寺院の伝統とデジタル技術を融合した過去と未来をつなぐ納骨堂

少子化や核家族化により、近年は「墓離れ」や「宗教離れ」が進んでいる。札幌市豊平区にある「白鳥山 覚英寺」では、2024年に「教化センター」を設立。寺院の課題に立ち向かい、新たなスタイルを確立している同寺を取材した。
前身の「豊平説教所」の開設から105年。3代目の海野英爾住職は、約十数年前から「教化センター」の構想を進めてきた。
海野住職が目指す開かれた教化センターは、納骨堂や礼拝堂、和室、ホールを備え、英語教室や体操教室、茶道教室、落笑会、笑いヨガなど地域コミュニティーに開かれた場としても活用されるハイブリッド型施設。世代を超えた人々が利用している。
「地域の皆さまに足を運んでもらい、お寺を身近に感じてほしいという思いから『教化センター』を設立しました。私たちが檀家や参拝者とのつながりとなり、お彼岸やお盆などで人々がお寺を訪れるきっかけになれば」(海野住職)
教化センターの2階には、デジタル技術を融合した納骨堂があり、これまでにない新たなお参りの方法を提案している。
合同参拝ブースの参拝台には、QRコード読み取りシステムを設置。専用カードをかざすと、モニターに故人の遺影や思い出の写真、家系図、歴史などが映し出される仕組みだ。
先祖の歴史や思い出が風化することなく可視化され、世代を超えた家族のつながりとなっている。次世代に受け継がれるこの新たな参拝の形に対し、利用者からは喜びの声が上がっているという。
また、礼拝堂内は、明るく広々とした雰囲気が特徴。墨画画家の小玉茂右衛門氏が制作した作品が展示され、より華やかさと重厚な空間を創り上げている。
納骨壇は、浄土真宗本願寺派の方式により読経を勤める。また、他宗派の場合でも相談に応じている。
骨壺が12個収納できる「特Aタイプ」(190万円、参拝システム料金を含む)からコンパクトな「Dタイプ」(65万円、同)までの5タイプを取りそろえた。さらに、永代管理納骨壇も用意するなど現代のニーズにも応えている。
海野住職は「個人・故人・お寺、この3つが〝つながる〟仕組みをつくることができました。古きものを生かしながら、新たな伝統をつくることで日本の文化を継承していきます」と語る。



