【田中賢介・まだ見ぬ小学校へ】最終回・田中賢介理事長が開校を語る
田中学園立命館慶祥小学校が4月6日に開校した。建学の精神は「学ぶを、幸せに。」学校目標は「世界に挑戦する12歳」だ。本誌では20年11月号から開校までの道程を記してきた。連載最終回は理事長・田中賢介がようやく形となった小学校を語った。
最終回・理事長が開校を語る
諦めずに頑張れたのは協力があったから
「小学校をつくる」と公言してから、2年間が過ぎました。ここまでの道のりはあっという間といえば、あっという間でしたね。
いや、やっぱり長かったかな~。いろいろな感情が交錯しています。
本音を言うと、1年前倒しで、学校を開校させたかったんですよね。でも、周囲から「絶対に間に合わない」と止められ、諦めました(笑)。
開校準備を進めてみて、1年ではまったく時間が足りなかったです。今は当初の予定通り、2年後ということでよかったと感じています。
北海道で、私立の小学校が開校するのは70年ぶりのことだそうです。
教育、学校関係はもともと素人です。難しさなどあまり把握してなかったから逆に実現できたのかなと思っています。
長い北海道の歴史の中で、ここまで、できなかったというのは、それなりの理由があったからだと感じました。資金・収支面をはじめ、クリアしなくてはならない課題がたくさんありました。
まったくのゼロからのスタートでしたからね。学校をつくるための費用面は結局、想定していたより1・5倍くらいかかりました。児童募集についても、特色ある学校にしないと、なかなか集まらないとも感じました。
今思うと、小学校をつくろうと動き始めた当初、北海道の子どもたちに貢献する!という想いが前提にありました。ですから、収支など学校の細かな経営面はあまり深く考えていませんでしたね。
あの頃はまず動いてみてから考えよう。それでダメだったらその時考えようと。だけど途中から「絶対実現する!」に変わりました。
実現できない理由を探すよりとにかくできるにはどうしたらいいか考え続けました。実際には「これはもうダメかな」と、思ったことは3回くらいありました。
でも、諦めずに開校準備を進めていけたのは、多くの方々の協力やサポートがあったからです。
当初は自分1人で動いていたんですけど、周囲に相談していったら、たくさんの方がサポートしてくれました。
カリキュラムはバージョンアップさせる
こうして田中学園立命館慶祥小学校は、4月6日に無事開校を迎えることができました。まずは4学年からスタートしました。関係者には心から感謝しています。
開校にあたり多大なるご支援を頂きました。とくに企業の方々にはコロナ禍という苦しい状況にも関わらず、北海道の教育をよくしたい、子どもたちにいい教育を!とたくさんの方々にご支援頂きました。支援ももちろん嬉しかったのですが、それ以上にみなさんの教育に対する想いはとても強いということを改めて感じることができてよかった思っています。
当学園としてもコロナの影響で、学校の説明会を実施できなかったり、敷地内の森に設置するアスレチックコースやツリーハウスなどの海外資材の輸送が遅れたり、校舎の整備が遅れたりしましたが、何とか間に合ってホッとしています。
田中学園では初年度、20人ほどの先生が教壇に立ちます。300人を超える応募があり、そこから一年以上に及ぶ試験の中、残った先生たちです。ですから実績に加え、しっかりとした芯があり、柔軟な考えを持つ先生方ばかりです。
でも、いい意味で、先生っぽくないかもしれませんね。やはり授業は面白くないと。
また私はプロの中のプロは、見えないものが見える人だと思います。刑事の勘みたいなものでしょうか。それは真摯に仕事に向き合った人にしか見えない勘。つまりこれまでのデータだと思っています。
ビックボス流に言うと勘ピューターですかね(笑)。私はプロの先生としてそこは大切にして欲しいと思っています。
しかも、その勘をこれだと決めつけずアップグレードできる人。そんな先生が全国から集まってくれました。この学校ではその見えないものを見えるようにやって行こうと話しています。
この学校の強みは見えないものを見る力をみんなが持っているということです。それを見えるようにする!面白いチャレンジだと思っています。
また、田中学園では評価制度を採用しました。学園がやってほしいこと、教職員がやりたいこと、それを合致させるのが狙いです。大きな安心感と少しの緊張感を持った学園にしたいと思っています。
一方で、カリキュラムについては、どんどんバージョンアップさせていくイメージです。その仕組みづくりを行っていきます。カリキュラム1つとっても、変更していけるのが、私立の強みです。
田中学園の規模は決して大きくありません。やると決めたら、すぐ実行に移せる強みも持っています。そのスピード感は抜群にいいですよ。
児童も先生も、失敗を糧にしていく
自分の想像通りになったので、校舎の満足度は高いです。専門的なことを学んだわけではありませんが、昔から、建物を設計したりするのが好きなんですよね。私の家も基本的な部分は自分で設計するくらいですから。
学園の関係者と一緒に小学校の場所に初めて訪れたとき、ボロボロの建物が印象的でした。私以外のみんなはこんなに立派に生まれ変わるとは想像できなかったんじゃないですかね。
校舎自体は子どもたちにとって、学校っぽくないと感じるかなと思います。ある意味、新鮮に映るかもしれませんね。
各フロアを行き来できるネットステップがあったり、黒板がなく、授業ではホワイトボードを使います。敷地内にはアスレチックコースやツリーハウスなどが設置された森があります。校庭には人工芝が敷かれ、図書館が併設した体育館もあります。
あと、職員室がオープンフロアになっているのも特徴の1つです。周囲から丸見えですから、先生たちにとっては、少しやりづらいかもしれませんね。
職員室の先生方のデスクの上と言ったら、たくさんの書類などが積まれている光景をイメージする方も多いと思います。
当学園ではそれを禁止しています。整理整頓を徹底し、帰るときには机の上には何もない状態で帰ってもらいます。そのためにもなるべくペーパーレスにして、パソコンなどのシステムを通じて、全関係者が情報共有できるようになっています。
田中学園に通う子どもたちは、ドキドキの一方で不安もあったり、いろいろな感情を抱いて学校にきてくれたと思います。私としてはワクワクした学校生活を送ってもらいたいですね。
先生方をはじめ、田中学園に関わる大人たちは、児童たちを自分の子どものように、責任を持って育てていきます。子育てと同じように大人たちも共に学び、成長していきたいと考えています。
田中学園では子どもたちだけではなく、先生たちにもいろいろなことにチャレンジしてもらいたいと考えています。
その中で失敗もあるかもしれません。それをみんなで共有していきます。それが大事なことだと思っています。
保護者のみなさんにも「先生たちも失敗することがあるかもしれません。ただ、“いい失敗”をしていきます」とお伝えしています。失敗をどんどん糧にしていきたい。そこが当学園の良さだということを浸透させていきます。
私にも子どもがいます。自分の子どもの子育てだけでも、難しいことだといつも感じています。
当学園の会議でも「保護者が自分の子どもと、どう接するかが最も重要なことである」という話になります。そのために我々に何ができるのだろうかということをいつも考えています。
今後、保護者向けに発信する企画などに取り組んでいく予定です。我々から一方的という形ではなく、保護者の方々に寄り添ったものを提供していきたい。夏くらいまでに何らかの企画を実施したいですね。
北海道をリードする小学校を目指す
北海道ではまだやったことがないことが、この学校からスタートすると確信しています。「小学校をつくりたい」と思ったのは、そもそも「北海道に貢献したい」という思いから始まっています。
カリキュラムをはじめ、学校の取り組みとして、素晴らしいと言われるものはどんどん発信していきたい。そして、たくさんの学校に取り入れてもらえたら、うれしいです。
田中学園はさらにどんどん新しいことにトライしていきます。北海道をリードする小学校になりたいと思っています。そのために実績を積み上げていくことも大切です。
雨竜町との連携協定も、その1つです。まずは地元の児童たちのために英語教育を提供します。この連携がうまくいけば、公立の学校にも注目してもらえるのではないかと考えています。田中学園の取り組みやカリキュラムを導入してみたいと思ってもらえるように頑張っていきます。
最後に、田中学園は人生の基礎をつくる学校でありたいと考えています。子どもたちが将来、こうなりたいと思ったときに、それに向かって挑戦できる土台をつくる。それが役割です。
子どもたちの挑戦する心も育んでいきます。子どもたちにどういったスキルがあれば、挑戦する心が養われていくのかという根本的なところから考え、今後、授業などで取り組んでいきます。