リビングプラットフォーム 金子 洋文 社長

2011年に札幌市で創業したリビングプラットフォームは、介護、障がい者支援、保育施設の3事業を主軸とする。M&Aなどを駆使して現在、運営する施設は144(25年3月末)と急成長を遂げている。東証マザーズに上場して5年が経過。現状や今後のビジョンについて語ってもらった。
5年で売上高は2倍に。さらなる飛躍には今後3年が勝負
――まずは上場からの5年間を振り返ってください。
金子 上場したのは2020年3月17日でしたが、前日にニューヨーク市場の株価が大暴落するなど大変なスタートでした。上場後は自社施設の新設のほか、M&Aを積極的に行い、25年3月期の売上高は192億円で当時の約2倍の規模になっています。
一方、23年度からは控除対象外消費税を販管費に計上することになり、本来であれば営業利益が7億円を超える位ですが、会計変更とは言え営業利益は思った通りには伸びていません。経営は難しくて面白いというのを感じています。
――ものすごい勢いで成長しています。
金子 状況は刻一刻と変化します。同じようなアイデアを持っている人はいくらでもいるので付加価値を生み出すにはスピード感が重要です。25年3月期の売上高は、前期比で15%伸びましたが現在試行している新たなビジネスモデルがうまくいけば、さらに成長スピードを上げられると考えています。
――ご自身での想定と違いはありますか。
金子 創業する際に、カレンダーに上場目標日を記したのですが、コロナ禍や株の暴落もあり上場は1年遅れました(笑)。業績は想定内でしたが、事業規模の拡大に比べ組織の成長が遅れてしまった。体制が整っていれば、もっと利益は出せたかなと。現在は顕在化した問題と原因がわかっているので、管理基盤を整えている最中です。四半期ごとの利益も上がってきています。
――先ほどおっしゃった新しいビジネスモデルとは。
金子 何らかの障がいを持つ高齢者のための障害者特化型有料老人ホームです。仙台市の既存の事業所で実験的にスタートし、軌道に乗り始めています。事業の一つの柱にできると期待しています。
――かねてから農業への進出も視野に入れていますね。
金子 大学生の頃から、「IT」「ヘルスケア」「農業」を人生で取り組むべき3大事業に掲げています。現在、コメの価格が上昇していますが、自社で生産できればコストを下げられます。また、雇用を生み出し、高齢者や保育園児のレクリエーションの場にもなり農福連携も実現します。近いうちに実現できるよう準備を進めています。
――北海道での展開は。
金子 「ブルースター北円山」や「サニースポット山鼻」など既存の施設も順調です。道内では建築単価が落ち着いてきたようですし、新規開発の可能性も出てきたかなと感じているところです。
――今後の課題は。
金子 我々の最大の資産は人材です。どういった経験や研修を通して成長をしていくのか、どんな方がフィットするのかといったデータを集めて、効果的なマネジメントを構築したい。各地に研修センターを設けていますが、ツールの一つとして活用したいと思っています。
また、企業ブランディングや認知度を高めるためにどの広告チャネルが効果的か、介護という特殊な業界ですのでトライアンドエラーを繰り返しながら模索しています。
さらに現時点で成長のネックになっているのはインフレです。建築費をはじめ食材や電気料金などは今後も下がる要素はありません。価格に転嫁する方法もありますが、やはり経営努力を続けることが優先です。例えば、農業参入で食材コストを下げるなど、高収益の事業モデルを作ることだと考えています。人件費が安いと言われる介護業界ですが経営者の責任として待遇も上げていく。そのためには価格転嫁のような一過性の対処療法ではなく、持続可能で高い利益率のビジネスモデルを作っていくことこそが重要と捉えています。
――いよいよ次のステージへということですね。
金子 合従連衡が進む介護業界では、より強固な基盤を作る事が重要です。また、保育事業は国内では少子化が進む中、積極的な事業展開は考えていませんが、構築したシステムで海外進出する方法も模索しています。35年までに売上高1000億円突破という目標を掲げていますが、達成のためは、いろいろなタービュランスを乗り越えてきた今をスタート地点に、今後の3年が勝負と考えています。
――読者にメッセージを。
金子 札幌市で起業し、東北以北では最大の介護事業者となりました。今後も、みなさんの希望となる企業になれるよう頑張っていきたい。北海道にはさまざまなチャレンジをしている人もいるはずです。我々と一緒に日本一の会社を作っていきたいという志、情熱のある方が参加してくれることにも期待しています。