道路建設
みやざき・けんご/1980年、苫小牧市生まれ。同志社大学卒業後、2003年に住友生命保険に入社。8年間勤務したのち、2011年に道路建設に入社。経営企画室室長、常務、専務を歴任し、2020年に社長に就任。また、17年にはマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学し、MBAを取得。
前例主義ではなく開拓者精神で挑む次の50年
1967年の設立以来、北海道の道づくりを通じて地域の発展と共に歩んできた。宮﨑健悟社長は、長年培われた信頼と技術力を受け継ぎつつ、未来を見据えた改革を進める。伝統と革新の両輪で会社を導く、その想いを聞いた。
地域の発展を支えた半世紀の道づくり
――道路建設の歴史について教えてください。
宮﨑 創業者は私の祖父です。軍人や苫小牧市の助役(副市長)などを務めた後、戦後の公職追放を経て岩倉組に入社しました。岩倉組の解体に伴い建設部門である岩倉建設を引き継ぎ、舗装部門を独立させたのが当社の始まりです。1967年の設立以来、道路舗装を中心に道づくりを通じて、北海道の発展に寄与してきました。
――創業から半世紀以上続く歴史をどう感じていますか。
宮﨑 歴代の社長が愚直に経営を続けてきた積み重ねが今日の信頼につながっていると思います。真面目な社風ゆえ柔軟さに欠ける面もありましたが、今後は今まで以上に仕事の本質を楽しみ、遊び心も取り入れながら新たな舗装会社を目指します。
――2020年に社長に就任されました。当時の心境は。
宮﨑 就任時は北海道庁の工事成績は比較的良好でしたが、北海道開発局では評価が低く、舗装Aクラスの最下位という状況で業績も順風とは言えませんでした。簡単な話ではないことはわかっていましたが「ここからどう立て直すか」という楽しみの方が大きかった。一方、社員からの期待も感じていただけに責任の重さも痛感しました。
――金融業界からの転身にはギャップはありましたか。
宮﨑 前職の住友生命では、不動産投資や営業支援に携わり、拠点長も経験しました。数字を扱う世界は仕事の進め方や稟議書などの作成も精緻で、鍛えられたと感じています。一方当社は勘や経験に頼る面も多く「どんぶり勘定だな」と感じることもありました。ただ、その違和感が経営改善のヒントになったと思います。数字に基づいた経営、文書作成の見直し、曖昧な仕事の進め方を改善し、理論的思考を社員に促してきました。
デジタル化と組織改革で拓く次の50年
――最初に取り組んだことは。
宮﨑 21年に中期経営計画を策定しました。30年までの10年間を見据え「働きやすく働きがいのある会社」「楽しく幸せに働ける会社」などを目標に掲げ、社員中心の会社を目指しています。利益率や工事成績の向上、人材育成、採用、働き方改革といった具体策を明文化し、会社が目指す方向を明確にしました。
――社員の反応は。
宮﨑 初めての中期経営計画に当初は戸惑いもありましたが、進むべき道を共有したことで結束が生まれ、今ではボトムアップの風土が根付きつつある。社員の心理的安全性を確保し、意見や提案を気兼ねなく言える環境を整えたい。
――DX化も進めています。
宮﨑 はい。当社はグーグルワークスペースを導入し、スケジュール管理やWeb会議、チャット、ドライブなどを活用しています。ワークフローや勤怠管理システムに加え、原価管理中心の施工管理システムを自社開発しました。翌日には全体の数字を詳細に把握できる環境が整い、経営効率が格段に向上しました。また、ITを活用してバックオフィスから遠隔で現場を支援する建設ディレクター制度を道内で最も早く採用しました。働き方改革に加えてCIMの活用やICT施工を推進し、工事書類の精度も向上した結果、工事成績が向上していきました。こうした取り組みが実を結び、北海道開発局の「工事成績優秀企業(ゴールドカード)」に今年度初めて認定されました。
――M&Aにも積極的です。
宮﨑 23年に室蘭の北興工業をグループに迎えました。経営が厳しい中でも地元企業を守りたいという思いからです。採用やDXノウハウを共有し、北興工業からは工事成績の知見を学ぶ。売上や利益の追求ではなく、互いの強みを生かした〝共創の道づくり〟を志向しています。
――経営哲学にあるのは。
宮﨑 一言でいえば「社員ファースト」です。仕事は人生の大半を占めるからこそ、社員が楽しく幸せに働ける環境を整えることが第一。福利厚生や待遇改善にも力を入れ、社員一人ひとりの人生という〝道〟を築くことこそ、経営者の責務です。
――伝統と革新の両立についてはどうお考えですか。
宮﨑 伝統とは、過去の慣習を固守することではなく〝開拓者精神〟を受け継ぐこと。前例主義にとらわれず挑戦する文化を根づかせたい。社員には「できない理由ではなく、できる理由を探そう」と伝えています。
――今後の展望は。
宮﨑 人材教育や技術開発といった専門部署の創設、ホールディングスカンパニーによるシェアードサービスの提供など、中小企業単独では難しい取り組みに挑戦したい。地域課題解決など社会貢献にも取り組み〝次の50年〟に向けて歩み続けます。