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「シオンテクノス」の採用ロジック

村野 篤
シオンテクノス社長 CYW代表
(むらの・あつし)1972年札幌市生まれ。父・實氏が創業した前身のシオン電機入社後、取締役部長、常務を経て14年社長就任。就任と同時に、社名をシオンアクシアテクノ、17年にシオンテクノスに変更。

リファラル採用で〝人が集まる会社〟に進化

人材不足と無縁。採用は〝絶好調〟

――事業内容は。

村野 ビルや商業施設などの業務用空調機の整備、保守、メンテナンスを主事業としています。

――サービスマンの平均年齢は29歳と若いですね。

村野 当社では約50人の現場スタッフが働いており、空調業界では道内トップクラスの規模を誇ります。最年少は今春入社した高卒者の18歳です。高齢化が著しい空調業界で、この〝若さ〟が当社最大の強みです。

――採用も好調ですね。

村野 好調ではなく、〝絶好調〟ですね。人手不足、人が集まらない、という声をよく聞きますが、当社に限って言えば売り手市場の影響はゼロです。目立った求人広告も打っていませんが、毎年4~5人ほど採用しています。

――どのような採用戦略なのでしょうか。

村野 当社では「リファラル採用」を推進しています。昔の縁故採用と同じようなイメージで、社員の家族や親戚、知人・友人を採用する手法です。お手軽な印象を持たれますが、そもそも社員に「自分の大切な人を紹介しよう」と思われる会社でなければなりません、つまりは社長の私が信用されていないと成り立たない採用法です。

――社員から「良い会社」「良い社長」と信頼される秘訣は。

村野 いたってシンプルですが、社員に信頼されたいなら社員を信頼することです。社員を〝信じ切っている〟経営者はどれほどいるでしょうか。「アイツは使えない」と愚痴をこぼしている社長も多いですよね。私からすれば「社員を育てられない貴方が一番無能だ」と言いたいです。また、社員の待遇を厚くするのもいいのですが〝カネ〟だけでつなぎ留めるということは、他に条件の良い会社があれば転職しますよ。  

――離職者が相次ぐ会社も多いようです。

村野 私自身も5年ほど前に大変な思いをしました。半年で現場スタッフが12人も退職したのです。社員の疲弊に配慮せず、売り上げを追求したことが原因です。常にイライラして空気を悪くしていました。すべて私の責任です。

面接はトップの思いを伝える〝プレゼン〟

――村野社長自身が変化したのですね。

村野 まず不機嫌は〝伝染〟することに気付きました。そして笑顔も伝染します。いかなる時も社員には笑顔で接しようと決意しました。例えばトラブルの報告も「いいね」「おもしろいね」と肯定で返す。楽観的というわけではなく、トラブルを乗り越えられれば社員の経験値は上がりますし、自信につながります。顧客や会社、仲間から認められれば承認欲求が満たされます。仕事のやりがいは承認欲求の積み重ねだと考えるようになりました。

――人材教育にも力を入れています。

村野 教育のゴールは社員の自立です。自立の定義を「自己責任」「自己管理」「自己評価」「自己依存」「他者支援」と捉え、すぐに結果が出なくても諦めず、とことん向き合い続けています。才能が開花するタイミングはそれぞれですが、 「自分もあの人のようになりたい」と思える存在が社内にいるかどうかが成長を加速させる重要ポイントです。トップである私は管理職の憧れでなければならず、管理職は社員に尊敬される存在でなければなりません。

「責任を負いたくないから偉くなりたくない」という若者が増える昨今でも、当社の社員は上昇志向が強い者ばかり。私の思いが管理職に、そしてその下の社員に行き渡っている結果と捉え、うれしく思っています。

――自ら採用面接もされています。

村野 大企業は別として、当社を含めた〝中小企業ごとき〟はトップが最前線に立つべきです。なぜなら面接はこちらが選考する場ではなく、パートナーを選ぶ場です。よく「社員は家族」という経営者がいますが、そうであれば自分で家族を選びましょうと言いたい。

また、当社は応募者の選定はしません。面接はあくまで当社の、ひいては私の考え、ビジョンを発表するプレゼンテーションの場であり、私の思いに共鳴してくれた人は全員採用です。どんな人でも信じ、育て切る自信がありますから。

しかし、社員を金もうけのための〝駒〟として扱う企業もたくさんあります。「経営とは人の研究である」という言葉がありますが、顧客ばかりを見て社員を見ない。そんな会社はつぶれるべきです。

――〝プレゼン〟で伝えていることは。

村野 私の夢や未来のビジョンです。そして当社が何のために存在しているのか、企業理念を含め、熱く伝えています。夢を語ることは、私自身のプレッシャーにもなります。実現できないとある意味〝詐欺〟ですから。私の夢は業務用空調全メーカーで道内トップシェアになること。現在、国内大手空調メーカー8社のうち5社のメンテナンスを担い、3社は道内トップのシェアまでこぎ着けました。有限実行で社員の期待に応えていきます。