アスリートインタビュー

北海道日本ハムファイターズ

【斉藤こずゑのファイターズじゃないと♡特別版】梨田昌孝氏

近鉄時代の縁、医療従事者に感謝

「無事に社会復帰できるだろうか」

斉藤 今月号も新型コロナウイルスの感染拡大のため、選手との対談企画は休止となります。先月号に引き続き、ファイターズ関係者へのリモートインタビューをお届けします。

今回は前監督の梨田昌孝さん。コロナ感染の報道は大変驚きました。志村けんさんらの訃報もありましたから心配しました。

梨田 かなり危険な状態にあったようです。妻は一時、お医者さんから「ひょっとすると……」「一命を取り留めても、寝たきりの状態に……」などと言われたみたいです。回復することができて、家族は本当に喜んでくれました。

斉藤 画面で拝見すると、顔色もすっかりいいですね。

梨田 おかげさまで。入院後、太陽に50日くらい当たっていなかったので、いま、家のベランダで日光浴などをしています。感染後、15キロ痩せました。いまは3キロくらい戻りましたかね。

斉藤 発症から闘病生活はどのような感じだったんですか?

梨田 倦怠感を感じたのは、3月25日2時ごろだったと思います。熱を測ってみると、37度前後。そのような状態が4日間ほど続きました。このころはまだ、国が「37・5度以上が4日続けば、医療機関に相談してください」と呼びかけている段階でした。

コロナの怖さも、まだあまりわかっていなく、「これはコロナではない」「俺はコロナにはならない」と、どこか慢心のようなものがありました。

5日目にどんどん熱は上がり、39度を超えました。でも、どこかで「体温計が壊れているのではないか」と思う一方で、「すぐにはPCR検査をしてもらえないのかな」と思い、病院に行くのを躊躇してしました。

このころには多少、味覚障害みたいなものはありました。臭いもあまりしていませんでしたね。

30日に家の近くの病院を受診し、翌31日に別の病院に行きました。このころにはもう自力では歩けなくなっていました。そして4月1日にコロナ感染の診断を受けました。

斉藤 以降の記憶がほとんどないそうですね。

梨田 ええ。入院後、人工呼吸器をつけて、2週間くらい、ICU(集中治療室)にいたんですが、意識はもうろうとしていました。

悪夢というか幻覚というか、そういうものをみました。自分でも生きているのかどうかわかならないくらいでした。

それでも、その後、徐々に体調は回復していきました。世間でコロナに効果があるのではないかといわれるアビガンなどは投与されていません。

少しよくなってきて感じたのが、無事に社会復帰できるのだろうか、と。

年齢にしては筋力はあるほうなんですけど、それが全然なくなってしまって。ペラペラというか、へロヘロというか。そのため、立つことができない。というか、まず座れない状態でした。

ショックだったのが、一時、ペットボトルのキャップも空けることができなくなったこと。もう字を書いたり、細かな作業もできるのですが、いまも指先の末端は多少のしびれがあります。

あと、笑えない。しばらく笑顔なんてつくりませんでしたから、その表情をすることができないんですよ。よくなってきてから、笑うと筋肉を使うのがわかる。

ファイターズ新監督就任会見時の梨田昌孝氏(2007年10月20日撮影) ©財界さっぽろ

斉藤 あるご縁もあったそうですね。 

梨田 はい。昔、近鉄バファローズに藤瀬史朗さんという足のスペシャリストがいました。代走で1シーズンに20盗塁をしてしまうような。

藤瀬さんは僕と同い年なんですけど、息子さんがリハビリの先生をしていて。僕のリハビリを中盤くらいから担当してくれました。

お父さんは現役引退後、近鉄でコーチをして、厳しかったんですけど、息子さんも同様で(笑)。そのおかげで、僕の筋力もここまで戻ることができたんだと思っています。リハビリ中は、励ましの言葉もかけてもらいましたけどね。

そして、5月20日に退院することができました。すぐに藤瀬さんのお父さんにはお礼の連絡を入れました。

入院中、お医者さん、看護師さんらは、懸命に治療にあたってくださいました。医療従事者のみなさんに感謝しています。

(構成・竹内)

……この続きは本誌財界さっぽろ2020年8月号(7月15日発売)でお楽しみください。


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(なしだ・まさたか)1953年8月4日、島根県浜田市生まれ。A型。右投げ右打ち。島根県立浜田高校卒。71年のドラフト2位で近鉄バファローズに入団。ベストナインを3年連続受賞するなど、長きにわたり主力捕手として活躍。現役引退後、大阪近鉄バファローズ、北海道日本ハムファイターズ、東北楽天ゴールデンイーグルスの監督を歴任。通算2度のリーグ優勝に導く。現在はNHK、日刊スポーツなどでプロ野球解説者を務める