ほっかいどうデータベース

麻生自動車センター

赤い車体カラーと「asabu」の文字が目立つ教習車

ハード・ソフトを整備し安全な交通社会を目指す

校舎リニューアルで利便性を向上

「麻生自動車学校」を運営する「麻生自動車センター」。1964年設立の自動車教習所で、安全意識が高いドライバーの育成では、札幌市内有数の実績を誇る。

 少子化や若者の車離れなどを理由に、国内の自動車教習所の入校者数は減少傾向にある。同校も例外ではなかったが、2010年に菅俊也社長が入社し、さまざまな施策を推進した。当時は全道4位の入校者数(普通自動車第一種運転免許)が、現在は2位にまで上昇している(指定自動車教習所調べ)。

「運転免許証はどこの教習所で取得しても価値は同じです。こうした中で『当校を選んで良かった』と思ってもらうにはどうすれば良いか。そのために、ハード・ソフトの両面をブラッシュアップするとともに、認知度向上を目指しました」と菅社長。

 ハード面では、19年から校舎内部の全面リニューアルに着手。内装をレンガ調からシンプルな白に変更し、ロビーには温かみの感じられる間接照明を採用したほか、館内フリーWi‐FiとAC電源完備のカウンター席を20席設置、プライベート空間を提供する専用有料ラウンジも設けた。

 菅社長は「〝教習所〟という言葉からは、堅苦しいイメージが想起されますが、当校では老若男女問わず皆様にとって居心地の良い空間となるように施設を充実させました」と語る。

 一方、ソフト面では、21年6月から道内初となる学科教習のオンライン配信(オンデマンド型)授業を開始。ほぼ全ての学科教習が24時間365日受講できるため、利便性が格段に向上し、教習生の中には近隣の大学に通学する留学生も多数いるため、英語用の教材も現在開発中だ。

 認知度の向上にも努めており、市内地下鉄駅へのサイネージ広告の出稿や、SNSの活用などを推進。また、一般道を走る教習車も広告塔の1つとして考え、印象に残るようなラッピングを施している。

 さらに同校では口コミやアンケートの意見を重視。その理由を菅社長は「評価や口コミは、今後の利用を検討する人にとって重要な判断要素です。それらが厳しいものであっても真摯に受け止めます。当校は全社員がそれらを共有する体制を構築しており、日々の業務改善に役立てています」と語る。

 同校では都合の良い評価や口コミを抽出し投稿するといった実情と乖離(かいり)する行為は皆無で、実際にGoogleの口コミの評価は、4・3ポイント(4月28日現在)と高評価を維持している。

独自の講習を実施運転する楽しさも追求

 交通網の発達に比例し、全国的に都市部で車離れが加速している。一方で、北海道は他都府県に比べ都市間距離の長さなど、さまざまな要因から自動車への依存度が高い。しかし、その分交通事故の発生リスクも高いという特徴もあることから同校では多様な講習を実施している。

 その1つが「企業研修」だ。業務上の事故は人身や金銭面の損失のみならず、企業イメージのダウンにもつながる。専任のインストラクターを配置し、法人を対象にペーパードライバーで入社した社員や、雪道の運転経験がない本州企業の社員に向けて講習を実施。年間で約100社、500人が受講している。

 また、中学生や高校生に向けた交通安全教育にも積極的に取り組んでいる。年間8校に訪問し、延べ1500人に「交通安全講習会」を開催。地域の交通安全センターとして、安全意識の醸成の一助も担っている。

 一方、運転機会の提供を目的に、レンタカー事業に登録。運転や移動の楽しさを体感してもらうため、同校を卒業した5年以内の新規免許取得者に限定して、格安でレンタカーを貸し出している。

「〝せっかく免許証を取得したのに、車が無いので運転していない〟という声をよく耳にします。当サービスを活用し、運転の楽しさを身近に感じてほしい」と菅社長。

顧客・社員双方の満足度向上を図る

 さまざまな取り組みで、顧客満足と安全意識の向上に努める同社だが、こうした活動に欠かせないのが社員の存在だ。

 菅社長は「社員満足度の高さは、顧客満足度の高さに直結します。そのために社員が何の心配も抱くことなく、常に全力を出せる職場環境をつくらなければならない」と語る。

 その一環として、今年度は全社員の給与体系を見直し大幅なベースアップなどを実施した。〝利益は社員に存分に還元したい〟という菅社長の強い思いを反映させている。今後は短時間勤務制度等の適用期間の拡大・柔軟化にも着手し、新たな人材の獲得も進めていく。

「安全な交通社会の実現、運転の楽しさを伝えること、雇用を守り創出すること、どれも当社に課せられた使命です。達成に向けて全力を尽くし、皆様から愛される教習所にしていきたい」と菅社長は意気込む。

菅俊也社長
2019年にリニューアルした「麻生自動車学校」
普通自動車、二輪車、大型特殊免許が取得可能
教習コースを見渡すことができる「プレミアムラウンジ」