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日本医療大学

島本 和明総長
(しまもと・かずあき)1946年10月7日、小樽市出身。71年札幌医科大学医学部卒業。78年同大で医学博士の学位を取得。2004年から同大附属病院長、10年から同大理事長・学長を歴任。16年から現職。

26年度に医療DXや心理学の新学部・新学科開設を予定

 ――国家試験の合格率は。

 島本 看護師や診療放射線技師、理学療法士、作業療法士の合格率は95%前後で、全て前年を上回る成績です。臨床検査技師は1期生が卒業したばかりですが、80%の合格率でした。

 ――入学状況は。

 島本 保健医療学部は好調です。総合福祉学部は、この4年間入学者数が低かった。後述しますが、来年から新たな学問分野へ転換します。

 ――チーム医療を学べるのが特徴です。

 島本 2021年に開設した月寒本キャンパスの保健医療学部には看護、リハビリテーション、診療放射線、臨床検査、臨床工学の5学科があり、リハビリテーション学科では、理学療法士と作業療法士を育成しています。加えて介護福祉士や社会福祉士を育成する総合福祉学部も設置されており、厚生労働省が推奨する医療福祉分野での多職種連携・協働を実践できる人材育成が可能です。

 また、全国でも病院が隣接しているキャンパスは珍しく、本学は敷地内に「日本医療大学病院」「介護老人保健施設ノテ日本医療大学リハビリ」「看護小規模多機能型居宅介護ノテ月寒」の3施設がそろっており、一カ所で多くの実習ができる点も特徴です。

 客員教授には、元厚生労働省の官僚で「ミスター介護保険」と呼ばれた山崎史郎内閣官房参与も就任し、実践的な講義を行っています。

――学生にもメリットが大きい。

 島本 移動時間の軽減はもちろん、学生が怪我や病気の際、すぐに無料で病院を利用できる。また検診やワクチン接種も付属病院で完結でき、特に子宮頸がん予防になるHPVワクチンは、厚生労働省の方針転換を受け、接種を逃した人向けのキャッチアップ接種も積極的に啓発しました。200人を超える女子学生がワクチン接種を受けています。

 加えて、校舎も新しく学生から「キャンパスがきれい」「学習アメニティが良い」と評価されている。地下鉄から徒歩圏内で、800席の学食など整った設備も魅力です。

 ――大学院や通信制も人気です。

 島本 大学院ではチーム医療におけるリーダーの育成を目指しています。 初年度は定員6人に対し9人が入学、今年度も7人と定員を超えました。付属病院の施設を活用し、多職種協働教育を実現しています。さらに通信制では北海道で唯一の福祉系の学部があります。日本全体でも通信教育志願者が増加傾向にあり、今年は92%、来年は定員超過が見込まれます。

 ――学び直しやフォローアップ対策に力を入れています。

 島本 学力低下への対応として、入学式前に「高大接続プログラム」を実施します。昨年までは期間が短く、オリエンテーション中心でしたが、今年から内容を拡充して、 1週間の集中プログラムとしています。高校の理科や物理、生物、数学を中心とした補修で、高校時代に「必要科目を履修していない」「苦手分野」「基礎学力が心配」といった学生に対し、本学教員や予備校講師などが徹底的に指導します。例えば、臨床検査志望には化学を、診療放射線・臨床工学志望には物理などを補修します。基礎学力テストも実施し、レベルに応じて入学後もフォローアップするほか、また医療人としての基本的マナーも習得させます。

 さらに、認知症患者の増加を受け、今年から全学科の入学前授業で「認知症サポーター講座」を必修化しました。受講者には認定証を発行します。

 このほか、前期終了時の定期試験で成績不振の学生に対しては、昨年度から補講による個別指導を実施した上で再試験を受けさせる方式に変更しました。従来は単純な再試験実施のみでした。

 ――26年度の新学部について。

 島本 前述の通り総合福祉学部は希望者減少を受け、改組して仮称「ヒューマンデザイン学部」を新設します。敷地内に新校舎の建設が進行中です。 

 学科の1つは仮称「医療DXマネジメント学科」です。電子カルテの活用はもちろん医療課題をデジタル・AIで解決できる人材を育成します。 保健福祉はもとより一般企業でもニーズが高い分野で、ペーパーレス化による経費削減だけでなく、データ解析による経営改善まで視野に入れた医療アナリストやコンサルタント的な専門家の育成を目指しています。

 もう1つが仮称「共生社会デザイン学科」です。本学初の心理学分野にウエイトを置いた新しい学科で、社会福祉士や精神福祉士など国家資格の取得も可能です。

 ――地域貢献や国際交流に力を入れています。

 島本 6月21日開催予定の大学祭「日医大フェス」は毎年3000人を超える来場者があり、地元住民の参加が非常に多い点が特徴です。また毎月、月寒本キャンパス講義室で地元住民向けに生涯学習の公開講座を実施しています 。

 さらに昨年には、開学10周年を記念し、韓国の乙支大学と学生交流を開始しました。今年は三育大学とも開始しています。相互に学生を訪問させる制度で、今後も国際交流として続けていきたい。

「月寒本キャンパス」の裏に新校舎を建設中