北海道財務パートナーズ 社長 田村 優人氏

財務戦略のパートナーとして資金調達を支援
企業に寄り添った丁寧なサービスが好評
――事業内容を教えてください。
田村 企業の成長と存続に欠かせない資金調達を円滑に行う支援をする財務コンサルタントが主事業です。企業の創業時はもちろん、成長期、安定期、再成長期のあらゆる場面で必要な資金調達ですが、金融機関の融資審査をパスできないという経営者は多いものです。そこで、スムーズに融資が受けられるように支援していくのが仕事です。
もちろん数字を粉飾するお手伝いではなく、「今のままでは決算時にはこうなるので、こうしましょう」といったように、早い段階から関わり助言をする財務戦略のパートナーという役割です。
――資金調達が難しい原因は。
田村 融資審査の際に金融機関から提出を求められる書類は、主に「事業計画書」「収支計画書」「資金繰り書」の3つですが、特に事業計画書が問題になりやすい。融資を得るために無理な数字を算出して、計画を立ててしまうことがあるからです。当然、銀行は実現可能かを適切に判断するので、融資が降りないというケースはよくあります。
一般的には、一度でも融資を断られると次に審査してもらえるのは半年後以降。特に経理を税理士に任せる経営者の多くは、自社の決算書を説明できないため、適切な時期に資金調達が得られるようサポートしていきます。
――創業のきっかけは。
田村 北洋銀行で5年間勤め、次に勤務したのが外資系生命保険会社です。法人向けの保険商品を主に担当していましたが、当時のクライアントに「融資してもらうための事業計画書の作り方を教えてほしい」と相談を受けました。それがうまくいくと財務関連の相談が次々に来るようになり、多くの経営者が「資金調達の悩みを相談できる環境がない」ということに気づいたんです。そこで、2023年に合同会社を設立して創業。クライアントが増えたため、今年3月に株式会社に移行したという流れです。
――銀行員と保険営業の両方の経験が生きているんですね。
田村 銀行員の経験により、事業計画書や決算書から企業像を読み取ることができますし、生命保険の営業は信頼を得ないことには契約につながらない。そうした経験が生きていると思っています。
――クライアントの傾向は。
田村 クライアントの数は、現在50社ほどで、建設業が多くを占めています。ただ、そこから派生して、最近は飲食店やIT関連企業、ベンチャー企業など業種の幅も広くなってきました。
事業資金に関わることですので、1社ごとに時間をかけて信頼関係を築いていくことが信条です。現在従業員は私も含めて3人。急激にクライアントを増やすことはできませんが、年内に100社程度まで増やしたいと考えています。
――どのような企業に必要な事業だと感じていますか。
田村 人材を確保する際も、設備投資を行う際も事業資金は必要です。つまり、全業種の企業のお役に立てると思っています。大手企業であれば、銀行から優秀な人材を引き抜いて事業資金関連の業務を任せることができます。しかし、年間数百万円の給料を支払うことになるため、中小企業や零細企業ではこうしたことができません。そこで、財務戦略に詳しい外部の人間にサポートしてもらう。こうした形でつながりが持てたらと考えています。
――税理士と業務の違いは。
田村 税理士は過去の数字を整理して正しい税額を納められるようにサポートする人です。これに対して財務パートナーはこれからの数字を一緒に考える人です。
中小企業でも、税理士や社会保険労務士、弁護士などと顧問契約を結んでいる会社があります。それらの専門家と同様に、事業の継続・発展をサポートする財務の専門家がいることはあまり知られていません。先導的な役割を果たしたいと考えています。
――利用の際には複数のプランが用意されていると聞きました。
田村 事業規模や依頼内容によって異なる3つのプランを用意しており、ケースバイケースで対応しています。企業の成長をサポートするのが当社の役割ですから、長く付き合えるように納得できる範囲で利用料金やサポート内容を設定しています。具体的には、ミーティングの回数が週1回、月1回といったように、要望に合わせて対応させていただいています。
――仕事をする上でモットーは。
田村 事業資金を扱っていますので、嘘は絶対につかないことです。例えば「今は融資を受けられる状態ではない」ということも、白黒をはっきりさせてスピード感を持って伝えます。ただ、それは「今は」ということであって、「1カ月後、半年後に向けてこうしましょう」というアドバイスもするように心がけています。
――クライアントにとってどのような存在になりたいですか。
田村 財務は非常に重要ですが、事業の一部分でしかありません。経営者を主導するというよりも、後ろを振り返った時になんでも相談できるような存在でいたい。当社では税理士や社労士、弁護士とも業務提携していますし、ビジネスマッチングもしています。事業に関わる大体のことは、安心して相談できる体制を整えています。
――今後の目標は。
田村 資金調達に悩みを抱える経営者は日本全国にいますので、ゆくゆくは全国展開をしたいと考えています。ただ、まずは資金調達で困っている道内企業をサポートすること。それが道内経済の活性化につながるとも思っています。財務戦略の専門家がいるということを多くの経営者に知っていただきたいです。
