司法書士法人いずみだ
道内3拠点体制で地域の法務インフラを守る
目指すのは町医者のような司法書士
士別市を拠点に札幌市と名寄市にも事務所を展開する「司法書士法人いずみだ」。「法制度の積極的な活用により、縁あるすべての皆さまの幸せづくりに貢献すること」を理念とし、相談者一人ひとりに寄り添った法務サービスを提供している。
泉田陽介代表は「司法書士業務に限らず、困りごとがあればまず相談してもらえる町医者のような存在になりたい」と話す。
主な業務は相続、遺言作成、不動産登記、会社設立や役員変更などの商業登記から相続放棄など裁判所提出書類の作成まで幅広い。遺言や相続、経営に関するセミナー・講演にも積極的に取り組んでいる。
泉田代表は1983年生まれ。士別市で育ち、旭川大学高校(現・旭川志峯高等学校)時代は甲子園を目指して野球にも打ち込んだ。札幌大学進学後には、司法書士制度の変化や将来性に魅力を感じ、資格取得を決意。大学卒業の翌年に司法書士試験に合格し、勤務司法書士として経験を積んだ。
その後、2012年に大学から近い札幌市豊平区西岡で「司法書士泉田陽介事務所」として独立。「当時、西岡には司法書士事務所がなく、地域ニーズに応えられると考えたのがきっかけです」と泉田代表。22年には地元・士別市に事務所を開設し、「司法書士法人いずみだ」へと組織変更した。
この士別進出が大きな転機となった。当時の市内では司法書士の高齢化による廃業が相次ぎ、現在は同法人が唯一の司法書士事務所となった。さらに隣接する名寄市でも同様の状況を目の当たりにした泉田代表は、「このままでは地域から法務サービスが失われてしまう」と危機感を抱き、25年に名寄事務所を開設。「司法過疎」の解消に向けた取り組みを本格化させた。
地域をつなぐ3拠点体制の強み
札幌と地方都市の3拠点体制を構築していることに対し、泉田代表は「拠点が分散しているからこそ、より質の高いサービスを提供できる」と語る。
札幌は東京や大阪などへのアクセスが良く、新しい制度や実務情報が集まる「知の拠点」である一方、地方では住民一人ひとりに寄り添う実践的な対応が求められるからだ。
また、都市部と地方では相談内容や課題も大きく異なる。例えば地方では農地の相続や売買、地域特有の不動産取引、後継者不足に伴う事業承継など、地域事情を踏まえた専門的な対応が不可欠だ。画一的な法的知識だけでは解決できない案件も多く、地域への深い理解が求められる。
こうした相談に対し、必要に応じて弁護士や税理士など他の士業とも連携しながら、相談内容を整理し、最適な解決へ導いていく。法律の専門家であると同時に、相談者と各専門家をつなぐ「交通整理役」としての役割も担っているのだ。
そのため、泉田代表は、札幌を「頭脳」、地方を「現場」と位置付ける。札幌で得た最新の知識や制度情報を地方へ還元し、地方で培った実務経験や地域課題を札幌で分析・共有。この双方向の循環によって、都市と地方双方でサービスの質を高め続けている。
また「働く人が幸せでなければ、良いサービスは提供できない」とも語り、職員に対しても自己実現を重視した人材育成を実践している。
さらに母校の札幌大学では非常勤講師を務め、旭川司法書士会常任理事、日本司法書士会連合会委員として業界全体の発展にも寄与する。
地域貢献にも尽力している。司法書士業務以外でも、〝人の幸せを通じて地域へ貢献する〟という信念のもと、地元の「北海道士別翔雲高校野球部」の後援会の会長を務め、遠征費の補助や野球用具の寄付を募る。7月28日には泉田代表自ら、野球部に硬式球を贈呈した。
さらに、遠方からの部員受け入れ環境を整えるため野球部向けの下宿「成信寮」も開設して運営会社の代表にも就任するなど、地域づくりにも積極的に携わっている。
「2階はグループホームで若者と高齢者が同じ建物で暮らすため、地域コミュニティの維持に役立てています」(泉田代表)。
今後は、オホーツク、十勝・釧路、道南を加えた全道体制の構築を構想する。
泉田代表は「人口減少が進む北海道の地方都市には、それぞれ異なる課題があります。札幌一極集中が進む今だからこそ、地方の法務インフラを守らなければなりません。拠点同士が連携し、人や企業、家族をつなぐネットワークを北海道全域に築くことで、『司法過疎』という社会課題の解決に挑戦していきたい」と力を込める。