ヒューマライズ 社長 齊藤 龍治氏

外国人材の紹介と定着支援で人手不足解決に導く
外国人と企業を結び北海道の未来を創る
――どのような経緯を経て起業されたのですか。
齊藤 専門学校を卒業後、人材派遣会社に入社し、10年ほど勤めました。その後、大手食品メーカーを経て、祖父が浦河町で創業した電気工事会社を祖父の死去の後に経営を引き継ぎ、3年間代表を務めていました。この経営者としての経験が起業の原点となりました。
――地元に戻って地域が抱える課題を感じたそうですね。
齊藤 浦河町に戻って痛感したのは〝人がいない〟という現実でした。母校の高校もかつて7クラスあったのが、今では隣町の高校と合併したにも関わらず3~4クラスに減少。卒業生の多くは都心部に流出し、わずかに残った生徒も銀行や役場に就職し、地元企業に入社するのは数人という厳しい状況でした。労働力不足という言葉は耳にしていましたが、雇用する立場になった時に、現実は想像以上に深刻でした。労働力不足は、地方の存続に関わる問題だと強く感じ、この頃から北海道の未来についても真剣に考えるようになりました。
――人口減少と人材不足を肌で感じたんですね。
齊藤 はい。北海道の企業を元気にしたいという思いから「ヒューマライズ」を7年前に創業しました。当初は日本人の紹介・派遣が中心でしたが、日本の労働人口は減少の一途。AI導入による効率化といっても、中小企業がすぐに実現できるわけではありません。現実的に人手を確保するには、外国人の活用が避けて通れないと考えました。当社は特定技能外国人の登録支援機関として、入国前の準備から就労後の生活支援まで一貫してサポートしています。
現在は日本人が6割、外国人が4割ですが、今後3年以内には案件数ベースで外国人が8割を占める見込みです。北海道の外国人材登用は首都圏に比べて3〜5年遅れている分、伸びしろが大きいと感じています。
――ヒューマライズの強みは。
齊藤 一番重視しているのが人材の「定着」です。特定技能ビザは転職が可能なため、文化や職場に馴染めなければ離職につながる。入れて終わりでは意味がありません。私たちは〝親や兄姉のように寄り添う〟をモットーに掲げ、手薄になりがちな文化の壁や人間関係の課題を一つずつ丁寧に解消し、徹底的にフォローします。同業他社で支援している外国人材を当社に支援先変更したいというお話も頂いたりします。
――具体的な取り組みを教えてください。
齊藤 主に外国人向けの「専用動画支援制作サービス」を提供しています。採用後、日本語学校を卒業して来日するまでには約6カ月あります。その間に、企業ごとの仕事内容や専門用語を動画で事前学習できる仕組みを整え、業務内容を理解した状態で来日できるようサポートしています。動画は取材から編集まで自社で内製化しているため、作成費用はどこよりも安価で提供しています。多言語字幕にも対応し、字幕を外せば日本人への新人教育にも使えるので、2次使用としても好評です。就業前から仕事内容を理解しているため、企業から即戦力として高く評価いただいてます。
――生活環境への配慮もされているそうですね。
齊藤 はい。他社では7〜8人を一軒家に住まわせるケースもありますが、当社は極力少人数部屋を基本としています。感染症リスクを避け、安心して生活できる環境を整えることが仕事の安定に直結します。また、賃貸物件では外国人の入居を断られるケースも少なくないため、企業からの住居相談にも対応しています。将来的には自社物件の確保や不動産事業への参入も視野に入れ、さらなるサービスの向上を図っていきたいと考えています。
――どのような業界からの依頼が多いですか。
齊藤 製造工場や外食産業などの食品関連を中心に、農業や漁業などからの引き合いが多いです。近年は、介護やサービス業への紹介も増えています。当社の通訳担当者が事前に「派遣」として職場で実際に働き、相談を受けるだけでなく仕事内容を深く理解をする環境を作ったりもしています。親身でスピード感ある対応が、企業や外国人から信頼をいただいているのだと思います。
――定着支援の工夫についても教えてください。
齊藤 外国人が現場で孤立すればすぐ離職につながります。当社は母国語で相談できる体制を整え、外国人社員がミャンマー、インドネシア、ベトナムなどの母国語で対応します。安心感を持って働いてもらえるようにしています。
また、日本人側への働きかけも大切にしています。例えば〝挨拶のすれ違い〟が時に壁を作ってしまうこともある。だからこそ、私たちが現場に入り橋渡し役となり、人間関係の改善をサポートします。こうした積み重ねが高い定着率につながっています。
――企業の海外展開の支援も進めています。
齊藤 はい。東南アジアに現地法人を設立し、日本企業の進出支援を行っています。日本で特定技能として経験を積んだ人材が母国に戻り、責任者として活躍する流れも視野に入れています。人材の循環を通じて、企業のグローバル展開を支援したいと思っています。
――最後に今後のビジョンを教えてください。
齊藤 外国人材の受け入れにはまだ抵抗感があるかもしれませんが、労働力不足は待ったなしです。企業の持続的な発展のためにも避けて通れないテーマです。私たちは「企業と人材、文化をつなぐ架け橋」として、道内企業がこれからも元気であり続けるよう全力で支援していきます。
