アスリートインタビュー

北海道コンサドーレ札幌

GK・菅野孝憲「札幌のまち、クラブとともにもっと成長できる」

憧れの監督のもとでプレーしたい――輝かしい過去の実績を半ば捨ててやってきた菅野孝憲選手。限られた出場機会はもちろん、できることのすべてをチームに捧げるその姿は、選手、スタッフ、サポーターの尊敬を集めている。そうした姿勢の裏側にあるものとは。(取材日=1月11日)

©財界さっぽろ

この2年で札幌への思いが大きくなった

――今シーズンから完全移籍することになりました。

菅野 まず、クラブからオファーがなければできなかったことですから、ありがたいことだと思っています。

コンサに来たのは、ミシャ(ペトロヴィッチ監督)さんと一緒にサッカーをやりたいという気持ちがあったから。それに加えて、2年間札幌にいるうちに、コンサでサッカーを続けたいという気持ちも芽生えました。

札幌は本当にポテンシャルのあるまちで、コンサというクラブにも同じく大きなポテンシャルがある。このまちとクラブに対する思いが、ミシャさんへの思いと同じくらいに大きくなりました。それが決断の理由です。

――札幌のまちに愛着が。

菅野 最初に来たときは住むには「寒すぎる」と思いましたけどね。行き交う人が下を向いて歩いているので、どこか「暗いな」なんて思ってもいましたが、寒い上に雪道で滑るので、それが当たり前だというのが後でわかりました(笑)。多くの人たちに温かく迎えてもらえたし、みなさん親切です。

――オフはハワイで生活されているそうですね。

菅野 妻の家族が住んでいるので、オフはずっとハワイですね。昨年もシーズンが終わってすぐハワイへ渡って、昨日(1月10日まで)までいました。家族は3月にチームが札幌へ戻ってくるまでハワイにいる予定です。札幌での生活も3年目ですが、まだ近郊にしか足を運べていないので、行ってみたいところはたくさんあります。

©財界さっぽろ

一歩ずつレギュラーに近づいている

――この2年間はカップ戦の出場が中心でした。今年もサブでの起用が多くなると思います。

菅野 ク・ソンユンが積み上げてきた実績や実力は素晴らしいものがあるので、控えに回るのも仕方がない部分はあります。ただ、ソンユンのスタメン起用は決定事項ではないし、そもそもスタメンを確約されている選手なんていない。つまり、競争はできるということです。

誰かを蹴落として自分が、ということではなくて、指揮官であるミシャさんに評価されて起用されるため、今年も自分自身、パフォーマンスを上げ続けていきたいと思っています。この2年間、ミシャさんのもと、一歩ずつレギュラーの座に近づいていると僕は思っているので。

――チームでは菅野選手のプロとしての姿勢を称賛する声が絶えません。得点した選手を真っ先に祝福するシーンは、この2年ですっかり定着しています。そうした姿勢でいられる理由は。

菅野 サッカー人生の中で初めて「この監督とサッカーがしたい」と望んで、それが叶ったから、ですかね。僕が望んでコンサに行きたいと思い、それまで所属していた京都サンガさんにもそれを理解していただいて、レンタルで来ることができた。自分が決めて自分で契約を結んでいるのに、ブーブー文句を言っていたら恥ずかしいだろうと。

サッカー選手としては毎試合レギュラーで出場することがベストですが、それは監督が決めること。毎試合、与えられた役割を100%しっかりとこなすことが当たり前ですし、年齢に関係なく、やらなくてはいけないこと。そういう意味で、僕は自然とそうしていた、ということかな。

――ほかの選手が、自分の背中を見て模範にしてくれているような実感はありますか。

菅野 僕も意識してやっているわけではないので……。

僕がプロになったころ、35歳は「おじさん」という感覚でした。「怖いな、早く辞めてよ」と思うこともありましたし(笑)。でも自分がいざ35歳になってみると、その実感はないけど、できることも限られていて。自分が正しいと思うことをやっていれば、それで十分だとも思います。監督がすべてをオーガナイズしてくれますから。

――控えの選手に対して、監督はどんなことを話しますか。

菅野 「不満を持ちながら不真面目に練習しててもいい。でも明日チャンスが来るかもしれない。その時にお前はチャンスをつかめるのか。俺のためではなく、自分のためにやりなさい」といったことを話しています。ニュアンスの違いはあると思いますが、僕はそう捉えています。それができていない選手にはチャンスは与えられないし、つかめないので。

――試合に出ていない若手に声をかけることはありますか?

菅野 ランニング中とかに話すことはあります。相談を受けた時は「移籍するのも、残ってチャンスつかむのも自分次第だけど、今をムダにしたらその先はない」と話しますね。移籍してもしなくても、本人が決めたことはどちらも正解だと思うので。周囲から何を言われても、結局は自分次第です。

――いつまで現役を続けたいと思っていますか。

菅野 まずは40歳まで。ほかのポジションよりGKは寿命が長いと言われていますし。J1に帰ってきた横浜FCのカズさん(三浦知良選手)は、通例をひっくり返していますけど(笑)。カズさんは同じチームに所属していたこともあるので、対戦が楽しみです。

――今シーズン、個人としての目標は。

菅野 とにかく試合に出る。そして勝つこと。今のメンバーとはもう2年やってきたので、戦い方やどんな人間なのかがわからない、といったストレスはありません。昨年、自分たちの精神的な脆さで落とした試合を、今シーズンはどれだけ減らせるか。それが間違いなくタイトルでの近道です。とにかく結果にこだわるシーズンになると思いますし、自分が試合に出てタイトルを取る。ただそれだけです。(ききて・清水)


→Webでの購入はコチラ
→デジタル版の購入はコチラ

(すげの・たかのり)1984年5月3日、埼玉県生まれ。179センチ・75キロ東京ヴェルディのアカデミーを経て03年にJ2横浜FCへ加入し、07年のJ1昇格に貢献。08年に移籍した柏レイソルでリーグ、天皇杯、ナビスコカップにそれぞれ優勝。その後京都サンガに所属し、18年からコンサへ期限付きで移籍し、今シーズンから完全移籍を果たした。背番号1、GK