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札幌大学

大森 義行学長
(おおもり・よしゆき)1981年室蘭工業大学工学部電気工学科卒業。83年北海道大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。86年博士後期課程修了。工学博士。97年札幌大学に着任し、同大学及び女子短期大学部副学長、同大学孔子学院副学院長、同大学理事・評議員などを歴任し、2019年より現職。

複眼的専門性を身につけ、課題解決力を育成していく

 ――昨年度からの貴学のコンセプトは「話せる、大学。」ですね。

 大森 新型コロナの影響もあり、孤立化する人が多くなりました。しかし、社会に出ると〝一人〟で完結できることは多くありません。そこで学生同士はもちろん、教員や職員と積極的に話せる環境を構築しようとの思いから、このコンセプトを発信しました。本学は、地域社会の発展のため共に考え、行動し、新たな価値を創造できる人材を育成することを目指しています。学生が自分の考えを他者に伝え、地域の方々やさまざまな人と対話する中で、新しい発見をして、成長できる大学であることを表現しています。

 ――大きな特徴である学群制について教えてください。

 大森 本学の学群制は1学群8専攻で構成されています。専攻ごとの専門教育の枠を超えて、社会のニーズに対応した分野横断的な学びの選択肢を用意しているのが特徴です。目まぐるしく変化する現代社会に必要なのは、複眼的な専門性を持ち、多角的なアプローチが可能な人材だと考えています。

 こうした柔軟な学びを学生が享受できるよう、分野横断的な学びを将来の目的に合わせてパッケージ化した「みらい志向プログラム」も提供しています。どの専攻からも履修可能な全専攻横断型プログラムですので、学生は自身の興味関心に応じて履修できます。

 また、入学後に学生が専攻を変更できる「レイターマッチング」を導入しているのも特徴です。文科省が提唱するレイトスペシャライゼーションに先駆けて導入した制度で、毎年約3割の学生が活用しています。

 ――この学群制が評価され、文科省の「少子化時代をキラリと光る教育力で乗り越える、私立大学等戦略的経営改革支援」事業に選定されましたね。

 大森 同事業は、社会や地域の将来を見据えた経営改革を行う私立大学等を文科省が5年にわたり支援するもので、本学が北海道札幌地区では唯一の選定校です。

 社会ニーズを反映し、専攻プログラム(タテ)と分野横断型プログラム(ヨコ)を掛け合わせた学びができる学群制の特徴を生かしながら、教育の魅力を一層高め、優れた人材の輩出と地域社会の発展に寄与していきたいと考えています。 

 ――文科省からは別の認定も受けたそうですね。

 大森 大阪教育大学と本学は、大学における創意工夫に基づく先導的な取り組みの特例として、文部科学大臣の認定を受けました。

この認定を受け、来年度からは両大学との間で教職課程科目のオンデマンド型授業を本格的に展開していく予定です。

 ――この認定は全国で初めてと伺いました。

 大森 厳格な基準により前例がありませんでしたが、特例を設けた上での初認定です。両大学の連携が先駆けとして第2、第3の事例ができ、それが大学教育全体のさらなる高度化、優秀な人材の育成につながることを期待しています。

 ――駐日ガーナ共和国大使館との連携協力も発表されました。

 大森 海外の大学との連携はありますが、大使館との連携は異例のことと受け止めています。駐日ガーナ共和国大使館はもちろん、ガーナ国内の大学などの交流に広がることを願っています。

 ――一方で、4月にはスポーツセンターが開設されましたね。

 大森 本学はスポーツ系の部活動が盛んです。〝部活動の強い札大〟であるべきだという思いから開設しました。加えて、部活生に限らずスポーツを軸に教育環境の整備を推進する目的もあります。これまでも各団体が地域の子どもたちにスポーツを教えたり、交流したりしてきましたが、これを学修成果として単位化することを検討しています。

 また昨年、野球部が38年ぶりに明治神宮大会に出場し、OBを中心に大変盛り上がりました。

 女子サッカー部やアイスホッケー部なども全国的に活躍しているほか、スノーボードでは本学の学生がFISUワールドユニバーシティゲームズで金メダルを獲得しました。今年からは女子野球部も始動しています。来年3月には新体育館が竣工予定ですので、スポーツを通じた人材育成に積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 ――そのほかの取り組みを教えてください。

 大森 大学院に進む学生が少なくなっていますが、社会が高度化する中で、専門性を持った学生が求められています。そこで大学+大学院は6年間ではなく、1年短縮した5年間での一貫教育プログラムを来年度からスタートさせます。

 ――時代に合わせて大学に求められるものも変化しています。

 大森 地域から求められ続ける大学であることが必須です。現在、地元である豊平区との連携に向けた話も進んでいます。机上での理論や知識も大切ですが、実際の経験を通じた学びがより重要です。地域との結びつきの中で、学生が課題解決能力を身につけられるよう、地域と共に歩んでいきたいと考えています。

学生同士や教職員とのコミュニケーションを目指したテーマは「話せる、大学。」
新体育館の完成予想パース