上川大雪酒造
地方創生蔵が来年10周年。
11月には新酒まつりを開催
日本酒造りにおいては、酒税法に基づく〝需給調整の壁〟があり、新規参入は厳しいとされてきた。
「上川大雪酒造」は、休眠中であった三重県の酒造会社から免許を引き継ぎ、人や金、場所などあらゆる壁を乗り越え、上川町で「緑丘蔵」の創設に成功。来年には網走市に新たな酒蔵の建設を予定するなど、酒造メーカーとして歩みを続ける。
緑丘蔵は上川町民のサポートを受けながら、2017年秋に本格醸造を開始した。道産100%の酒造好適米を原料に、仕込み水には大雪山系の伏流水を使用。小ロットの製造で高品質な酒を提供している。中でも地域限定で販売する「神川」は、入手困難とも言われ、買いだめする人もいるほど人気が高い。
上川町のまちづくりにも重要な役割を果たし、現在も地域活性化に向けた官民連携の取り組みを行っている。西木光英上川町長は、酒蔵が誕生した当時を振り返り「町職員でお酒愛好者だった私は、緑丘蔵の試験醸造に携わりました。上川町の酒第1号の香りと味、そして感動を今でも覚えています。今では道内や全国の新酒鑑評会で金賞を受賞する町民自慢の〝のまさるお酒〟です。緑丘蔵は、上川町の観光や商業、農業など地域のうねりとなり、地域活性化の一翼を担い続けています。今後も上川大雪酒蔵が〝地方創生蔵〟として地元ごとに酒を誕生させ、各地域にうねりを起こしてくれることを期待しています」と話している。
今年11月22、23日の2日間、
町や愛飲者への感謝をこめて緑丘蔵の敷地内で「蔵まつり」を開催予定。絞ったばかりの新酒「神川」純米初しぼり生酒などを特別価格で販売するほか、酒粕と地元食材を使った料理など、地元ならではの企画を用意している。
総杜氏を務める川端慎治氏は「17年の3月に、唯一の社員として上川町に移住してきた時の地域の皆さんの温かさは、今でも鮮明に覚えています。私以外、酒造経験者がいない中でのスタートでしたが、当時の新人達もすっかりベテランの域になり、頼もしくなっています。『神川』は「町の酒、うちの酒」と言われるまでになりました。このことは杜氏冥利につきます。今では地方創生の酒蔵として、全国に認知されるようになりました。今後も複合的に町の発展に寄与していきます」と語る。