物件はないか」と伝えると、AIが必要な情報を探し、条件に合う物件を提示する仕組みを構築しました。会長自身がシステムを操作しなくても、必要な情報にアクセスできる環境です。
――PCが使えない人でも利用できた。
水澤 そこが、このサービスの大きな特徴だと思います。導入時には、WEBから使い方を説明し、約3時間で環境を構築しました。
この企業は導入後、売上高が前年同月比で12倍になりました。これまで人間が時間をかけていた情報をすぐに確認できるようになったことで、他の業務に使える時間が増えるなど、副次的な効果も見られました。
――ほかにはどのような事例がありますか。
水澤 札幌市内にある司法書士事務所では、対面での打ち合わせをモットーにしている先生がいました。一方で、1人で事務所を経営しているため、新規開拓まで手が回らないという課題がありました。
そこで、営業時の会話を録音し、その内容をもとにAIがプレゼン資料を即座に作成する仕組みを導入しました。さらに、請求書の作成や経理業務も自動化しています。結果として、本来の業務に割く時間を大幅に増やすことに成功し、そこから弁護士や税理士など、ほかの士業にも紹介が広がっています。
また、ある建設会社では、100ページ規模の入札資料の作成に従来2週間ほどかかっていたものを効率化したほか、電気工事会社では、深夜まで行っていた事務作業をAIに任せることで、事務負担を軽減させました。当初は事務スタッフを雇うことも検討していたそうですが、見直すことができました。
――さまざまな業種で活用できますね。
水澤 はい。むしろ、業種を選ぶ必要がありません。
一次産業の導入実績もあり、道内のある農家ではこれまで、作物の温度管理を毎日手書きで記録していました。これをボイスレコーダーに記録し、データとして蓄積するようにしました。これまで感覚的に捉えていたものを数値で把握できるようになり、過去データと比較が可能になったほか、蓄積したデータをAIで分析することで、生育管理の改善もできました。結果として、売上高が前月比で200%となった事例もあります。
また、道北の水産会社では、天候や気温などのデータをAIで分析し、漁獲予測にも活用しています。
セキュリティーを担保。伴走支援も充実
――共通しているのは、現場の〝困りごと〟を解決している点でしょうか。
水澤 そうですね。AIの導入自体を目的にすると、なかなか成果にはつながりません。重要なのは、まず現在の業務を見直し「どこに時間がかかっているか」「人間がやらなくてもいい仕事は何か」を明確にすることです。
その上でAIに任せる仕事を決め、人は意思決定やコミュニケーションなど、人間にしかできない仕事に集中する。そうした役割分担が重要だと考えています。
――導入する際、セキュリティー面を心配する企業もありそうです。
水澤 当サービスは導入前に、読み込ませたくない機密情報や社内規定などをヒアリングし、AIに何を任せるかを最初に決めます。
また、AIが勝手に外部へ情報を発信することがないよう、メール送信やプレスリリースなどの対外的な操作は、利用者が最終確認してから実行する設計です。
――導入費用は。
水澤 料金は50万円(税別・1人利用)の買い切り型です。複数人での導入については、人数に応じた割引プランも用意しています。
また、月額費用は、システムの利用に必要な「Claude(クロード)」の利用料のみです。導入後にAIへ任せる作業内容によって異なりますが、0円から3万円程度が目安です(為替レートによる変動あり)。
――導入後の支援は。
水澤 1カ月間の定着フォローを行います。専任のコンサルタントが週次で利用状況を確認し、実際の業務に合わせてAIの思考設計を調整するほか、どの程度業務が効率化されたかをレポートにまとめて可視化します。AIに詳しくない経営者が使いこなすまで、責任を持って伴走します。
――今後、どのような企業への導入を目指しますか。
水澤「AIはよく分からない」「自分には関係ない」と考えている経営者にこそ、体験してほしいですね。
当社では無料の体験会を行っています。実際に触れてもらい、自社の業務にどのように活用できるかを具体的にイメージした上で、導入可否を十分に判断していただきたい。仮に導入後に効果を体感できなければ費用はいただきません。生産性の向上を図りたい経営者は、ご相談ください。
(みずさわ・けんいちろう)余市郡仁木町出身。2020年ラスク、23年にRSKGOATを創業。ラスクは現在、資本金1億円、社員100人超、国内外13カ所に拠点を構える。水澤社長が100%株主を務め、前期のグループ売上高は37億円に上る。