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2021年

国分北海道80年“食”の価値創造をこれからも共に・諏訪勝巳社長を直撃!

諏訪勝巳 国分北海道社長

 道産食材を活用したオリジナル商品の開発・販売、道産品の輸出、将来の食産業を担う学生への支援……国分北海道は視野の広い展開をしている。新年度から、新たな長期経営計画がスタートした。1月に就任した新社長に今後の舵取りについて聞いた。

©財界さっぽろ

1941年の函館出張所が皮切り

 1兆8000億円企業の国分グループは国内に7つのエリアカンパニーを持つ。

 国分は各地に販売・物流拠点を有し、今年は国分が道内に上陸してから80年。その節目の年に国分北海道のトップに就いたのが、釧路市生まれの道産子、諏訪勝巳氏。釧路湖陵高校、北海学園大学卒。50歳。

 新型コロナの影響で食品業界の環境が激変する中、諏訪氏はアフターコロナも見すえつつ、指揮を執る。

   ◇    ◇   

 ――北海学園大学では、どんな学生生活を送られたのですか。

 諏訪 高校時代からハンドボールを始め、大学でも部活で汗を流しました。私の記憶では当時、道内では函館大学が一番強く、北海道大学や小樽商科大学、北海学園が2番手グループのような感じでした。

 北海学園のハンドボール部は現在、40年以上の歴史があり、私は14代目のキャプテンでした。

 ――これまで北海道での勤務は。

 諏訪 大学を1994年に卒業し、新人研修を経て配属されたのが北海道支社です。それ以来、2度目の道内勤務になります。

 ――新人時代の担当は。

 諏訪 約2年半の道内勤務では百貨店担当から始まり、酒販店、ダイエーなども担当しました。主にお酒の営業です。

 当時の営業マンは注文を取りに行くだけでなく、集金業務もこなしました。まだ現金や手形での支払いが主流の時代です。

 入社1年目の時、始末書を書いたのを覚えています。書き損じた領収書の原本は残しておかなければならないのですが、それを忘れて破って捨ててしまったんです。経理担当者から叱られました。今となっては懐かしい思い出です。

 ――主にどのような部署を経験されてきましたか。

 諏訪 北海道勤務の後、首都圏の支店に異動し、その後も主に営業畑で働いてきました。こちらに着任する前は、国分本社でコンビニエンスストア向けのプロジェクトに立ち上げから関与し、担当セクションの責任者をしていました。

 着任後、北海道新聞などのメディアに国分北海道社長としてのインタビュー記事が載り、それを読んだ学生時代の友人やハンドボール部の先輩や後輩から連絡がありました。久しぶりに旧友たちと話せ、うれしかったですね。

 ――今年は国分が道内に拠点を設けてから80年の節目です。太平洋戦争が始まった41年に開設された函館出張所が最初と聞いています。

 諏訪 そうですね。45年の終戦の年には札幌出張所が設立されました。

 その後、旭川、釧路など各地に拠点を増やしていき、業務・資本提携や経営統合なども経て現在の体制になりました。道内全域をカバーしており、卸業務を通じて道民の暮らしを支える役割を担っています。

 そもそも国分の誕生は江戸時代までさかのぼり、300年を超す歴史と伝統があります。

 創業オーナー家のトップは常々、戦争や大災害などがあっても困難を乗り越え、どんな時も食品をご家庭に届けてきた、私たちの使命について話しています。そして、国分を支えてくださった多くの方々のおかげで、300年があるのだと。

 国分北海道も同じです。道民のみなさま、お得意先や各メーカーなど多くの人や企業に支えられ、ご協力をいただいてきたからこその80年です。

 これからもみなさまと共に歩み、食の流通業としての使命を果たしていきたい。

 2021年度は新しい5カ年の長期経営計画のスタートの年でもあります。国分北海道では「~北海道の食と、ともに。~ 新しい価値創造を通じて地域社会に貢献し、パートナーとして信頼される企業をめざします。」をビジョンとして掲げています。

 ――80年記念事業として、札幌の路面電車のラッピング広告をおこなっているそうですね。

 諏訪 4月1日からラッピングした電車が走っていますので、ぜひご覧になってください。各メーカーとタイアップし、月ごとに内容が変わる中づり広告や車内ポスターも出していく予定です。まだ詳細は決まっていませんが、路面電車の貸し切りイベントも計画中です。

 ありがたいことに、路面電車の沿線にある複数のスーパーの店舗では、国分グループの商品を集めた80年記念タイアップ売場をつくっていただきました。

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大コンセプトは“深化”と“探索”

 ――国分北海道の売上規模はおよそどれぐらいなのですか。

 諏訪 昨年度はコロナの影響を大きく受け、売上高は約868億円にとどまりました。19年度比で約9%の減少です。

 カテゴリー別では食品(チルド・冷食・冷菓を含む)で売上高の約55%を占め、酒類が40%ぐらいです。

 昨年度はスーパーやドラックストア向けの扱いが伸びました。いわゆる巣ごもり需要です。しかし、その一方で観光関連施設向け、業務用が大きな打撃を受けました。

 国分北海道は他のエリアカンパニーと比較すると、観光関連施設向け、業務用の構成比率が高い傾向にあります。つまり、コロナ前までは旺盛なインバウンド需要をうまく取り込み、成長をしてきたわけです。 昨年度は、その反動が大きく出た形と言えるでしょう。

 3~5年ぐらいをかけ、売上規模をコロナ前までの水準まで戻していきたいと考えています。

 ――今年度はどのような方針で臨んでいるのですか。

 諏訪 今年度からスタートしている第11次の長期経営計画では「“深化”と“探索”」を大きなコンセプトとして掲げました。

 “深化”は既存事業をさらに深掘りし、厚みを増していくこと。“探索”は次世代につなぐ、新しい基盤作りを意味しています。

 長期経営計画の大きな前提としては、コロナ禍以前から道内で急速に進む人口減少問題があります。推計によると、20数年後の45年には道内の人口が400万人台になるとされています。道民の胃袋がそれだけ減るわけです。

 これまで以上に道産品の道外への供給に力を入れていきたい。

 ――国分グループは世界的なネットワークを持っています。

 諏訪 とりわけ中国、東南アジア、ASEAN諸国には、強力なチャネルを持ったパートナーがおります。それらの国では「北海道」はブランド力が高く、道産品の人気は高いと聞いています。輸出商社やJTBなどの旅行代理店とも連携し、道産品の輸出に貢献していきたい。

 道庁では「23年に食輸出額1500億円」を目標として掲げており、私たち国分北海道も高い意識を持ち、コミットしていこう考えています。

 3月の組織改編で地域共創部ができました。フレッシュ課、事業共創課、商品共創課の3課で構成されており、事業共創課が主に道産品の輸出について担当しています。

 ――フレッシュ課は何をするところですか。

 諏訪 青果の供給です。すでにアークスグループのラルズとユニバース向けに野菜を卸しています。

 ただし野菜や果物をなんでも扱うわけではありません。あくまでターゲットを絞った野菜や果物を扱っていく方針です。

 昨年から釧路のふたみ青果グループともタッグを組んでいます。

 商品共創課は自治体や農協・漁協、道内メーカーなどとコラボして、道産食材を使ったオリジナル商品を開発・販売しています。

 例えば、ウポポイの応援商品として「カムイチェプ 鮭かわチップス」を出しました。留萌高校の学生さんたちが考案し、留萌のメーカーと協力して実現した商品です。加工の時に余るサケの皮を香ばしく揚げたお菓子で、お酒のつまみとしてもイケますよ。

 こうした地域共創部のようなセクションは、国分の他のエリアカンパニーにはありません。国分北海道ならではの取り組みだと自負しています。

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食産業を担う若い力を応援していく

 ――興味深いですね。食品卸ならではの目利き力、売れる仕掛けづくりを感じさせる話です。

 諏訪 ほかにもさまざまな活動や事業をしています。
管理栄養士の資格取得者が6人おり、量販事業部ではスーパーと連携して惣菜商品の提案をしたり、焼鳥チェーンのメニュー考案にもたずさわりました。

 昨年は「ほっかいどう農業高校大会」にSTVと一緒に協力をしました。

 ――「ほっかいどう農業高校大会」とはどんなものですか。

 諏訪 道内の農業高校の生徒が作った農産品は例年なら随時、催事などで販売されてきました。ところが、コロナ禍で残念ながら店頭販売が難しくなりました。

 そこでSTVが自社のオンラインショップで生徒たちの農産品を販売する応援企画を実施され、国分北海道も販売面などでサポートをさせていただきました。

 こうした活動が縁となり、5月から新たな事業もスタートします。職員が静内農業高校で定期的に講師を務めることになっています。

 ――国分北海道の職員が先生役を務めるのですか。

 諏訪 国が実施しているマイスターハイスクール事業があり、そのカリキュラムの中で講師役を務めます。

 マーケティングの基本や商品開発の事例紹介、食品流通のリアルな仕組み、食品表示についても教える予定です。帯広にある国分グループの物流センターの見学会もおこないたい。

 ――実践的な内容なのですね。

 諏訪 今後3年間、継続していきます。卸会社がなぜ高校教育に、と思われるかもしれません。しかし、とても意義がある事業だと考えています。

 少子化の影響もあって、農業が盛んな北海道であっても農業高校に進学する生徒は年々、少なくなっていると聞いています。農業高校の生徒たちは、将来の北海道の食産業を担う若い力です。

 授業を通じて食産業への関心をさらに深めてもらいたい。そして卒業後も道内に残り、生産現場や、私たちのような食関連の企業で活躍してほしいと願っています。


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