柳本組

配管工事のノウハウを基に3Dスキャン事業へ参入
配管工事業の「柳本組」は、1976年の創業。地元の函館市のほか、札幌市にも営業所を構える。プラントをはじめ、冷暖房や給排水衛生設備工事などを担い、年間で組み上げる配管は150㌧以上だ。
大型物件も数多く受注しており、例えば「北海道新幹線函館車両基地」(函館新幹線総合車両所)の配管設備工事も手掛けた。直近でも、ニッポンハムグループである「日本フードパッカー」(本社・青森県)の道南工場の建設や「函館国際ホテル」の大規模省エネ化工事にも参画するなど、道南エリアで存在感を示している。
柳本邦彦社長が「高度な品質管理が当社最大の特徴です」と話すように、同社の現場従業員は全員JIS(日本産業規格)の「T‐1P」や「TN‐P」などの有資格者だ。
また、配管を加工する自社工場には道南エリアで唯一の最新鋭ファイバーレーザー溶接機を導入。社員の高い技術力と最新設備による高精度な溶接加工で多方面から信頼を獲得している。
好調な本業の一方で、2023年からは新設・既設配管の3Dスキャン事業をスタートさせた。専用の「FAROカメラ」を用いて建物の既存配管部分を3Dスキャナー計測を行い、立体データ化し可視化(モデリング)するというもので、道内企業では初の試みとなる。
複雑な配管設備でも精密な計測が可能で、設計段階で干渉チェックも行えるため、設計ミスを早期に発見可能。施工時のトラブルを回避できることから、画期的な次世代技術とも言われている。
柳本社長は「データを簡易にお客さまと共有ができます。部分的な配管修理や施工図がない古い建物にも対応できるうえ、最適な配管ルートを現場に出向かずに作図する事も可能です。学校などの中規模な機械室であれば、30万円程度でモデリングまでできます」とその優位性を語る。
ほかにもメリットは豊富だ。従来、施工図の作成には現場に出向き寸法計測を2人以上で行っていた。各所の写真撮影なども必要となり、全ての情報を収集するには膨大な時間とマンパワーが必要だった。その点、3Dスキャナー計測は一連の作業を1人で完結可能。作業時間も従来の10分の1以下に削減できる。
さらに、半径25㍍までスキャンが可能なため、高所も仮設足場や高所作業車は不用で、作業の短縮化とコストダウンを実現した。
「現在は新川下水処理場(札幌市)で3Dスキャンとモデリングが進行中です。ニーズは高いので、今後は事業の柱に据えていきたい。構造物設計など、配管以外の分野にもサービスを提供していきたいです」と柳本社長。

