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ホテル✕賃貸マンションで抜群の収益力「Citson Gardenシリーズ」の秘めたるポテンシャル

賃貸マンションの1フロアを独自設計で大空間のホテルに

物件の供給過多、建築費の高騰など不動産の投資環境が変化する中、インバウンド向けのホテルと賃貸マンションを融合した「Citson Garden」シリーズが改めて投資家から注目されている。開発したエフエーの天内和幸社長にハコモノビジネスとして同シリーズの可能性を聞いた。

コロナを乗り越え復活の狼煙を

――事業内容は。

天内 収益不動産の企画・販売を中心に、不動産取引全般を手がけています。2016年に1棟目となる新築企画賃貸マンションを供給し、これまでに札幌市内に約60棟の賃貸マンションをプランニングしてきました。

――札幌市内は賃貸マンションの激戦区ですね。

天内 特に地下鉄駅徒歩圏は競合が増えやすく、従来の企画では差別化が難しい中で、⼈⼝減少やインバウンドの増加など、社会情勢の変化を⾒据え、新たな収益構造をもつ不動産を模索していました。

――「Citson Garden」シリーズの開発にたどり着いた経緯は。

天内 あるオーナーから古いアパートをインバウンド向けのホテルにリフォームしたいと相談されたことがターニングポイントとなりました。

幸い、相談者の予算も潤沢で、素晴らしいホテルへと変貌させることができました。本業の新築企画にも取り入れたいと考えていたところ、タイミング良く好条件の土地情報が舞い込み、19年秋に賃貸マンションとコンドミニアム型ホテルを融合した「Citson Garden」の第一号が札幌市北区に完成。同時期に札幌市内に3棟を一挙に完成させました。

――しかし、19年12月にコロナウイルス騒動が始まりました。

天内 11月に民泊事業者として認可され、これから本格的にホテルを稼働させるという矢先でした。外国人観光客はもちろん、国内旅行もままならない状況でした。ほとんどの⺠泊が撤退していく中、ホテルとしての性能を突き詰めた設計のため賃貸マンションへの転⽤も難しく、収束が見えない中でいかに乗り切るか、という状況でした。

――どのように乗り越えたのでしょうか。

天内 「Citson Garden」シリーズは、賃貸マンションとホテルの複合物件です。ホテルフロア以外の賃貸住居から家賃収⼊が得られるため、⼀定の収益を確保できる事業形態となっています。収益⼒の⾼い事業を組み込む⼀⽅で安定性を確保するためのリスクヘッジとして考えた複合構造が功を奏しました。

1フロアで3倍以上の収益性を実現

――インバウンドも戻りつつある今、改めて収益性の高さが注目されています。

天内 22年に外国人観光客の受け入れが緩和され、23年から潮目が変わりました。コロナ禍の中で新たに1棟が完成し、札幌市内5カ所となった現在、ホテル部分の平均稼働率は70~80%(23年1~11月)となっています。

宿泊料⾦は事業計画上、一泊6万円を想定しており、7割稼動で1カ月の売り上げが126万円にのぼります。当ホテルの平均宿泊⼈数8人で割れば、1⼈当たり7500円(1泊)。⼀般的なホテル相場と⽐べても、⾮現実的な価格設定ではありません。

賃貸収⼊と⽐較すると「Citson Garden」1フロア相当に⼊る賃貸住居は4~5⼾で、その場合の家賃収⼊は1カ月で30万円程度ですから、同じ⾯積で⽣み出す収益⼒がいかに⾼いかは明らかです。

――高収益にもかかわらず、類似するホテルがほぼないようですね。

天内 当社ではアジア圏の観光客の利用を見込んで設計しています。家族や兄弟、親戚一同がそろって同室で過ごすという文化や風習など特有の旅⾏ニーズに合わせ、⼤空間を提供する 1フロア貸切のホテルとしています。

宿泊者は10人以上を想定し、全員が集えるリビング・ダイニングスペースをはじめ、家族ごとのベッドルーム、風呂やトイレ、洗面化粧台は4セット用意しています。こんな宿泊施設は都市部に中々ありません。

また、客室内は北海道のデザイナー達によるアートな空間を演出しています。地場企業として、地域のアートクリエイターの作品を多くの人々に見ていただければと思っています。最近は客室に飾ってほしいと作家の方から依頼されることも増えてきました。

――同業から模倣されることはないのですか。

天内 「Citson Garden」シリーズは低層マンションにホテルを組み込むというモデルです。低層マンションで⽤いられる壁式構造は、階層ごとに間取りを変えることは⾮常に難しいのですが、パートナーの設計事務所とアイデアを出し合い、⼤きな空間を持つホテルフロアと、複数の住居が⼊った賃貸フロアを⼀つの建物にまとめ上げました。このノウハウを再現するのは簡単ではないでしょう。

――24年は待ちに待った本格稼働になりそうですね。

天内 投資商品としての潜在能⼒がもたらす〝結果〟を積み上げる⼀年にしたいです。収益性を実際のデータとして示すことができれば、投資家への訴求力は大きく向上するのではと期待しています。また、金融機関へのファイナンスアレンジにも活用し、資金調達のハードルも下げていきたい。

24年は春から夏にかけても札幌市内で新たな「Citson Garden」の着工を計画しています。また、道内はもとより、将来的には全国のさまざまなエリアに展開していきたいですね。

天内 和幸氏(あまない・かずゆき)
■エフエー社長
留萌市出身。北見工業大学工学部卒業。橋梁設計の技術士として建設コンサルタント会社に18年勤務。2013年エフエー入社。18年から現職。