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2022年

岩田幸治・札幌JC理事長「冬季五輪、SDGs… 未来につなげるまちづくり」

岩田幸治 第71代 札幌JC理事長(岩田地崎建設 副社長)

道内建設業最大手の子息が札幌青年会議所の新理事長に就任した。岩田家としては親子3代続けての札幌JCのトップとなる。新理事長は、2030年を念頭に先を見据えた、札幌の未来のまちづくりに意欲をみせる。

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実施できなかった2年分の対面事業を

 ――第71代理事長に就任しました。今の心境は。

 岩田 全国大会のあった20年と、21年はコロナ禍で、なかなか現地に集まって事業を行うことが難しい2年間でした。

 札幌JCでは、数年前から“川見”という事業を行っています。春は花見、秋は月見、冬は雪見があるけど、夏にはそういう文化がないよね、というところからスタートしました。

 この川見もコロナ拡大以降は実施ができていません。

 20年の日本JCの全国大会も、21年の札幌JCの創立70周年事業も、最終的にはオンライン開催になってしまいました。

 22年度はコロナの状況をみながら、これまで実施できなかった2年分の対面事業にしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

 ――22年度の基本理念は「人と人がつながり未来を描くまち札幌の創造」。これに込めた思いは。

 岩田 私の財産はこれまでの経験やいろいろな方々との出会いになります。JCに入会してからも、それは変わっていません。

 一方で、コロナの拡大後、なかなか対面で関係性をつくっていくことが、とくに外部とは難しくなっています。

 22年度の基本理念は、JC内はもちろん、外部、社会とのつながりを大切にしていきたいとの思いを込めました。

 ――札幌JCには“実働部隊”として8つの委員会があります。名称・中身はその年度ごとに変わります。22年度の8委員会を紹介してください。

 岩田 コロナの影響で地域経済が停滞してしまいました。札幌市およびその周辺地域を巻き込み、活性化させていく事業を担当するのが①地域経済活性化委員会になります。すすきの観光協会や狸小路商店街などと連携事業ができればと考えています。

 ②全市民活性化委員会は、ワークライフバランスに着目して、それを少しでも実行できる環境づくりをしていきます。

 例えば、男性が育休を取りやすいようにするにはどうしたらいいか。有給休暇に関する法律が変わって、札幌でも取得率は増えていますけど、まだまだ十分とは言えないと思います。

 札幌市は主要都市の中でも人口の女性比率が高いにもかかわらず、女性の正規雇用者割合が非常に低い。更に合計特殊出生率は全国平均を大きく下回り、希望出生率をも満たせていません。こうした状況を打開するための糸口にしたいと思います。

 ③交通未来都市推進委員会は、まちの未来を交通の面から考える組織になります。新たな交通というものを推進していけるような事業に取り組んでいきます。

 札幌市では現在、2030年の冬季五輪・パラリンピックの招致活動を進めています。大会開催が1つの契機となります。

 世界的にも、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現が提唱されています。交通を効率化させて、環境にも配慮した未来図を提案していくところまでいけたらいいですね。

 ④持続可能なまち推進委員会は、札幌は雪が多いですから、冬期間のエネルギー消費量などの問題にも向き合わないといけない。そういう思いを持って立ち上げました。

 SDGs(持続可能な開発目標)は2030年までの解決を目指しています。また、30年に冬季五輪が開催されれば、国内外から多くの方々が札幌を訪れます。その際に、いかにして魅力ある環境都市・札幌を打ち出していくのか。それを構築できるような事業を検討しているところです。

 ⑤会員拡大委員会は、文字通り、会員を増やしていくことを目標としています。持続可能な組織の確立とともに、諸先輩から受け継いできたものを次の世代にバトンタッチすることは重要です。

 会員拡大は最優先課題の1つです。札幌JCの会員はピーク時、460人ほどでした。今は時代も変わって、会員数はそれほど多くはありません。

 近年は少し増加傾向にあり、22年度は190人ほどでスタートします。まずは200人を目指して、拡大運動をしていきたいと考えています。

 ⑥メディア戦略委員会は、広報を担当する組織になります。メディアとのつながりをより密にして、発信力を高めていきたいと考えています。

 残りの2つは内部組織に関するものになります。⑦財政規則運営委員会の主な役割は、予算や決算などのチェックです。コンプライアンスに関するものもこの委員会が担当します。22年度は、会員向けのスキルアップセミナーなどを実施していく予定です。

 ⑧総務渉外委員会は、組織内の総務などを取り仕切っています。22年度の1つのテーマとして、組織のデジタル化を掲げています。総会の決議に電子的なe投票の導入などを考えています。

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経験を101年目以降の岩田地崎に

 ――JCは昔から“内向き”の組織で、外部への発信が弱いとも言われてきました。

 岩田 おっしゃられる通り、いい事業をしても十分に“外”に伝えきれていなかった部分もあったように思います。

 先ほど述べた川見の事業も、参加していただいたみなさんからは大変好評を得ています。道内のほかのJCから「自分たちのところでも、ぜひまねをしたい」と言っていただいています。

 こういう事業がもっと知れ渡ってもいいのかなとも感じています。札幌JCでは近年YouTubeチャンネルを開設するなどしています。SNSをより活用していきたいと考えています。

 ――岩田家としては親子3代続けての札幌JCのトップになります。祖父・厳氏は第9代、父・圭剛氏は第37代でした。

 岩田 札幌JCとしては、親子3代の理事長というのは北海道エネルギーの勝木家に続く、2例目になるそうです。より気持ちが引き締まる思いです。

 ご年配の方々や昔からお世話になっている方々とは父のJC話を通じて、交流をさせてもらったりしています。当時の祖父の話になることもあります。

 生まれる前からJCとつながりがあったんだと感じていますし、同時に札幌JCの歴史というものを再認識させられます。

 ――理事長就任に際し、お父様と会話は?

 岩田 具体的にどうこうとは言われていませんが、「きちんと職務を全うしなさい!」と声をかけられました。

 ――自身の将来像は。

 岩田 岩田地崎建設は22年に創立100周年を迎えます。会社の節目の年に札幌JCのトップを務めることになります。この経験を101年目以降の当社にフィードバックしていきたいと考えています。

 会社では今、現在の経営理念に替わる、新しいビジョンやミッションなどを組み立てているところです。作業としては、個人的にJCで基本理念をつくったことが、役立っています。

 基本的には創業時から100年間のこれまでを振り返り、当社は何を存在意義としてきたのか、何を提供してきたなのかなどを抽出しています。100周年を迎えるタイミングで発表できると考えています。

 ――改めて理事長就任の抱負を。

 岩田 先ほども述べましたが、SDGsは30年が1つのゴールになっています。また、冬季五輪が開催されれば、それも30年です。

 札幌市としては五輪招致の大義として、インフラ整備などのハード面で、経済を高めていくことに代わり、五輪を開催する年をマイルストーンと捉え、社会課題などを解決していくというソフト面での目標を掲げていると理解しています。 

 札幌JCとしても、30年というものを念頭に置きながら、そのときまでに、このまちがどう進化しているかを考えていきたい。そのための未来につなげるまちづくりに寄与していきたいと考えています。


……この続きは本誌財界さっぽろ2022年2月号でお楽しみください。
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(いわた・こうじ)1983年11月25日、札幌市生まれ。札幌光星高校卒、法政大学卒。東京の不動産会社などに勤務した後、2012年岩田地崎建設に入社。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了後の16年に札幌本社に赴任。現在は副社長を務める。
 札幌青年会議所(JC)歴は17年から。日本青年会議所の全国大会を招致する委員会に所属するなどした。20年に札幌で開催された全国大会では実行委員長を務めた。1月1日から現職。