アスリートインタビュー

北海道日本ハムファイターズ

【斉藤こずゑのファイターズじゃないと♡】田中幸雄氏

開幕ダッシュに失敗したチーム、選手たちをOB視点で解説

伊藤のスゴさはインコースへの攻め

 斉藤 新型コロナウイルスの感染拡大のため、ファイターズ選手との対談企画は休止となります。リモートインタビューをおこない、チームOBで解説者の田中幸雄さんに登場してもらいました。

 ファイターズが開幕ダッシュに失敗した要因をどのように感じていますか?

 田中 一番は投打がかみ合わなかったことではないでしょうか。ピッチャーは2、3点以内に抑えているのに打線が点を奪えず負ける。反対に、ピッチャーが大量失点してしまい、点を奪っても最終的に追いつけない。そういうケースが目立ちました。

 ファイターズ野球は、いまもしっかり守り、守備からリズムをつくって、点を取っていくスタイルだと思っています。その意識をいま一度、強く持ってほしいですね。

 斉藤 昨日(取材日・4月29日)、ついに伊藤大海投手がプロ初勝利をあげました。

 田中 いつ勝ってもおかしくないくらいのピッチングをしていましたからね。よかったと思います。

 斉藤 伊藤投手のピッチングはどうですか?

 田中 メジャーに行っても通用すると感じるくらいの能力を持っていると思います。彼の投球を最初に見たとき、ルーキーですけど、左右のバッター問わず、インコースをどんどん強気で攻めていけるところがすごいと感じました。

 ストレートのスピードもあって、変化球の切れもいい。コントロールもそこそこいい。もし、コントロールがバラバラだったら、ここまでの活躍は難しかったかもしれません。

 コントロールはまだまだ精度が上がると思います。成長が楽しみです。投げっぷりもいいですし、チームのエースと言ってもいいくらいの風格を感じます。

 ©財界さっぽろ

不振の杉浦、宮西、中田を分析

 斉藤 一方、ピッチャー陣では抑えの杉浦稔大投手が二軍落ちするなど、安定感を欠きました。

 田中 抑えとしての経験を少しずつ積んでいると思います。ただ、まだ試合を締めるという意味での自分の投球がうまくできていないのではないでしょうか。

 もともとストレートが速いですし、コントロールもいい。状態がよければ、そう簡単に打たれないはずです。個人的には先発で投げる姿を見たいですけどね。

 斉藤 宮西尚生投手も状態が上がらず、二軍での再調整となりました。

 田中 ずっと結果を残し続けてきた選手です。長いプロ野球人生の中で悪いときも絶対にあります。

 彼はチームのために一生懸命頑張る選手。いま、自分のふがいなさに満足していないはずです。そういう気持ちがより強いと思います。状態を上げ、精神的にもさらに強くなって戻ってきてくれるのではないでしょうか。

 斉藤 打者では、幸雄さんの背番号6の後継者も苦しい開幕となりました。

 田中 よくなかったですね。でも、シーズンは長いですから、ずっとこのままの調子だとは思いません。いずれ状態は上がってきます。中田(翔)選手はもともと、いいときと悪いときがはっきりと分かれるタイプですからね。

 負けが込むと、打順を動かすのは一般的ですけど、中田選手の2番起用には驚きました。

 斉藤 中田選手の胸中をどう考えています?

 田中 「自分がずっと4番を張ってきた」という誇りや強い気持ちがこれまであったと思います。歯がゆさや悔しさがあったのではないでしょうか。調子を早く上げたいというあせりや葛藤などもあったかもしれません。

 ただ、こればかりは中田選手本人じゃないとわからないですね。

 斉藤 中田選手に代わり、近藤健介選手が4番に入ることもありました。

 田中 西川遥輝選手、近藤選手は、入団したころから能力が高かったですからね。近藤選手の4番も驚きはありません。

 栗山(英樹)監督がコーチらに相談し、チームが勝つために、点数を取るための最善の方法として起用したんだと思います。

 近藤選手のすごさは、まずは選球眼のよさ。この能力は人並み外れたものがあります。そして、甘いボールを打ち損じる確率が非常に低い選手です。基本はセンターからレフト側の反対方向に打ち返すバッティングスタイルです。

 ホームランを狙う打ち方をすれば、ホームラン数は確実に増えるはずですが、その分、打率が落ちるでしょう。近藤選手は打率、出塁率を重視しているため、そういうバッティングはしない。イチロー選手と似たタイプかなと感じています。

 斉藤 外野では西川選手がレフトに入り、代わって、淺間大基選手のセンター起用が続いています。

 田中 淺間選手はケガなどもあって、なかなか一軍に定着できていませんでした。今シーズンはいい活躍をしていますね。西川選手の肩などを考えると、センター・淺間はいい選択肢だと思います。

 斉藤 内野は渡邉諒選手がセカンドに定着しました。二遊間のショートは固定できていません。

 田中 野球では、まずセンターラインがとても重要です。キャッチャー、セカンド、ショート、センターを固定できると、チーム力は間違いなく上がります。

 ショートはいま、石井(一成)選手、中島(卓也)選手が入り、いい競争はしていると思いますけど、できることなら二遊間も固定できたほうがいいですよね。

 斉藤 正捕手についてはいかがですか?

 田中 清水(優心)選手は、守備面は肩が強いですし、だいぶ経験を積んできたと思いますけど、打撃面がいま一つ伸びていない印象です。

 斉藤 清水選手自身、いろいろと考えているようで、24歳という年齢に対しても「もう若くないので」と口にしますけど、まだ伸びしろはありますよね?

 田中 人それぞれですけど、まだまだあると思います。僕の経験上、30歳前後が一番体が動いていましたから。少なくとも30歳までは全然、大丈夫ですよ。頑張ってほしいですね。

 石川(亮)選手にも期待をしています。清水選手と切磋琢磨し、どちらかに正捕手になってもらいたいですけど、まだ判断できない状況かなと思います。

(構成・竹内)

……この続きは本誌財界さっぽろ2021年6月号(5月15日発売)でお楽しみください。


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(たなか・ゆきお)1967年12月14日、宮崎県生まれ。O型。右投げ右打ち。都城高校卒。85年ドラフト3位で日本ハムファイターズ(現・北海道日本ハムファイターズ)に入団。現役時代は強打の大型内野手として活躍。引退する2007年には2000本安打を達成し、名球界入りを果たす。引退後、解説者などをへて、ファイターズに指導者として復帰。17年限りでファーム監督を退任し、再び解説者として活動している。