アスリートインタビュー

北海道日本ハムファイターズ

【斉藤こずゑのファイターズじゃないと♡】特別手記・“新庄ビッグボスの13人”

 NHKの大河ドラマは今、源頼朝を支えた13人の家臣にスポットライトが当てられている。一方、こちらのルーキー・13人は新庄ビッグボスが目指すチャンピオンフラッグ奪還のためにいかなる活躍を見せてくれるのか。今回の連載は斉藤こずゑさんがファイターズの新入団選手たちにエールを送る。斉藤さん独自の情報がてんこ盛りだ。

既に自分のペースを持つドラ1

「たのしんじょう!」

 12月に北広島市で行われた新入団会見で、ルーキーたちに一言、と求められた新庄剛志ビッグボスが言った言葉。説明するまでもなく、楽しむ+新庄の造語である。

 満面の笑みで楽しそうな新庄監督と、ここは笑っていいものかと複雑な表情の新人たちのギャップに思わず、くすっとしてしまった。

 監督は野球を楽しもう、と言う。

 かっこよくなってスターになろうよ、と言う。この言葉はとても重い意味を持つ。楽しむというステージに立つためには、どれだけの練習と努力が必要なのか。

 わかってるよね?

 監督の心の声が聞こえる気がする。

©時事通信

 キャンプも終わりが見えてきた、ルーキーたちはいま何を思って沖縄にいるのだろう。

 今回のドラフトは支配下9位まで、育成は4人を指名。チーム最多タイの13人の選手が新人として入団した。顔ぶれもさまざま、既婚者も2人いる。1月には二軍施設の鎌ヶ谷で新人合同自主トレが行われた。

 その自主トレ初日、1位指名、天理高校から入団の達孝太投手は最初に全員で臨むキャッチボールに参加しなかった。自分にはもう少しストレッチが必要だとコーチに話し、それが認められたのだ。

 高校時代から、ダルビッシュ有投手も使うという球の回転数や変化量を測定する装置「ラプソード」を個人で導入、体の仕組みを知るための専門書も読むという。

 既に自分のペースを持つ達投手はどうプロの世界にアジャストしていくのか、大物の匂いが漂う。

 2位の有薗直樹選手は千葉学院高校から入団、185センチ・97キロ、高校通算70HRのスラッガー。大きな体だけれど話すと優しい面がのぞく、寮には妹さんからもらった大きな象のぬいぐるみを持参、一緒に寝るそうだ。

 有薗選手が新人合同自主トレ中、キャッチボールで多くコンビを組んだのは4位指名の岐阜第一高校の阪口樂選手。高校では二刀流、野球に貪欲で積極的な姿は頼もしい。性格は対照的な2人だが専門はどちらも三塁。

 阪口選手も187センチ・90キロと体格に恵まれ、野手に専念となるプロではスラッガーとしても素質が見込まれる。

 この2人のライバル関係は大いに注目だ。「新球場で1号ホームランを打つ」という同じ目標もある。

 ライバルと言えば、内野手で社会人出身の3位の水野達稀選手と9位の上川畑大吾選手にも期待が集まる。新人ではこの2人だけが一軍キャンプスタート。こちらも同じショート、守備の巧みさとシュアなバッティングが売りとタイプが重なる。

 水野選手は香川出身・JR四国から入団、高校を卒業して3年で結果を残した努力家。ファイターズで言えば吉田輝星投手や野村佑希選手と同学年とまだまだ若いのに、「目指すのは金子誠さんのような守備、左打者としては田中賢介さんのような」と長く応援するファンの気持ちもくすぐってくれる。

 NTT東日本から入団の上川畑選手は25歳。ドラフト後の都市対抗野球での活躍やキャンプに入ってからの姿を見ると、よく9位まで残っていてくれたという逸材。即戦力としての期待がかかり、背番号は下位指名では異例の一桁「4」を付ける。ちなみに昨年12月に結婚したばかり。この2人の存在は先輩たちにも大きな刺激になるだろう。

 5位の中京大中京高校から入団する畔柳亨丞投手はキャンプは二軍スタートとなったが、潜在能力の高さから早々に一軍での活躍が期待される。自主トレ中に話題になったのは好きなアニメが「魁‼男塾」でランニングやトレーニング中には当時の主題歌を聞いているということ。

 放送されていたのは1988年、もちろんまだ生まれる前。現在50歳のお父さんの影響を受けた男塾の世界は厳しいプロでやってやろう!という気持ちにさせてくれるそうだ。昭和ギリギリのあの年のアニメが令和のプロ野球選手に影響を与えているなんてこれもまた面白いエピソード。

 畔柳投手は自主トレ中、同じ鎌ヶ谷にいた伊藤大海投手に積極的に話しかけたそうだ。その場に一緒にいることもあったのが6位の長谷川威展投手。金沢学院大学から入団。高校は埼玉の花咲徳栄出身で2017年夏の甲子園優勝の時は3年生、ベンチ外だった。その時に2年生で活躍。先に高卒でプロ入りした後輩が野村選手、再びチームメイトとなる。

 悔しい思いをした分、大学で活躍してやろうと奮起し、主に抑えで活躍。プロでは宮西尚生投手から多くを学びたいと話す。

 高校で悔しい思いをしたのは8位の北山亘基投手も同じだ。京都成章高校3年でドラフト指名漏れを経験し京都産業大学に進学した。今回のドラフトもなかなか名前が呼ばれず、支配下ドラフト77人中、最後から2番目で呼ばれたのが彼だった。会見場で涙が止まらない様子が印象的だった。

 頭脳派、投球の丁寧さが魅力と聞く。好きな食べ物はカニ、北海道の味を早く存分に堪能してほしい。

(構成・竹内)

……この続きは本誌財界さっぽろ2022年3月号でお楽しみください。


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北海道日本ハムファイターズ 斉藤こずゑ