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果敢に挑戦する中小企業の人材づくりを応援

北海道銀行代表取締役副頭取
道銀地域総合研究所社長
髙田 芳政
(たかだ よしまさ)1965年岩見沢市生まれ栗山町出身。89年北海道銀行に入行。2020年取締役常務執行役員営業部門長などを経て、24年代表取締役副頭取、道銀地域総合研究所代表取締役社長に就任

働き方改革、ハラスメント対策などに中小企業経営者は頭を悩ませている。北海道銀行のシンクタンク「道銀地域総合研究所」は企業向けに社員研修会を開催する。髙田芳政社長に取組み内容を聞いた。

大切なコミュニケーションの輪と論理的な説明力

 ――「道銀地域総合研究所」は、どんな事業を展開していますか。

 髙田 当社は、地域政策の立案・事業化の支援、地域経済の発展に寄与する情報生産機能、そして、研修・セミナーの開催、講師派遣などを通じて道内企業における業務効率化や生産性向上を支援することを柱とする、地域密着型のシンクタンクです。

 具体的な研修として、新任経営者、後継者候補の方々を対象とした『道銀経営塾』は、北海道銀行本体がおよそ1年かけて開催しているもので、1996年にスタートして700名以上の卒業生を輩出し、道銀ブランドの一つとして欠かせないものとなっています。

 当社では、その下の階層用に3つのコースを設けて研修を開催しています。経営者を補佐する役員・部長、それらの候補者を対象とした『幹部塾』、新任管理職・その候補を対象とした『課長塾』、若手リーダーの育成を目的に若手・中堅社員を対象とした『中堅若手塾』を半年、数カ月をかけて実施しています。中でも『課長塾』は管理職登用にあたっての登竜門研修として人気です。

 ――管理職として部下と接する上で、何を大切にしてきましたか。

 髙田 組織の人数が多くても少なくても、自分から積極的にコミュニケーションを取れるタイプの方もいればそうでない方もいますが、管理職としては各人と満遍なく平等に接することが大事だと思います。組織の中には色々な意見がありますので、自らその声を拾いながらコミュニケーションづくりに心がけてきました。組織長自らが働きかけることでチーム内に大切なコミュニケーションの輪が出来上がり、結果として仕事も進めやすくなります。

 しかし「言うは易く行うは難し」で、随分と失敗もしたし時間と体力もかけてきました。

 別な観点では論理的な説明や表現を意識するよう仲間に伝えてきました。例えば、お客様に対しても、また同僚に対しても各人の表現は三者三様ですが、重要なのはこちらの意図が相手にしっかり理解をいただいているか、そして腹落ちしてもらっているかという点です。説得力をもたせるという意味で、論理的な説明能力・思考力を求めて指導してきました。

テーマごとに細分化されたビジネス研修会

 ――「道銀 らいらっく会ビジネス研修会」も開催されています。

 髙田 こちらは、役職などの階層別、目的別に23のテーマを設定し、集合研修だけでなくウェブでも参加いただけます。それぞれ3時間コースで1回、税込5500円と参加しやすい企画だと思っています。足元の労働環境が売り手市場ということもあり、中小企業の多くは人材確保が難しく、少ない人員で日々の業務を遂行しなければならず、一人ひとりのスキルアップが非常に大切になっています。

 今は昔と違って「飲みニケーション」という機会を持つことも少ない時代で、社内でのコミュニケーションの取り方も変わってきています。働き方改革が進む中で社員教育を実践していくためには、就業時間内に効果的に行う必要があるため、外部のこうした研修機会の活用は有効です。

 また、中小企業においても、新たな取り組みに挑戦することが求められる時代です。こうした中、多様化する人材を抱える組織やチームをまとめあげ、新たな発想で果敢に挑戦へ導く「人材づくり」の重要性が高まっています。私たちの研修会は、そのような経営者のニーズを汲み取りながら研修企画・業務を行っています。

 2019年からスタートしたこのビジネス研修会を道内企業の社員教育の基礎として身近に活用いただきたいと思っています。

 ――社員育成において、どのような相談が寄せられていますか。

 髙田 一番わかりやすいところでいえば、離職者が多いといったことや各種ハラスメントやコンプライアンス遵守への具体的な対応方法についてのご相談が目立ちます。若手社員が組織において十分なコミュニケーションがとれないまま、離職につながったという事例を多く聞きます。しっかりとした社員教育の必要性を感じるが、そのとっかかりがわからないという照会もあります。

 ――とりわけ人気の研修があれば教えてください。

 髙田 課長職・係長職などの中堅社員を対象にした「上司をよく理解し、どうフォローするのか」を学ぶような研修は人気です。経営サイドからそのような人材に成長してほしいと期待される社員が指名を受けてこの研修を受けるケースが増えています。

 同じく中堅社員向けの「仕事の段取り」を学ぶコースも人気です。中間管理職に求められる役割が増す中で働き方改革も同時に進めていかなければならない時代背景がこの研修の受講者の増加を促していると考えています。

 当社の研修は、お取引先企業の経営者や研修参加者からのご要望を伺ったうえで、研修コースの内容やカリキュラム自体を見直しながら開講を続けています。今後も内容を少しずつ見直しながら、各企業の足元のニーズや将来の成長に資するカリキュラムを組み立ていきたいと考えています。

 ――ここ最近の若手社員についてはどんな印象をお持ちですか。

 髙田 総じて転職に対する心理的ハードルが低い印象を受けますし、そうした意味においては会社に対するロイヤリティも薄くなりがちです。せっかく採用したのにすぐに辞められては困ります。真剣に「人が辞めない職場づくり」を経営者自らが考える時代です。まずは身近なところで当社の研修をご活用いただきたいですね。

 また、春の入社前後にあわせて、新入社員研修会も開催しています。礼儀作法はもちろんEメールの書き方などビジネス文書の講座を設け、実務に役立つ内容を盛り込んでいるのが特徴です。

 また、次のステップとして入社から半年後にはフォローアップ研修会を開催しています。仕事の基本を再確認し更なるレベルアップを促します。

 若手社員には社会人としての必須スキルをいち早く習得してもらうという目線が重要です。その上で、成長機会や実践機会を十分に与えることができれば、離職抑制につながり会社に対するロイヤリティも高まります。

 入り口における教育は企業にとって欠かせない成長ドライバーです。ここでも私たちはしっかりと企業の人づくりに貢献していきたいと思います。